ピアノの弱さをなんとかして伝えたい
ピアノは弱くて、めちゃくちゃ繊細なんです。
ピアノもバイオリンも所有されてるお客様に「バイオリンは見た目的にも環境の変化に弱そうなのは感じてましたが、ピアノがそうだとは知りませんでした」と言われ、ハッとしました。
確かにこんなに頑丈に見えるピアノがちょっとした環境の変化に弱いなんて、誰が信じるのか...
でも適切に管理してもらうには、生肉に勝るとも劣らないピアノの真の繊細さを所有者のみなさんに正確に知ってもらわないといけない。納得感がないと手間をかけて管理しようなんて気にはならないですよね。
毎日メンテナンスしてる僕らはもちろん肌でその弱さを感じていますが、改めて、きちんと伝えるにはどうしたらいいのか?と考えました。
頑丈そうに見えるのはなぜか?
大きいからなのか。重いからなのか。黒塗りで重厚感があるからなのか。
外装に覆われていて中身が見えないというのは一因ではあると思います。バイオリンに比べるとピアノはむき出し感がなくて守られている感じがしますし、パッと見はでっかい頑丈な箱に見えます。
じゃあ中身を見れば繊細に感じるか?と言われると、ちょっと疑問で、細かい部品が絡み合って動いているのは“精巧”には感じますが、伝えたい繊細さとは微妙に違う気がします。
そもそも、なんでこんなに繊細なんだろう?
それを説明するときに使う常套句
「ほとんどが木でできているから」
確かにそうなんですが、これだけではなんかピンと来ないなと。
木でできた家具もたくさんあるけど、ピアノみたいに気を使わないといけない弱さはないよなと思います。
じゃあ木の家具とピアノの違いはなんなのかと考えた結果...
ものすごく単純な話ですが「楽器である」ということに尽きるのかなと。
「物を置く」「インテリアとして美しい」という用途である木のキャビネットであれば、たとえ湿気で0.1mm歪んだとしても、キャビネットとしての機能は果たせます。
「音を奏でる」という用途のピアノは0.1mm歪むと音が大きく狂ったり、音が出なくなったりして、楽器としての機能が著しく落ちます。
楽器として存在する以上、求められる機能を満たすためのハードルが高いというのが重要なポイントなんだと思います。もしピアノをインテリアとしてだけ使うのであれば、湿気や乾燥で狂っても関係ないですからね。
ピアノの弱さの本質は「木でできているから繊細」かつ「楽器だから少しも歪んではいけない」というのが正しいのかなと思いました。
ピアノは楽器であるということは当たり前過ぎて、なんか見落としてた気がします。
そう考えると、15t以上の力で弦が張られていることも含め、ピアノってなかなか無茶してるなとは思います。
木で作らないと素晴らしい音は出ないけど、木で作ってはいけないような精度で保たないといけない
そんな矛盾したバランスのモノだからこそ、それを保つための調律師という職業が成り立ってるのかもしれないですね。
お客様と共有しないといけないのはこの感覚なのかなと思いました。
じゃあそれをくどくなく端的に説明するにはどうしたらいいのか、というのはまたこれからの課題です。
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