ワンテンポ遅れてるひと

最近ネイルが楽しい。
もちろんどこかに行く予定も、誰かに会う予定も無いのだけど、4日おきに自分の好きな色を選んで塗り変えている。生活してる中で、例えばこうやってPCを打っている時なんかに、ふと指先を見て、綺麗な色が塗られていると、なんだか少しおしゃれな女になった気がして嬉しくなる。どんなに寝癖が付いていようと、どんなに猫背で作業してようと、綺麗に塗られた爪を見るだけで在宅ワーク中の素敵お姉さんになれた気になれるのだから、自分の単純さは中々のものだと思う。

つい最近までネイルをする必要性を全く感じていなかった。
ネイルと私の出会いは小学1年生のとき。親が誕生日プレゼントに子ども用マニキュアを買ってくれたのだ。ラメが入っていてキラキラのマニキュアは、その容器も可愛くて、貰った事をとても喜んだ。そう、爪に塗る前までは。
 さっそく塗ってみると私は違和感を感じた。
「あれ、なんか窮屈、、」
「爪が息をしてないみたい、、、、。」
「あーーーー爪が気になる!!!」
 その数日後にはマニキュアは机の引き出しの奥に奥に追いやられ、そこでカピカピの状態になって発見されるまで放置されてしまった。

 その時以来「ネイル=窮屈なもの」という方程式が出来上がってしまったものだから、大学生になって周りの友達がネイルをしているのを見た時はそりゃ驚いた。なんであんな窮屈なことをわざわざ?あれはおしゃれなのか?と本気で疑問に思った。ピアノを習っていたこともあり、爪が長い人をみると心の中がザワザワするし、つけ爪をしている人なんか心の中で「魔女」と呼んでいたほどである。けど、もちろんそれを声にすることはできるはずもなく、ずっとモヤモヤしていた。二十歳を超えても一向にネイルに対する興味も何も湧かず、不信感しか抱かなかったので、次第におかしいのはネイルをしている人ではなく、ネイルをしたいと思わない私の方なんじゃないかとさえ思った。だから、みんなと同じように足にマニキュアを塗ってみたけど(手の爪は本当に無理だった)、やっぱり違和感しか湧かなくて、自分は変わっているんじゃないかと何回も思った。

同じことは「お花」や「動物」にも当てはまる。

家族を含め私の周りには、お花や動物が好きな人が多い。
今となっては、それは素敵なことだとは思うけど、やっぱりここ最近まで、お花を買うことや動物を愛でたりすることに対して、あまり興味が湧かなかった。桜や花壇に咲いているチューリップをみて綺麗だなと思うことはあっても、花屋で花を買うことなんて頭にものぼらなかったし、みんなが動物(特にネコ)の写真をこぞってあげていることも本当に謎だった。動物よりも、風景の写真みてるほうがよっぽど心が落ち着いた。

ネイルも、花も、動物も
みんなが当たり前のように好きなものに、全く関心が持てない。
けど、みんなが「これかわいいよね~」って感想を求めてくると、思ってもいないけど「かわいい~」を言わないといけない。そこで思い切って「ごめん、興味ないんだ」って言えれば、また違ったかもしれないけど、私には無理だった。みんなと違うことを認めるのが怖かったのだ。だから、心の底からみんなが好きなものが好きになりたかった。おなじ価値観で「かわいい~~」と思えるようになりたかったのだ。

だから、最近「ネイル」と「花」が好きになれたのが本当に嬉しい。なんでいきなり好きになれたのか、興味が湧いたのかは、私もよくわからない。
けど、みんながネイルや花の写真を撮る理由も、それで心が癒されるという理由もなんとなくわかってきた。ようやく皆の価値観に追いつけたのだ。

ワンテンポ、いやスリーテンポくらい、人よりも感性が遅れてるのかもしれない。だって未だにネコが可愛い理由がよくわからないんだもの。

けど、まぁ数年後にはネイルやお花と同じように私も「ネコ可愛い」と言ってるでしょう。
無理に可愛いと思わずに、気長に、自分の感性の芽が出てくるのを待ってみようかな。

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