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「幕開け」(まとめ)

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短編小説「幕開け」のまとめです。
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記事一覧

幕開け[第5話]

幕開け[第5話]

〈第1話〜4話〉

・・・

「東京の今日の最高気温は三十四度です」
 今朝のニュースを、ふと思い出す。まだ七月に入ったばかりなのに、夏を絵に描いたような快晴だ。久しぶりの現場で、私は全身から汗が噴き出るほど慌ただしく走り回っていた。
「こちら高橋です。深山さん、取れますか?」
 いつも冷静な高橋主任の声が、今日はどことなく高揚している。外れかけたイヤモニを、 慌ててセットし直した。
「深山です

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幕開け[第4話]

幕開け[第4話]

〈第1話〜3話〉

・・・

「やっぱりすごいと思うよ、駿介は」
「……こんな話してるのに、か?」
「うん。だって、普通はそんな辛いとき、ぐうたら過ごす人がほとんどだよ」
「ははっ。なんだよ、それ。そんなこと、ないだろ」
 心底わからないという表情のまま、駿介は首をかしげていた。
「ううん、そういうものだよ、普通はね。でも、駿介は違う。自分を見つめ直すために、きっと色々したんでしょう。いつもは出な

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幕開け[第3話]

幕開け[第3話]

〈第1話・2話〉

・・・

 チリン、チリン。
 夏でもないのに、なんでいつもこのお店には風鈴があるんだろう、と高三の私が呟くと、駿介は迷わず、風鈴は癒しの音だからだろ、と答えた。
 あの時と同じ音が鳴ったことに、少し驚いた。
「いらっしゃいま……」
 花柄エプロンの店主が、奥からひょっこり顔を出した。目をまん丸に広げたまま、口元をマスクの上から抑えている。
「お久しぶりです、みつこおばちゃん」

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幕開け[第2話]

幕開け[第2話]

・・・

「ところで、今日はなんで参加したの? 暇だから、だけじゃないでしょ。あんたの性格からすると」
「うわー、そんなことまでわかんのか。さすがだね、キャリアウーマンさん」
「もう。そんなこと言うなら、この先ずーっとスーパースター様って呼ぶからね?」
「お願いだから、それだけはやめてくれ」
 くだらない話を続けていたら、いつの間にか緊張はほぐれていた。それと同時に、どんなに頑張っても駿介に敵わな

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幕開け[第1話]

幕開け[第1話]

「おつかれさまです。鍵、お願いしまーす」
 時計の針が、八時をさしている。今どき珍しい手巻き式の腕時計は、祖父から受け継いだ大事な形見だ。レトロなデザインで気に入っているけれど、ずぼらな性格の私は一昨日から一度も巻いておらず、当然ぴくりとも動いていない。それなのに、低いガラス戸をカラカラと開けながら、今日は絶対に最後じゃないぞ、と思った。
「はい、Bの三番、受け取りました。深山ちゃん、今日も最後だ

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