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『Icarus ID』7000字セルフレビュー

https://nekon-t.info/love-the-candys-icarus-id/

ニューアルバム『Icarus ID』をより深く楽しんでいただく為に私24Pが全曲セルフレビューをしていきたいと思います!

今回のアルバムコンセプトは架空のSNS『Icarus ID』にログインする事でLTCメンバーが投稿した記録を観覧するという内容です。
もとはというと、アルバムタイトルはIcarus IDが良いなと思ってメンバーに相談したところCDジャケットの話になり、lovelesさんが「IDって言葉が入ってるんだしパソコンのデスクトップ画面でログインするイメージが良いんじゃない?」というアイデアから、何にログインする?→Icarus IDにログインが良いんじゃいか?という流れで思いついたんです。

収録曲もアルバム制作を始めた三年前から、せっかくキャリアのあるメンバーと一緒に作るのだから、先に進む「進化」より、各自のルーツや好きな音をより掘り下げていく「深化」にしようと考えていたのでバラエティー溢れる楽曲が集まっていました。
そのバラバラな感じを同じ時間軸に上手く纏められるというのもSNSという発想に繋がったんだと思います。

さぁ!CDを手にしている皆さん、ケース裏面にログイン画面をご用意しました。
早速ログインして各曲を覗いていきましょう!

01.Icarus ID
メロディはIcona Popやt.A.T.u.などのパワフルなガールズデュオをイメージして作っていて、個人的に結構気に入ってます。
シングル候補になりそうだけど、やっぱりアルバムの方がしっくりくるような曲(笑)
シーケンス、ギター、ブレイクビーツ、スクラッチと自分の好物が全部入ってますね。
アレンジも最初からイメージが出来ていたのである程度まではサクサク出来たんですが、打ち込んだドラムとブレイクビーツの絡み方や音質(特にバスドラ)の調整に時間かかりました。

歌詞はテクノロジーの進化について肯定的に捉えています。
よくテクノロジーの進化というと、僕も好きなんですが都市伝説やSFの世界で人間が暴走するAIに支配されて挙げ句の果てに滅亡っていうのが定説で、その方が作品的には作りやすいんですがテクノロジーと共に人間だって進化するでしょ?って事で今回は視点を変えてみました。
次世代の子ども達にイカロスの勇気を持って進化するテクノロジーと描いた想い(プログラム)、最新の翼(ガジェット)を操作して燃え盛る太陽(夢や希望)に向かっていって欲しいという願いを込めてます。

02. The Magic of Reverse 
今思い出したんですが確かレーベルの社長に今回のアルバム候補曲をある程度送った時、「もうちょい売れそうなシングル向きの曲を」とオーダーがあったとlovelesさんから話を聞いて焦って作った曲です(笑)
因みにその時にもう一曲作ったのがBack to The Real。

曲は僕が影響を受けたアーリー90'sのデジタルロック、M-ageやJesus Jonesを意識して作りました。
それとテンポダウンしてスクラッチパートを作るアイデアというのも最初からあったので、テンポダウンした時にメリハリがはっきり分かる様にドラムのハイハットやシーケンスは16分で刻ませてガチャガチャした感じにしています。
テンポダウンからアップの参考にしたのは安室奈美恵 / You're my Sunshineのイントロ部分、globe / GONNA BE ALRIGHTの間奏部分。
細かい所なんですがスネアのゲートを何拍目かにちょっと伸ばしたりしてメリハリをつけてたりしてます。
シンガロングパートはCHAGE&ASKAのYAH YAH YAHみたいに皆で拳を挙げて歌えるパートがあるとライブでも良いかなと思って追加しました。

歌詞は逆回転の魔法。
身近な人、大切な人、尊敬している人からの裏切りにあった時に時間を巻き戻してやり直したいと願っている主人公をイメージして書きました。
逆回転という言葉は朝ドラ「あまちゃん」の主人公である天野アキが劇中で出ていた番組「みつけてこわそう」から。

03. Ooparts Girl 
結構初期にプロトタイプが出来ていた曲。
曲の長さが6分とLTCには珍しく大作です。
LTCは意図的に展開をシンプルに分かりやすく作っているのですが、今回は思うがままに展開を作った結果こうなりました。
この曲は初めてメンバーに聴かせた時、全員に気に入ってもらえた大変珍しい曲です(笑)
コード進行がG9→D7→G9→D9と四回目のDコードでテンションを7から9にしてフワッと感を添えておきました。
この曲に限らず僕の曲はほぼ9thコードで出来ていると言っても過言ではないくらいです(笑)
その他の細かい所だと右側で刻んでるシーケンスはプラック系の音に一度思いっきり深いリバーブを掛けてそれをビンテージコンプでガッツリポンプアップした後、ゲートでバッサリ切るという僕の好きな音です。
リバーブのサイズやタイム、プレディレイを調整すると色んな変化があって面白いです。

歌詞は差別、DV、いじめを受けている女性へme-maさんが優しくメッセージを送って包み込んであげている内容です。
そういった環境に置かれてしまっている女性を発見された時代や場所がまったくそぐわないオーパーツに例え描いています。
曲には学校でいじめられている子、彼氏にDVを受けている子、人種差別を受けている子と三人の女性が居て最後は三人ともその環境を捨ててキリッと歩き出すイメージです。

04. 99%
この曲もかなり初期から出来ていてライブでも何回か演奏していました。
lovelesさんのメロディから80'sで甘酸っぱい印象を受けたので、シモンズドラム+チョッパーベースで曲を作ろうと思い聴き込んだのが「CCB/ロマンティックが止まらない」でした。そう、毎度おさがわせします的なココナッツボーイズです。
シモンズドラムのサンプルからパターンを組んだのですが、まあ音がショボくて加工が大変でした。
スネアはワントーンショットに聴こえますが実は高めのスネアとちょい低めなスネアをタイミングをずらして鳴らし、抜け感を出す短めなプレートリバーブ、時代を感じさせる深めのルームリバーブを掛けて鳴らしてます。
今の時代にシモンズドラムメインの曲がCDでリリースされるって数える程だと思うので自己満足率は高めです(笑)

歌詞はちょっと物事が上手くいってると思うと調子に乗って毎回ダメになっちゃう様な人の事を書いてます。
そういう人に限って自覚症状が無いという。
でも少し喜劇的なイメージで何だか憎めないというか。
歌詞の中の「99%でフリーズしたままなんだ」のフレーズは自分のPCのアップデートが丸一日99%でずーーっと止まったままだった状態を見て思いつきました。

05. Majority Chameleons
この曲は、最初に鳴っているジャン!という音(オーケストラヒット)をモチーフに作り始めた曲です。
後半に進むにつれサビのオーケストラヒットのブレイクが派手になっています。
特に最後のサビの1拍目にリバースを置いて2拍目入りする部分が毎回ライブで気分が上がるんですよ…僕一人が(笑)
イントロ付近でブァーっていうSEが入ってるんですが、実はあれ観衆の歓喜の声を加工したものなんです。
結果パッと聞いてただのノイズになっちゃったんですが、良い感じにハマったので採用しました。
me-maさんの歌い方もファーストのウィスパーな感じから一転、かなりパワフルな歌い方になり新境地が開拓出来た曲で、その後の曲作りにも大きな影響を与えました。

歌詞は時代や周りの流れ、風潮、意見にササッと色を変えて、さも我が物顔で進むカメレオンの様な人々の事を書いています。
皆さんの周りにもそんな人いませんか?(笑)
あれ?昨日までこう言ってなかった?みたいな人達。
そしてそんな人々をニヤニヤしながら上手いことコントロールして儲けている側が存在しているイメージです。
主人公はカメレオンに囲まれている側では無く、コントロールする側からの視点です。
なので「奴等の目がグルグル回ってる」という歌詞が出てくるんです。

06. They said, It’s a revolution
今回のアルバム用に一番最初に作り始めた曲。
Peahさんからスローでスクラッチしやすい曲が欲しいとのリクエストもあり、個人的にもPicorinさんにレゲエを歌ってもらいたい、三味線の音を入れたいというアイデアがあったのでなんとか形にできないかと試行錯誤して作りました。
レゲエは2拍目と4拍目にバスドラが鳴るのが基本らしいのですが、なかなか慣れてないリズムなのでちょっと気を抜くと間抜けな感じになってしまい、結果煮詰まりました…。
またベースラインでもレゲエ独特の間を保つのに煮詰まりました。
正直、途中で投げ出そうとしました(笑)
最後まで色々といじっていた気がします。
ちなみに一番最初に入っている祭囃子はlovelesさんの地元である群馬県桐生市の桐生祭りの音を現地で実際に録音したものです。

歌詞は以前に大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)へ行った時に人間魚雷「回天」に乗り込んだ方々の手紙を読んだ事がきっかけになっています。
もし自分が同じ立場になったら何を感じて誰に何を思うのかと考えながら書きました。
曲中ではPicorinさんが戦いに向かい散った主人公、me-maさんがその主人公の大切な人として何十年後にメッセージを受けているイメージです。
この作詞をしている時期はかなりイメージを広げて入り込んでいたので少し精神的に圧迫されているような感じで不安定になっていました。
寝ていても急に息苦しくなって起きたり、ボーッとしてると何故か涙が出てきたりとかなり怪しい人だったと思います(笑)
そんなこんなで一番苦労した曲なので思い入れも強い一曲です。

07. My Shining Tomorrow
lovelesさん作曲ですね。
lovelesさんから曲を受ける時はlovelesさんによるギター弾き語りデータから始まるんですが、この曲の時は結構ギターをジャカジャカやってたんですよ。
いつもはポロンポロン程度なのに(笑)
そこからフラメンコっぽい感じにしようってアイデアが思いつきました。
コード進行も7thを多様させていたり一時転調なんかも入っていたりして少し凝ったものになっています。
クラップ音であのフラメンコダンサーがよくやってる手拍子を再現したかったのですが、すぐ出来るだろうと思ってたのになかなか思い通りにならずに苦労しました。
フィンガークラップ、リアルクラップ、マシーンクラップを抜き差しして、拍子ごとにゲート変えたりする羽目になり、正直やるんじゃなかったと思いました(笑)
あと最初はもっとバスドラがドスドスした音だったんですが、ウッドベースと被ってしまうので最終的にタイトなバスドラの音に差し替えました。
ウッドベースソロからレコーディング中に追加した中盤コーラスとサビ中のブレイクが気に入ってます。

歌詞はフラメンコの曲調に合わせてダンサーの物語です。しかも自らのキャリアアップの為に枕営業に手を出したという内容(笑)
小さな頃から夢見ていたキラキラとした公明正大なダンサーの夢は叶わないと気付きつつも、まだステップを止めて諦めることが出来ない葛藤を書きました。
映画「ブラックスワン」のイメージも少しあります。あちらはバレエですが。

08. Back To The Real 
C+C Music FactoryとT99をBassment Jaxxがミックスした感じ。
んー…めちゃくちゃですね(笑)
イントロのワンフレーズが流れただけで「あっ、あの曲だ!」って分かる様な曲を作りたかったんです。
90's風のシンセフレーズをオマージュしていますがそのまま乗っけるのもどうかなと思って、ベースはチョッパーベースを使ってファンキーな感じにしました。
チョッパーベースのライン作るの意外と好きなんです。
あと細かいところだと、間奏でパポパパパポ…と鳴ってる音は808のコンガのピッチランダム数値をマックスにしてワンノートを16分で打ち込んだものです。
これは例えばタンバリンとかを同じ設定にして使うとアクセントの効いた面白いパーカッションになったりするのでお勧めです。

歌詞は先にBack to The Realという言葉が浮かんで、そこから目の前の問題も解決しないで自分探しだなんて言ってフワフワしてる人に「自分なんか探さなくてもちゃんとここににいるだろう!」という話に膨らませました。
多分何かイライラしてたんだと思います(笑)
内容もそうですが、どちらかというとメロディに乗った時の語感を優先しました。
サビは作曲の時から余計な言葉は載せないでOh〜Back to The Realだけでいこうと決めてました。

09. Love Format 
lovelesさん作曲。
これはテクノポップの中でも70年代後半〜80年代前半を意識しました。
タイトなドラムと8分刻みのオーバードライブギターにレトロシンセ、何故かlovelesさんの曲にはこれが似合います(笑)
間奏のシンセソロが気に入っているのですが、音はレトロ風なものを準備出来たのですが、肝心なレトロ風なフレーズがなかなか思いつきませんでした。
必死にYMOの某曲を頭の中で思い浮かべながら作りました…。
YMOのどの曲なのかは歌詞カードにヒントがありますので探してみてください。(バレバレな気もしますが…)
ボーカルレコーディングはPicorinさんと二人でやったのですが、なぜか途中からQueenみたいなコーラスを入れようという話になり、風邪気味で鼻声だった僕も歌いました。
まあ、結果はもちろんボツです(笑)
しかしここからボコーダーを使ったコーラスワークを思い付き採用しています。

歌詞はアーティスト系の人達がやりがちな「自分はこんなに人と違った価値観がある、こんなに人と違った深い傷を持ってる、こんなに人と違ったルーツがある、あれ?むしろこれって普通じゃないの?自分ちょっと変わってるからなぁ…」的なアピールを見て、絶対このあとに「だから自分の作品や表現は深いと思わない?」ってフレーズを付けたいんだろうなぁと考えていた時に(性格悪くてすいませんね)、例えば恋愛とかでは、自分に本当は無い付加価値を付けて、なんとか相手と相応しい人物になろうとする事ってあるなと思ったんです。
余りにも自分と環境や価値観や経験が違う人を好きになると「愛」って言葉自体の感じ方や意味、フォーマットが違っていたりする。
好きだからその隙間をなんとか埋めたい、でも相手の言ってる事が理解出来ずにチンプンカンプンでオロオロする、そして自分にもそんな深い傷や経験、憂鬱を欲しがる主人公。
皆さんもそういう経験ないですか?

10. Calling to the wind 
これは Mr.Big / To be with youのLove The Candy's版をやりたいなと思って作りました。
まずは何回聴いても飽きずにジーンと哀愁漂うコード進行を作るところから始めたんですが、これがえらく時間がかかりました。
結局4コード程度に落ち着いのですが、ルート音を変更したりして色々工夫をしてます。
イントロやエンディングに使われている子供達の声は実際に自分の娘が公園で遊んでいるところを後ろからつきまとって録音しました。
恐らく不審者に見えていたと思います(笑)
ボーカルレコーディング時はPicorinさんが話しかける様な優しい雰囲気で歌っていただきき、「こんな歌い方したのは初めてかもしれない」と仰ってました。

歌詞のモチーフは岩手県にある「風の電話」から。
風に乗せて亡き人へ想いを伝える姿がとても胸につき刺さりました。
そして想いを伝えに来た人達は皆、電話線の繋がっていない受話器から、もしかしたら亡くなった人の声が聞こえてくるかも知れないと切に願っているようにも感じました。
曲中では少し設定は変わりますが、Picorinさんが亡くなってしまったお父さんとして自分の子ども達が遊んでいる公園に現れてベンチに座り想いを風に伝えてまた消えていく…そんなイメージを描いています。

11. In the Box 
こちらはlovelesさん作曲ですね。
ちょうどこの曲を作っていた時期にKid Astray、Echosmith、The Royal Conceptなどをよく聴いていてLTCにもそういったギターポップっぽい要素を組み込みたいなと思っていたのでアレンジにも影響が出ていると思います。
サビが3回出てくるのですが並、静、動と毎回バックのアレンジが違っていてその都度me-maさんの歌い方も変化していますね。
後半に出てくるゲートを効かせたスネアがお気に入りで、元音の原型がないくらい加工して出来た匠の逸品です(笑)
単純に煮詰まってやっとこさ出来た音って話なんですが…。

作詞はme-maさんです。
僕は大好きな彼氏を箱詰めにしちゃったら開けるの怖いわぁ…って歌だと思ってたんですが、どうも違うみたいなんでご本人からコメントを頂きました(笑)

《あなたは海辺で夜空を眺めるときに何を思い出しますか?
題名のBoxは心の中にある記憶の箱です。
誰だって自分の幸せを考えたらダメだとわかってるけど止められない衝動にかられ欲望に身を任せてしまう時があります。
この歌はそんな恋する主人公の葛藤を歌っています。
その箱を開けたら怖い、でも小気味良い感情に包まれる。
まるで麻薬のような恋を幾度も経験し終らせ、その先に幸せを見つけていく、そんな途中に見上げた夜空を見ながら作詞しました。
女性は生まれてから本能的にずっとこの感情を幸せになるまで繰り返す性なのかもしれません。
24Pがアオハルのような音色で飾ったくれたことにより、乙女心の清らかさを表現できた気持ちのいい作品に仕上がりました。/ me-ma》

12. They said, It’s a revolution Remix 
ボーナストラックのリミックスはlovelesさん。ご本人よりレビューを頂きました。

《They said, It's a revolutionを最初に聞いたとき、レゲエのアレンジで個人的に好きだったので嬉しかった。
この曲に別の解釈をしたらどうなるか?
LTCのメンバーとしてではなく客観的に考えて男女ボーカルの「Supercar/Jump Up」2ndのギタポ+テクノ+ヒップホップが緩めに混ざった感じが良いのかもとイメージしてリミックスしました。
ボーカルが活きるようにアレンジはシンプルにコードもあまり追随しないでサンプルのピッチを落として若干の荒さが出せたと思います。
途中のブレイクはクラフトワークを意識し転調で希望的な音場が出せたと思います。
サンプルもピッチを上げて転調に合わせる時の独特の高揚感が出た!
二人の歌を違う解釈の音で仕上げる事が出来て満足です。/ loveles》

という事で、全曲セルフレビューいかがでしたしょうか?

どうかこの『Icarus ID』が皆様の心の片隅に置いていただける一枚になりますように。/ 24P