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タピオカがライバルだと思っていた去年の夏の縄文

去年の夏、東京国立博物館では「縄文展」が開催されたくさんの人が「縄文」に関心を寄せた。メディアにも取り上げられ、界隈は沸き立っていた。「縄文ブーム」とも言われ、「若い女性に縄文が人気」と、少し持ち上げられたりした。

実際に、縄文展には36万人の来場者があり、ブームと言ってもいいくらいの盛り上がりは確かにあった。縄文ZINEも何度もメディアに取り上げられた。「縄文展」開催中に縄文ZINE主催で行なったイベントもかなりの人が集まり、テレビカメラが4社も取材が入る異常事態でもあった。

そもそも縄文というのは60代以降の男性ファンが圧倒的なジャンルで、20代30代の女性(男性も)はほとんどいなかったのではないかと思う。その60代男性も決して多いとはいえず、考古館ではいつも土器を独り占めすることができていた。縄文ZINEはそういったマーケティングを豪快に無視した雑誌で、その誰もいない層に向けて作られていた、縄文が若い層に人気だから作られたわけではなかった。何号も出しているうちに不思議と火のないところに煙が立ち始め、イベントはいつしか男女比が逆転し、今では女性の方が圧倒的に遊びに来てくれている。テレビが何社も入ったのは、女性が集まるイベントはここしかなかったからだ。

東京国立博物館の「縄文展」のおかげの盛り上がりは確かにあった。ただし、「若い女性に縄文が人気」は贔屓目に見てもちょっと無理があったように思える。それでもそもそも女性の少なかったジャンルに最終的に老若男女が集まった様子を見るとちょっと涙ぐむほど(僕は涙腺が弱い)嬉しかった。

時を同じくして、去年の夏の少し前からタピオカもメディアに取り上げられ、リバイバルブームの兆しが見えていた。こちらははっきりと「若い女性に人気」があり、「かわいい」界隈や「おしゃれ」な界隈にタピオカは取り上げられていた。それからの快進撃は誰もが目にしているだろう。

確かに去年の夏は「縄文」と「タピオカ」が競っている状況があった。僕自身、雑誌かウェブメディアの取材で、「タピオカには負けないぞ」と臆面もなく言っていた記憶がある。

タピオカブームと縄文ブーム

結論として縄文はブームではなかった。もちろんタピオカはまごう事なきブームだった。ライバルの背中はあっという間に見えなくなった。そして今、タピオカのブームは消費され、新しもの好きな雀達は次の餌場に向けて飛び立っていった。今からタピ屋を始めようと考えている人はもう一度考え直した方が良いかもしれない。

縄文がブームにならなかったのは理由があると思う。茶色で地味なのはタピオカも一緒だったので言い訳にはならないのだけど、一つにはものすごく古い時代というイメージが地味だった事。勉強の匂いが強すぎたこと。そこまで誰でも楽しめるものではなかった事。見た人の印象がまるでてんでバラバラで「これだ」という何かが見えてこなかった事。面白さをきちんと言語化できている人が少なかった事。メディアが思っていたようなブームの実態がなかった事。

色々と思いつくし、そりゃそうだとも思う。後からだって何だって言える。ただ、僕としてはこれで良かったと思っている。そもそもみんながみんな好きになる最大公約数的なものにロクなものがないのは自明な話で、見た目の印象がてんでバラバラなことも悪い事じゃない。言語化できないのはわけのわからない時代だからゆえで、むしろ「縄文の謎を解いた!」と言っている人は信用しちゃダメだったりもする。

縄文は簡単に理解できるものではない。それは学問としてもそれを楽しむファンとしてもおんなじだ。縄文の沼はでかくて深く、透明度もあまりない。

ブームではないと言っても確実に縄文のことを気になっている人が増えている。その知識や本気度の違いは置いておいて「縄文好きです」という若い人は確実に増えている。5年前には「貝塚(笑)」と半笑いだった連中は随分と減っている。僕の体感では縄文に興味を持ってくれ始めたのは30代、40代の女性にその兆しが大きいように思える。縄文ファン全体の総数が飛躍的に増えたわけではないけれど、イメージは大きく変わってきた。だからこそ体感値としては大きな違いがある。

まだ考古館に訪れる人は少ないし、ましてや遺跡に人影はない。これからも大きなブームにはならないだろうけど、その楽しさと興味深さを共有できる人たちは確実に増えていっている。

そのムーブメントは雀の群れのように一斉に飛び立ったりはしない。

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磨製石斧のようにありがたい
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