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「デザイン思考入門」前編|デザイン思考とは?

社内でデザイン思考の入門的研修をやってほしいと言われたのでやってみました。せっかく資料も作成したので、社外に公開してよさそうな一般的内容を抜粋して記事にしてみようと思います。(なんか間違ってたらこっそり教えてください。。)

1.デザイン思考とは

まず、デザイン思考とは?

一言で言うと、「問題解決のための考え方」と定義できます。もう少し言うと、「デザイン」というくらいなので、「デザイナーの思考方法と手法を利用した、ビジネス上の問題解決のための考え方」と言えます。

なお、今回の研修に当たって、デザイン思考がどのように定義されているか、何冊か本を読んだり、Webの記事を調べてみたりしたのですが、言葉の言い回しなどいろいろあって、自分なりに最もシンプルで分かりやすい説明として、これが一番いいかなと思いました。

2.デザイン思考の歴史

ここで少しだけデザイン思考の歴史について説明しておきます。

デザインを思考方法して捉える見方というのは、1960年代末くらいからありました。そして、「デザイン思考(Design Thinking)」という言葉が初めて使われたのは80年代後半で、主に建築の分野で使われるようになりました。

それから、我々がよく耳にするようになったデザイン思考というのは、2000年代に入ってから、シリコンバレーを拠点とするデザインコンサルティングファーム IDEOのCEOであるティム・ブラウン氏が「デザイナーの手法と感性はビジネスへの応用が可能である」と提唱したことから一気に広がりを見せました。

現在、IDEOは東京にも拠点を持っており、私も過去に一度、ほんのちょびっと仕事でご一緒させていただきました。その際は、計算されたフレームワークと巧みなファシリテーションが本当に勉強になりました。

3.なぜ今デザイン思考なのか?

では、なぜ今、こんなにデザイン思考がもてはやされるのでしょうか?

ここで「改善から革新へ、ImprovementからInnovationへ」と書いたのですが、要は、インターネットによって社会・環境・世界が猛スピードで激変する中、ビジネスの世界において、今までのやり方を「改善」していくだけでは立ち行かなくなってきました。つまり、これまでの延長上にあるものではなく、全く新しい発想、つまりイノベーションが求められるようになってきたのです。そして、そのイノベーションを起こす思考方法がデザイン思考というわけです。

4.デザイン思考で成功したビジネス

ところで、デザイン思考で成功した企業の例として、よく挙げられるのが Uber(ウーバー)と Airbnb(エアビー)です。

多くの方が既にご存じかとは思いますが、Uberはスマホで一般の人がタクシーをできるサービスで、Airbnbは民泊サービスです。Uberは、日本では白タクが法律的に禁止されているのでNGですが、Uber Eatsは毎日のように自転車が走っているのを見ますね。

5.技術的実現性と経済的実現性

話を戻して、これまでのビジネスというのは、二つの円「技術的実現性(Feasibility)」と「経済的実現性(Viability)」を重視してきました。要するに、「技術的に可能で、かつ儲かるモノやサービス」が求められてきたわけです。

その結果、分かりやすい例として、よくテレビのリモコンが挙げられるのですが、どんどん機能の向上を進めた結果、こんな形になりました。(家電メーカー関係者の方、すみません。。)

ここで、研修では次の質問をしてみました。

結果はこちらの意図した通り、ほぼ全員が「2. よく分からないボタン(機能)がある」に手を挙げました。ここで言いたいことは、消費者が置いてけぼりになってるよね?ということです。

6.有用性(ニーズ)

これに対して、デザイン思考によるビジネスというのは、先ほどの二つの円に、「有用性(Desiravility)」というのが真ん中に加わります。

つまり、「人々にとって有用か?役に立つか?」というのを中心にして、その上で技術的実現性と経済的実現性のバランスを取る。この三つの円の中心にイノベーションが起こるというのが、デザイン思考の考え方なのです。

この考え方に基づくと、先ほどのリモコンは、人々の有用性(ニーズ)を無視して、技術的実現性を重視する余り、ほとんど使わないような機能が搭載されることで、逆に使いにくく、欲しいと思えるものでなくなってしまった。これに対して、人々のニーズをくみ取って作ると、Apple TVのリモコンのような製品が生み出されるという例でした。

もちろん、Appleの方が使いにくいという人もいるでしょう。しかし、それが新しいということ、日本の家電メーカーがAppleを始めとする海外メーカーに圧倒されていることは確かです。

7.もう一度、デザイン思考とは

つまり、「デザイン思考とは」を言い換えると、「人々のニーズを中心に据えた、人間中心的なアプローチによって、イノベーションを起こす方法」と言ってもよいと思います。

8.事例紹介|GE

最後に一つ事例を紹介しておきます。

GEのMRIを設計している技術者は、子供たちが鎮静剤を打たないといけないほど、その機械が恐怖を与えていることを知ってショックを受けました。使用する人々の求めているものは性能の向上や、小型化が最優先ではないということを知ったのです。

そこで、MRIを飾り付けて、冒険を楽しむ体験に変えたことで、鎮静剤を打つ必要がなくなりました。これは検査を受ける子供になりきって考えることで、問題の本質に気づくことができ、改善できたという事例です。

なお、イノベーションを起こす方法と言うと、何かUberやAirbnbのような、全く新しいビジネスを起こすみたいなイメージがあるかもしれませんが、この事例のように、今自分が行っている業務の改善に、全く新しい解決策を見出すのも、イノベーションであり、デザイン思考なのです。まずは、普段の業務に小さなイノベーションを起こすところから始めてみてはいかがでしょうか。

さて、デザイン思考とは、問題解決のための考え方であり、イノベーションを起こす方法であることが分かったところで、次回は、具体的なデザイン思考のプロセスについて書きたいと思います。

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