ピアノの音を騒音にしないために
「外を歩いていても、昔よりピアノの音が聴こえてこなくなりましたね」
よく、そんなちょっと寂しい話になります。
でもこれって少子化やピアノを弾く人が減った、というだけでもないんです。もちろんそれもありますが、構造上、昔よりも家の外にピアノの音が漏れづらくなったと言う部分も大きいのです。
仕事柄いろいろな家にお邪魔しますが、特にここ15年くらいの戸建て住宅の気密性は格段に高くなっていると感じます。
自宅を建てた10年前にはすでに全ての窓がペアガラスはあたりまえ、息苦しくなるので24時間換気システムは止めないでくださいねと言われたのは驚きでした。
ご近所への音漏れを気にして思いっきり弾けないという場合でも、調律中外に出てみたらほとんど聴こえませんでした!と言うことも結構あります。
音が漏れづらいと言うのは同時に、外の音も入ってきづらいと言うことでもあります。新しい住宅街であれば周りのお宅も同じような防音性能なので、家の中で出した音が他の家の中まで届く頃には思った以上に小さくなっていることがほとんど。
そんな感じで新しい住宅では意外と取り越し苦労なこともあったりしますが…そうは言ってもご近所への楽器の音問題は気になりますよね。
それに、音を出す側としてはやっぱり気にするべきことではあると思います。
いちばん大事なのは、ご近所にちゃんと知らせること
騒音対策は、結局これにつきます。
防音についてご相談されることも多いのですが、正直なところ大規模な防音工事をしない限り、付け焼き刃の対策では実際に漏れる音は劇的には変わりません。
ピアノは音が出るものである限り、弾くことをまわりに許容してもらい共存していくしかありません。
そのためにはこの3つのことを伝えておくとうまくいきやすいと思います。
演奏する時間を決める
音の大小、演奏時間の長短に関わらず「この音がいつまで続くのかわからない」という状態は聞く方にとってストレスになります。たとえ工事のような大きな音でも「うるさくても◯時まで」とわかっていれば意外と我慢できるものです。
防音対策をしていることを伝える
劇的に効果があるわけでは無いと言っても、もちろんできる限りの対策は必要です。弾くときに窓を閉めたり、アップライトピアノの背面の向きに気をつけたり、階下への振動低減のために防振インシュレーターを履かせたり。
そしてそのことを具体的にお伝えすると良いです。今できるベストを尽くしていることを伝えることが大事です。
苦情を受け入れる姿勢を示す
〈ご迷惑な場合はいつでもお知らせください〉と連絡先を伝えておけば、相手も言えば改善してくれるんだと気が楽になります。弾く側としても言ってもらえればお子さんがお昼寝しているタイミングやテレワークの時間帯などを避けることができます。
楽器の音問題は意外と実際にうるさいかどうかよりも、音のことに配慮しながら演奏しています!という姿勢をきっちりと伝えることが重要です。「だれが」「いつ」「どこで」「なんのために」出しているのかわかならない音は小さくても不快です。逆に言えば、わかっていると溜飲が下がる。ご近所のみならず家族間でもここの共有はとても大事。
しっかりと対策をしてそれを伝える責任を果たせば、必要以上に恐縮もせずに演奏を楽しむことができます。
楽器を弾かない人が静かに暮らす権利も、楽器を弾く人が適切に楽しむ権利も同じくらい尊重されるべきものだと思います。
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