見出し画像

紀元前のギリシア

ギリシアとアラビア知識のストック
いまの科学技術をかたるには、この中世以来のキリスト教的異端審問を抜きには語れない。

その当時のヨーロッパ社会を覆いつくしていた社会的思想弾圧、ガリレオ、デカルトなど、この牙城にかかっている。その最も特徴的で残酷な「火あぶり」処刑を受けたのが「ブルーノ」だった。

「地球が太陽の周りを回っていると主張したガリレオに関して、ローマ教皇庁が有罪判決を下したのは誤りだった」、とワイアード記事が伝える。

この問題が現代社会に、にわかに浮上した歴史の重み、いまだに決着がついてないことを伝えるニュースとして、この場でクローズアップした。といっても殆ど関心のない話題で世間(とくに日本において)の注目度はゼロに等しい。

レオナルド・ダ・ヴィンチによるウィトルウィウス的人体図、科学と芸術の統合

画像1


冒頭は時事通信の内容「科学者の反対でローマ法王が大学訪問を中止」であり、 「教会はガリレオより理性に忠実、ローマ教皇の講演に伊大学が猛反発」 、との見出しはワイアードの「John・Borland」による。

同じニュースソースでも、その表現が微妙に異なるので、あえて二つの記事を掲載した。

私が気になったある部分、「ラテン語でなくイタリア語で書いたからであり・・・、古い思想とそれの学問基準に嫌気がさしている人々にアピールしたから」、という内容は「ギリシア自然科学」の原本テキストが、どの国で、誰によって訳されたが、と云う問題と無縁ではないように思う。

ギリシアテキストをラテン語に訳してあるものは総ては写本からである。当時のガリレオが、それを知らない筈はない。

その経緯については伊東俊太郎氏が著書「十二世紀ルネサンス」で克明に追っている。またこのサイトでも、その内容を掲載しているのでご覧頂きたい。

ギリシア自然科学は、このウエブサイトの主要なテーマであり、現代の最先端情報技術インターネットを介して集めた情報を展開し、古典力学理論、現代量子論の双方を摺り合わせた内容である。

100年前では理論的にも解析できなかった物理が、2008年の「いま」では現実リアル世界で実証されている。

人間の情緒的感情に大部分が支配される宗教では、そんなことは一切生じない。「私は月に行きたい」と100万回つぶやいても、目の前の情況は何ら変らない。天動説が仮にも正論であるならば、人間は今頃月に到達していない。

そうした物理現象を古代ギリシアでは哲学していた。ユーラシア大陸の西、古代都市として繁栄したメソポタミア、ペルシア、地中海を挟んでエジプトなど、ギリシアはそれらの国々と地理的にも接近し多くの影響を受けていたことは明らかである。

そのギリシアの高度な知識遺産は人類の宝庫として、時間をかけて近隣諸国を回遊した。その証拠として、今に伝えられるラテン語訳写本が残っている。                                          
画図は、そのラテン語訳の「与件」。左図、パリ国立図書館ラテン語写本。13世紀から14世紀末に書かれたものと判断。
下図、オックスフォード、ボドリー図書館の写本で13世紀に書かれたもの。

下図、これは「アラビア語」で書かれた「代数学」のアラビア語原典。オックスフォード、ボドリー図書館所蔵。12世紀に書かれたもので、このアラビア語原典をもとに、ラテン語訳したものがある。

すなわち12世紀以前では「ギリシアテキスト」はアラビア語圏に伝播していたことを物語っている。この「代数学」テキストは当時の西欧世界に知られていなかった新しい学問であると、伊東氏は分析した。

それは現在でも使われている方程式そのものである。

■画像 伊東俊太郎 著「十二世紀ルネサンス」(岩波セミナーブックス)より抜粋。

以上は12世紀前後に勃興したギリシア哲学コピー物語だが、20世紀の偉大な天才物理学者アインシュタインは、「数」について次のように述べている。

「3本の木は2本の木というのとはどこか違っていますし、また2本の木は2つの石とは違っています。しかし、2、3、4…というような純粋の数の概念は、それらを生じさせた対象から離れてしまっているので、それは私たちの世界の実在を記述するところの思惟する心の創造なのです。」・・・。

この観察力こそが「代数学」の本質を衝いているのではないだろうか。そして再び12世紀のテキスト原書写本訳を読むと次のような記述がある。
「単なる数とは、根や財とはなんら関係なく、いわゆる数と表現されるものすべてである。これらの三つの様式から互いに等しくなるものがある。それは次のようなものである。
財は根に等しく、財は数に等しく、根は数に等しい」。

(伊東俊太郎氏によるラテン語の日本語訳)

※この記事は2008年1月16日(水)付、自著ブログの転載。


ノアの箱舟の伝説はほんとうか


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?