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アイロンプリントでぬいぐるみの顔を作るコツ

最近ぬいぐるみの顔をアイロンプリントで作ってみました。やってみるといろいろなコツがあることに気づきまして、それらを忘れないように記事にまとめてみました。
刺繍が苦手だけどぬいぐるみを作りたい!という方に参考にしていただける内容だと思います。
刺繍で仕上げたい方も、試作時にパーツ配置を確認するのに使えますのでぜひご覧ください。

なお、市販のアイロンプリントシートは、ボア生地などの起毛生地に使用することを想定していない場合が多いです。
メーカーの推奨外の使い方をすることになるので、上手くいかなくても自己責任です。
上記をご理解の上、この記事を読んでいただけますと助かります。

本記事の内容は以下の通りです。

① おすすめの道具の紹介
② おすすめの材料の紹介
③ 起毛生地にアイロンプリントするコツ
④ おまけ アイロンプリントシートの比較

成功するか否かは、道具と材料の選択で8割くらい決まるため、最初の2項目は特によく読んでくださいね。

① おすすめの道具の紹介

使うアイロンは、一般家庭で使われる普通のアイロンで問題ありません。私は3000円くらいの安いアイロンを使ってます。

普通のアイロンとは別に、パッチワーク用のコテがあると、アイロンプリントのパーツの位置決めがしやすくなります。写真に写っているのはCloverの パッチワークこてです。

詳細は③のパートで話しますが、各パーツを正しい位置に貼るために、本接着の前に軽く熱を加えて、布にアイロンプリントシートを仮止めしておきたいです。
仮止めする時に、普通のアイロンだと手元が見えにくいため、パッチワーク用のコテがあると非常に便利です。私はこれなしだと上手く貼れません。

その他に揃えた方がいい道具として、ペーパークラフトなどに使われる、刃が小さくて薄いハサミがあります。私が愛用しているのは以下の製品です。

アイロンプリントシートのパーツを切り抜く時に、普通のハサミだと刃の厚みが邪魔で正確に切り抜くことが難しいです。ペーパークラフト用の薄刃のハサミであれば、非常に精度良く切れます。
使いやすいハサミがあるかないかで仕上がりが全然変わってきますよ。

あとは硬めのアイロン台も必要です。
アイロンプリントはしっかりと圧をかけてアイロンをかけないと接着強度が落ちるため、クッション性の強いアイロン台は適していません。

② おすすめの材料の紹介

使う生地は、ソフトボア(クリスタルボア)などの、毛足の長さ2mm以下のボア生地がおすすめです。
毛足が長いと、接着位置の調整やしっかりと接着することが難しいです。

今回使ったのは、グッズプロさんのクリスタルボアのスキンパフという色です。非常にきめ細かい質感で、ぬいぐるみの肌に使うと美しく仕上がります。

その他にぬいぐるみによく使われる生地として、トイクロス(トイニット)があります。私が試した限りでは、トイクロスにも本記事で紹介する方法は使えます。

また、伸縮性が強い生地は、伸びた時にアイロンプリントシートが剥がれることがあるので避けた方がよさそうです。

生地の選択と同じくらい、アイロンプリントシートの選択も重要です。
アイロンプリントシートには、白い生地用の透明な下地の物と、濃い色の生地用の白い下地の物があります。
今回は、濃い色の生地用の白い下地のアイロンプリントシートを使います。

アイロンプリントシートは、高温で接着するため、基本的に綿生地のような熱に強い生地を対象としています。
ぬいぐるみに使用するボア生地はポリエステル素材の場合が多く、熱に弱い生地です。
低温~中温で接着可能な化繊生地用のアイロンプリントシートを使うと、ボア生地を溶かさずに接着することが可能です。

ただし、アイロンの温度が上がりすぎないように注意すれば、綿生地用のアイロンプリントシートも使えます。
アイロンプリントシートがしっかりくっつき、かつ生地を溶かさない微妙な温度を狙わないといけないため、試行錯誤が必要です。

今回、どのアイロンプリントシートが良いのか気になって3種類ほど購入し、比較をしてみました。
この記事の最後に比較結果を載せていますので参考にしてください。

③ 起毛生地にアイロンプリントするコツ

実際に貼る時のコツを、作業工程に沿って説明していきます。

まず図案を作ります。
私はIllustratorで作成しましたが、絵の描けるソフトならなんでもいいです。

アウトラインが複雑な形だと切り抜く時に失敗しやすいため、なるべく単純な形にしておきます。

逆に、輪郭以外の部分は情報量を増やしておいた方がいいです。
図案がシンプルすぎると、仕上がった時にアイロンプリント部分がのっぺりした印象になって布から浮いて見えます。刺繍だと、シンプルな図案でも糸の凹凸で情報量が増えてリッチに見えますが、アイロンプリントの場合は一工夫必要です。

今回はデザイン自体はシンプルにして、瞳などにキャンバス地のテクスチャを使って、布に馴染むように工夫しました。

図案をアイロンプリントシートに印刷しました。
透明な下地のシートでは鏡像印刷する場合がありますが、今回使う白下地のシートは反転せずに印刷します。
失敗した時のために、予備を多めに印刷しておくと安心です。

印刷したシートを乾燥させたら、パーツを切り出します。

パーツを切り出す時は、各パーツのアウトラインぴったりで切るのではなく、それよりほんの少しだけ外側を切るのがコツです。

アウトラインぴったりで切った例

アウトラインぴったりで切ると、印刷の縁がハサミの刃にあたって削れてしまいます。

正確な位置に貼るために、このようなガイドの型紙を用意しました。
ガイドの型紙の内枠は、貼り付ける図案から0.6mmオフセットした位置にしています。

ガイドの型紙をシール用紙に印刷して切り抜き、布の表側に貼っています。

アイロンプリントシートの台紙を剥がして、ガイドの内側にくるように1つパーツを置きます。
この時、貼りたい位置から少し上にパーツを置きます。

なぜ上に置くのかというと、アイロンプリントシートを貼る時に、ボア生地の毛の流れの方向にパーツの位置がずれてしまうからです。

図解するとこんな感じ。

今回は、ボア生地の毛の流れが上から下へと向いているため、毛の流れとは逆方向にパーツをずらして置いています。

アイロンプリントシートに付属しているシリコンペーパーを上に被せて押さえると、パーツが少し下へずれて、貼りたい位置に移動してきました。
パーツの位置を確認するために、シリコンペーパーは透け感のある物を使う必要があります。

熱したパッチワークこてを軽くあて、パーツを仮止めします。
本接着はすべてのパーツを仮止めした後にまとめて行うため、今は軽く熱してパーツが布からずれなくなればOKです。圧着する必要はありません。

失敗して貼る位置がずれてしまっても大丈夫です。慌てずにパーツを一旦剥がして、もう一度貼り直しましょう。仮止め状態なら剥がしても生地にそんなにダメージはありません。

仮止めする時に、こての温度が上がりすぎないように注意しましょう。
私が使っているクロバーのパッチワークこては、高温設定だと熱くなりすぎてボア生地を溶かしてしまうため、最初は高温設定にしてある程度予熱できたら低温設定に変えて使っています。

パーツの仮止めが終わりました。
型紙の形に生地をカットして型紙は外しておきます。

最後にシリコンペーパーの上からアイロンをかけて本接着します。ここでは、しっかり圧をかけてアイロンをかけます。

この時も温度を上げすぎるとボア生地が変質してしまいます。
アイロンプリントシートによっては、アイロンの最高温度で圧着するよう説明書に書かれていたりしますが、それをやるとボア生地が痛むため、多少接着強度が落ちても中温設定にした方が良いです。

本番の前に、予備の布にアイロンをあてて、温度が高すぎないか確認しましょう。

生地が冷めたらそっとシリコンペーパーを剥がします。
きれいに貼れました!!

組み立てるとこんな感じになりました。作りかけの写真ですみません…完成したら差し替えます。
目にテクスチャーを入れたおかげで、布からアイロンプリントが浮いた印象にならずに馴染んだ!気がする!

刺繍と比べると質感のリッチさや色の鮮やかさは負けますが、刺繍だと難しい細かい図案や沢山の色を使うことができるので、アイロンプリントならではの凝ったデザインを考えてみるのも面白いんじゃないかなと思います。

④ おまけ アイロンプリントシート3種類の比較

最後におまけとして、3種類ほど買ってみたアイロンプリントシートのレビューを載せておきます。
各製品のメーカー推奨の使い方をしていないため、その製品の本当の品質を評価しているわけではないです。その点をよくご理解の上、お読みください。

比較する製品は以下の3種類です。

  • A-one アイロンプリントシート 白色生地・濃色生地用

  • ELECOM アイロンプリントペーパー 白/濃い生地用 化繊用

  • TransOurDream アイロンプリントシート化繊生地用

この記事を書いている時点では、A-oneのアイロンプリントシートがAmazonで品切れになっていますが、他の場所では普通に買えます。

以下、製品名は省略してメーカー名で呼び分けます。

A-oneは、綿生地用の高温接着タイプです。
その他の2製品は、化繊生地に対応しており、中温での接着が可能です。熱に弱いボア生地には中温接着タイプが向いています。

各製品に印刷した目のパーツを、ソフトボアに貼ってみました。

印刷に使用したプリンターはCanonのPIXUS TS8530です。そんなに高くも安くもないごく普通のスペックの家庭用インクジェットプリンターです。インクは純正インクを使用。

印刷品質は意外と違いがありました。
発色の良さはTransOurDream>A-one>ELECOMという感じ。

TransOurDreamは印刷品質がすばらしくて、印刷の細やかさも発色も頭ひとつ抜けている印象です。
ただ、シートの裏面が透け防止のために黒色になっていて、その黒色がパーツの縁から見えてしまっています。
濃色の生地に使うのであれば気にならないのですが、今回の用途だと生地との馴染みが悪く感じます。

ELECOMは、印刷品質・発色は他製品と比べていまいちですが、ボア生地に貼った時の馴染み具合は3製品の中で一番良いです。
写真だと伝わらないんですが、シートの質感が面白くて、キャンバス生地みたいなざらつきがあります。ざらざらした質感が布と馴染むのかも?
あと、この製品に付属しているシリコン紙は不透明で使いにくいです。クッキングシートで代用可能なので、大きな問題ではありませんが。

A-oneは他2製品の中間の印象で、印刷品質もボア生地への馴染み具合もそこそこで、バランスが良い印象です。
ただし、この製品は化繊生地用ではないため、使う時には温度管理に注意が必要です。

耐水性を確認するために、接着から1週間後に布を洗ってみました。
洗剤はエマールを使用し、洗剤入りの水に10分ほどつけ置いた後、手でやさしくもみ洗いしました。

結果は、全製品、印刷が滲んだりシートが剥がれることはありませんでした。手洗いで洗う分には問題なさそうです。

最後に接着強度のテストとして、爪で引っ掻いて剥がせるか試しました。

こちらもどれも簡単には剥がせなさそうでした。
中温接着に対応しているTransOurDreamとELECOMは、特にしっかりくっついている印象でした。
A-oneは接着時に温度を上げ切れていないせいで、少し生地から浮いている感がありました。

以上の比較をまとめた表がこちらです。

どの製品も長所短所がありますが、私は最終的にはA-oneの製品を使いました。温度管理が面倒という短所があるものの、仕上がりが好みだったのでA-oneにしました。

ELECOMは発色の鈍さが気になりました。他の製品を隣に並べなければ気にならないかもしれませんが…。化繊生地に対応しており、扱いやすさを重視するならこちらの製品がおすすめ。

TransOurDreamは、シートの裏面が黒色になっている仕様が今回の用途には適しませんでした。品質はすごく良くて気に入ったので、本来の用途で活用します!

以上!参考になりましたら幸いです。

しつこいですが、メーカーの推奨している使い方ではないため、もろもろ自己責任でやりましょう。