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おまじない 西加奈子

とっても素敵な短編集。
忘れた頃に読み返して、また忘れた頃にもう一度読み返して…を繰り返したいお気に入りの一冊に。

いろんな女の子の胸のうちの最も人間らしい部分であり、かと言ってマーベルのヴィランのようにドス黒いわけでもない、ありのままの心の姿が、たまに痛いくらいありのままに描かれていました。ありきたりだけど、幸せを定義付けることはできないし、人の幸せも、苦しみも、定めたところで何の意味もない。それが最後の「お前がお前やと思うお前が、そのお前だけが、お前やねん。」につながりました。健やかなる時も、そうでない時も、私が私だと思う私が、その私だけが私なのだと思うと、幸せを感じていようが感じてなかろうが、周りの状況がどうであろうが、自分を強く持って生きていけそうです。

対談にも1番反響があったと書かれていた「孫係」は例に漏れず私にもドストライクで胸に響きました。本音を隠して係を演じて振る舞っているのも、相手への気遣いなんだよ。自分を偽り続けるのも疲れるから、本心を打ち明けられる人には愚痴って発散しよう。普通のことですね。普通なんだけど、なんとなく後味悪いなぁと思っていたことを、良いじゃないか!それも優しさだよ!と言われて心がふっと軽くなりました。ここからは余談だけど、最近出会った人の中に思ったことを隠さずズバズバいう人がいて、なんだか清々しいなぁと好感だったんよね。そしてなんとなく感じたこの人は信用できるという感覚の正体はこの辺にありそうだ。

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