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備忘録。1

 本を読んでいる。本をほとんど読んでいなかった時期(月に1・2冊)という時期もあるにはせよ、物心ついた頃から本というものは、身近な存在であった。大学に貼られた「4年間で100冊の本を読みましょう!」なる掲示も「少なくない?」と友達と会話していたような記憶がある。

 ただ、私も読んだ本の内容を忘れるということはよくある。これまでに読んだ本を、読書を管理するアプリなりで記録してはいるのだが、それでも忘れてしまうことはやはりある。また、そのようなアプリは往々にして読書好きしか用いることがないため、「この本をもっと読んでほしい!」と思ったとて、それは一部の人にしか届かないのだ。読書管理アプリで書ける文字数にも限界がある。そこで、私はこのnoteを通して、個人的に気に入った本について緩く語るということをしてみたい。ただ読むだけではどうもつまらない、という最近の私の傾向であろうか。1回の記事で5冊紹介できたら、と思う。紹介する本は最近読んだ本が多いが、時にふと懐かしくなった本を紹介するかもしれない。内容を見て気になった人は是非、読んでみてほしい。

1.伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書)

 私の読書の幅を広げてくれた本といっても、言い過ぎではない。この本を読んでいた当時(2021年)、光文社新書は創刊20周年を迎えており、光文社新書と同い年のアイドル・影山優佳(日向坂46)をフェアキャラクターに迎えていた。影山優佳の生き様が好きな私は、光文社新書に興味を持ち、そこでこの本と出会うこととなったのだ。正直、理系チックな新書は私が文系であるから避けがちではあるのだが、文系の影山優佳がおすすめしているなら、ということもあり、読む事を決めた新書である。
 本書は、情報が氾濫している現代社会での因果関係とそれを解き明かすための実験手法がわかりやすく説明されている。アメリカでの大統領選や九州での電力価格にまつわる実験などを例に挙げて、データ分析の有用性について説いている。数字が極端に前に出てくるわけではないので、全く数学ができないという方にとっても読みやすい新書である。また、このようなデータを読み解く力というのは、虚実ないまぜの現代社会では、非常に重要とされるスキルであろう。数学Ⅰ・Aで学習するデータの分析の重要性について理解が深まった気がする。

2.廣中直行『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか? 心をつかむニューロマーケティング』(光文社新書)

 新書を読み始めたのは高校生の頃からであろうか。通学時間の合間に電車で読むことが習慣になっていた。ただ、読むレーベルの大半は岩波新書と中公新書であった。どうしても、不得手なジャンルは有名なものから読むという癖がついてしまっていた。これは大学に入ってからも、あまり変わることはなく、上述の『データ分析の力』まではやはり、二大新書レーベルに頼ってしまっていた。そういう意味では、他の新書に目を向けてくれた影山優佳と光文社新書とのタイアップ企画には感謝してもしきれないのだ。というわけで、今回は光文社新書で紹介を固めることを許してほしい。
 本書は有名な企業にまつわる裏話が多く記されている。そして、大ヒットに繋がった商品には、私たちの深層心理に関わるような要素が意図して組み込まれているということだ。これは、私たちに購買を導いた要素を無闇に怖がることを促しているわけではない。そのような要素を正しく理解することで、私たちの未来はよりよい方向へ進むということだ。iPhone、レイコップ、くまモン……これらの商品・キャラクターがなぜ大ヒットしたのか、そういうトリビア的視点でも楽しめる一冊だ。

3.酒井敏『野蛮な大学論』(光文社新書) 

 ここからは最近刊行された光文社新書について。大学生協に結構平積みされているので読もうと思った次第。昔の大学というものは、出席点はあってないようなもので、二重履修も全然OK、まさに"野蛮"な地であった。しかし、現在は大学生が出席点を取ろうと授業を熱心に受けている。このギャップに気づいた著者が、大学のあり方について問うという内容だ。私の大学も出席点というものは、少なからずあって、これが果たして正しいあり方かどうかはわからない。ただ、伝え聞く昔の大学よりはより組織的であり、社会貢献の必要性が求められているような気がするのだ。社会貢献、即座に社会に役立つような研究成果が求められる現在では、著者が大学で培ってきた"野蛮"な学問は疎まれる傾向にある。日本の学術研究の未来はこの"野蛮"な学問をどのように取り扱うかという点にかかっているような気がしてならない。

4.おおたとしまさ『なぜ中学受験するのか』(光文社新書) 

 私の生活圏には中学受験という文化がほとんどなかった。1学年100人程度の小学校から中学受験をするのは、5人に満たなかった。その中で、ほとんどが中高一貫校で、1人が難関中学校という割り振りであった。そのため、中学受験をすることに何の目的があるのか、という疑問を前々から抱いていたのだ。そこで、本書を手に取った。
 中学受験というものは、子供の心身面での成長や両親の親としての成長が望める人生におけるイベントの一種だ。ノーベル経済学賞を受賞しているジェームズ・ヘックマンは、幼児教育は子供の非認知能力(意欲、協調性など数字では測れない個人の特性による能力)を高める点で非常に有効であるとする研究成果を報告している(詳しくは、山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)で紹介されている)。中学受験は大学受験までのスタートダッシュを人より早く始めることができるから、多くの人が挑戦するのだと思っていたが、このような心理的にプラスな面もあることを知って驚いた。ただ、あまりに子供に圧力をかけすぎると、かえって逆効果になってしまうことは肝に銘じておかなければならない。

5.林純次『学校では学力が伸びない本当の理由』(光文社新書)

 私は教育に特別関心があるというわけではないが、私自身がその教育制度を享受してきたという経験があるため本書を選んだ。『なぜ中学受験するのか』とやや重なる部分もあり、学校の授業カリキュラム、制度、教師など多面的な角度から現在の教育制度の問題点を浮き彫りにしている。本書で提示されている問題点は、なるほどと思わされる点も多く、確かに振り返ってみれば非効率だったなと思うようなことも多い。私が通っている高校は世間から見ると進学校に数えられる高校で、授業のレベルもそれなりであったが、この授業レベルに適さない人は当然いた。授業内容が全く理解できないという人や、授業内容があまりに簡単なレベルなために聞く価値がないと判断する人だ。どうしても高校の授業というものは、学力上位というよりは、中位や下位の人にレベルを合わせる傾向がある。ただ、集団に一斉に授業を教えることは高校教育で最善の方法であり、個人の能力で授業を分けるとなると人件費がかかることとなる。また、もう1点共感した点は、各教科の連携の薄さだ。高校物理では物体の運動について学ぶ。物体の運動はベクトルという概念を用いることで理解が非常にしやすくなるため、物理の授業では必ずベクトルに話が及ぶ。しかし、高校数学でもベクトルについて学ぶ。数学と物理で似たような話がなされてしまうわけだ。このような非効率性は教科同士で連携して、カリキュラムを組み直すことで少しは改善されるのではないかと思う。現在の日本での教育の問題点を克明に描いている本書は、教育に関心がある人、あるいは、このような教育を享受してきた元学生に読んでほしい。

 こんな感じで読んだ本の感想を適宜、まとめていこうと思う。この記事を読んで気になる本が見つかった方は是非、読んでみてほしい。


#読書 #新書 #光文社新書

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