見出し画像

『縄文人に相談だ』文庫版が発売されます

2018年1月に国書刊行会から発売された『縄文人に相談だ』。この本は、数多ある「相談本」の中でも異彩を放ち、大変大きな反響をいただくことができた。そんなにめちゃくちゃ売れたわけではなかったけど、ここから縄文時代に興味を持ってくれる人も少なくなかったと思う。ほんと出してよかった。

で、文庫版がでます。6月12日、角川文庫から発売です。予約してくれたら嬉しい限りです。

中身は全く同じではなく、文章も写真もイラストも単行本からほとんど削ることなくその上で相談は10%増量、値段は半額となりました。もちろん単行本のように凝った装丁はできませんが、ぜひこの機会に買ってください、単行本持っている人もどうぞよろしくお願いします。

ここで、文庫版のあとがきを抜粋して載せさせていただきます。


未だブームは来ず

2018年の夏、たしかに縄文とタピオカはライバルだった。

上野の東京国立博物館では大規模な縄文展が開催をひかえ、界隈はたしかに盛り上がっていた。この展覧会は主催にNHKと朝日新聞社が名を連ね、それ以上にさまざまなメディアに縄文という言葉が躍った。僕自身、最初の著作でもありこの本の元の本『縄文人に相談だ』の単行本をこの年の初頭に出版し、縄文ZINEという雑誌の編集長としても各メディアに出演し、縄文展の見所、ひいては縄文の魅力を伝えさせてもらった。

かくして「縄文展」は大成功。国宝土偶が全部集まらなかった会期前半こそそれほどの混雑はなかったが、見に行った人のSNSや口コミでのポジティブな連鎖もあり、会期後半になるにつれ右肩上がりに来場者は増え、入り口には入場待ちの列ができ、人気の土偶にはパンダのような人だかりができた。

あの夏、たしかに縄文とリバイバルブームの兆しのあったタピオカはメディアの露出度では競っていた。

暑かった夏は終わりを迎える。それからのタピオカの快進撃は衆目の一致するところで、縄文は未だブームではない。

タピオカは飲めば分かる、美味しい。一方の縄文はそう簡単に分からないし上手く飲み込めない。負け惜しみでもなんでもなく、僕にとってはその観客を突き放す理解し難いところがむしろカッコ良かった。

さてこの本を読んでくれた方、単行本から楽しんでくれた読者には心からのお礼を言わせていただきたい。単行本を読んでくれている人にも楽しめるよう、文庫版では10%程の相談と答えを増量している。数限りなく本が並べられる書店の書棚や、過去に買ったことのあるジャンルの本しかおすすめしてこないネット書店のラインナップの中から本書を選び出したそのセンスに脱帽したい。

本書もまた簡単には飲み込めない本だ。タピオカほど飲みやすく作っていない。話は噛み合わないしめちゃくちゃなアドバイスやその場限りの安い笑いを取りに行くこともある。注釈が多くても肝心な専門用語を説明しわすれていることもある。それでも読み終わっている頃には縄文のことに少しだけ詳しくなっていて、縄文が少しだけ好きになっているはずだ。僕としてはその上でひと笑い、ふた笑いでもいただければ御の字だと思っている。

縄文時代は大きく括って一つの文化がとてつもなく長く続いた時代だ。一方現代社会は変化し続ける時代だ。そのスピードは日々加速し、昨日ですらあっというまに過ぎ去っていく。技術も価値観も何もかもが定着する前に更新される。

こんな時代だからこそ、縄文時代を振り返ることに何か意味があるんじゃないかと本気で思っている。

縄文ZINE編集長 望月昭秀

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?