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1-8: 奇跡の生還者

記事をここまで読んできた人の中には

何かおかしい

と思われた方がいるかもしれない。

私は記事を進めるうちに事件の渦中にいた青木氏本人にしか分かりえない状況、さらには彼の心情描写まで書くようになった。

これでは事件ルポではなく、完全に小説の体である。

もちろん事件からたった3~4日では本人への取材が間に合うハズはない。それでもこのような事件ルポを書けた理由はたった1つしかない。

それは私が青木亘
本人であるからということだ。


あの日、私は化学機動中隊の手で生物兵器テロ被害者の専門病院に搬送され、3日間の精密検査を受けた。そうして体内に一切の毒物がない健康体だと診断された。

専門医の話によれば、まず私が事件現場となった文春編集部で入り口付近にいたこと。次に比較的早く退出したこと。

そしてサンルームで30分ほど新鮮な空気を吸ったこと。この3点によって命拾いしたのだという。

事件から4日たった今、あの日、週刊文春編集部にいた者の多くは既に亡くなっている。現在の所、死者は22名・重傷者は11名である。

一方で、私はある種、奇跡の生還者となった。

この記事の冒頭に書いた“ある特別な理由”とは、つまりこういうことだ。

駆け出し記者の私がこの大事件の担当記者になったこと、そしてエロが売りの我が三流週刊誌がこうして臨時特別号を出したのは、私が文春テロ事件の現場にたまたまいた被害者だったからである。

犯人は未だ捕まっていない。

医者の言う通り私の体内に毒物がまったく残っていないのであれば、次号も私、青木亘がこの文春テロ事件を担当させてもらうことになっている。

End of Chapter-1 to be continue≫≫≫



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