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なぜ運動は脳に良いのか?

こんにちは。うつ病休職エンジニアの三十郎です。

「文武両道」なる言葉がありますが、昔から運動と脳の機能に密接な関係が存在することは知られていました。うつ病にも「運動療法」なるものが存在します。ではなぜ、運動すると脳の機能は活性化するのでしょうか?

1.脳の基本仕様

脳は1兆個の細胞で形成されています。そのうち情報処理をするニューロン細胞は約1千億個存在し、約800億個が小脳に約140億個が大脳に存在します。小脳の方が多いことに驚かれた方も多いでしょう。小脳は3層構造で形成され、大脳は6層構造で形成されます。AIの用語で「深層学習:ディープラーニング」がありますが、これは脳の情報処理構造を模倣したものです。

小脳は3層構造のため、情報処理が早いです。何のために存在するかというと、ある決まったパターンを記憶するのに使います。例えば、歩く、走る、自転車に乗る、自動車を運転する、会話の相づちを打つ、将棋を指す。普段、特に意識しなくても体が覚えてくれる、それが小脳の役割です。歩くのにいちいち、右足を上げて、前に出して、次に...なんてしないでしょう? 習慣を身につけるのにも小脳は働いています。なので、損傷を受けると、まともに動作できず、代わりに大脳を使って機能させるしか無いため、超スローになります。

大脳は6層構造のため、情報処理に時間がかかります。その代わり高度な情報処理ができます。余談ですが、鯨やイルカの大脳は5層構造です。これは、地上で脳が最終形態まで進化する前に海に戻り、海では高度な情報処理が不要だったため進化が止まったのだと推察されています。

2.脳の役割分担は、正しいのか?

大脳には部位ごとに役割分担があると言われています。以下に図示します。

脳の役割分担2

ニューロン細胞のスペックは、部位によって異なりません。入力端子2~3万個、出力端子1個。それぞれが人工知能用プロセッサをも凌ぐ処理能力を持ちます(当然スピードは遅いですが)。高度な意思決定をする前頭葉も、指を動かしたり、腰の痛みを感じたりする運動野、体性感覚野も同じニューロンなのです。大脳と小脳とでは仕様が異なるようです。ついでに言うと、小腸にもニューロンが約1億個、存在します(ハムスターの脳と同じくらいの数)。脳とは独立して機能し、危険な食物の排出、免疫系全般のコントロールをしていると言われます。

私はシステム設計のエンジニアですから、こんなコスパの悪い設計などしません。何せニューロンは、他の細胞と比べると桁違いのエネルギーを消費しているからです。人体には約37兆個の細胞がありますが、脳1兆個(ニューロンだと1千億個)だけで全体の20%のカロリーを消費しているのです。それも、ニューロンの活動を抑制しながらの消費量です。なぜニューロンの活動を抑制する必要があるかと言うと、抑制しなければカロリー消費で発生した熱を血流で下げることができなくなるからです。「覚醒剤使うと簡単に痩せられるよ。やってみない?」みたいな誘いがありますが、これはニューロンの活動抑制のリミッターを外すため、もの凄いカロリーを消費するからです。当然、頭はオーバーヒートし、死滅するニューロンが出ます。廃人になる理由です。

最初の問いに戻りますが、脳の役割分担は、正しいのでしょうか?

3.機能の分担もしているが副業もしている

これについては、証明する論文が出ているわけではありませんが、人は考え中、前頭葉だけでは無く脳の複数の箇所の血流が増加しているとの研究結果があります。ニューロンは不思議な細胞で、暇を持て余しています。頼みもしないのに隣のニューロンを助ける、お節介をしたがります。

例えば「禅」を考えてみましょう。何も考えずに「無の境地」に至れと言われ前頭葉が命令しても、凡人の脳は勝手に考えが浮かんでは消え、雑念にとらわれ続けます。寝ていても勝手に夢を見ます。

記憶はどこに仕舞ってあるのか? 脳細胞全体に散らばっているようです。記憶の中で最も鮮烈なのがエピソード記憶です。何か大事件(特に命の危険)があったときの記憶です。そのとき活動していた脳細胞に仕舞われている可能性が高いようです。だから、同じような目に遭うと自然と思い出すのです。

思考についても普段は前頭野が行っていますが、ボーッと歩いてるとき、閃いたりしたことはありませんか? 閃きのような思考は遅い思考と呼ばれ、無意識のうちに勝手に思考を進めているようです。前頭野が行っているのは速い思考、意識を集中しての思考です。多分、意識的な思考を他のニューロンが勝手に引き継ぎ、暇つぶしに考えてくれているのでしょう。常に意識を集中するには時間的に限界があります。意識から無意識に思考が移動し、あるとき答えを導き出す。これが閃きの正体かと思います。

「ボーット生きてんじゃねえよ!」と怒る人がいますが、ボーットしてないと脳はオーバーヒートし、脳細胞が死滅し出します。

空手

4.なぜ運動が脳に良いのか?

本題に戻ります。運動すると頭が空っぽになってリフレッシュする。血流が良くなってニューロンが活性化する。そんな意見もあるでしょうが、本質は違うと思います。運動をするには、脳全体を使わなければなりません。目で物を追い、音や感触で手応えを感じ、当然運動野もフル回転。チームスポーツなら連携のための声かけもするでしょう。

運動は私たちが原始人だった頃の脳の使い方に似ています。我々の脳は原始人から進化していないので、最も脳を効果的に使っていた頃に帰るのだと思います。

うつ病のリハビリに運動が良いのは、脳本来の動きを再現させ、自分を取り戻す作業になるからだと思います。

うつ病のメカニズムは未だ解明されていませんが、慢性的ストレス、強烈なストレスによる脳の組織異常が原因のようです。MRIで脳の断面を調べた結果では、うつ病の人は、感情をコントロールする扁桃体が異様に巨大化し、逆に記憶の司令塔:海馬が萎縮しています。感情と言っても、最も原始的な感情「嫌(危険)」が影響しています。通常なら一瞬で過ぎる感情が残り続け、それに反応した危険回避信号が止まらなくなり、脳が休まらないのです。オーバーヒートで死滅するニューロンも出てきます。しかし、廃人とならないよう強制的に思考をストップさせる安全機構が働き、抑うつ状態となるのでしょう。

運動することにより、原始の自分を取り戻す。だから脳に良いのです。ただし、医師は軽めの運動を推奨します。しかし原始人は、そんな生ぬるい環境で生活していません。生死をかけた激しい運動もあったでしょう。私は、きつめの運動を推奨します。発症する前から続けている週1回の空手道場(今年の真夏は開放した空間での稽古のため、3リットルぐらい汗をかきました)、ほぼ毎日、1時間の水中ウォーキング(空手の前蹴りをしながら)&足上げのストレッチ(上段蹴りができるようになるため)をして、正常な感覚を取り戻しつつあります。

また、運動することによる疲れや増量した筋肉が良質な睡眠をもたらしてくれます。これも脳には効果が大きいと思います。


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