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定点カメラ#12 美術の館

映画『キャンバス』の制作を俯瞰する(?)定点カメラ12回目。脚本が完成し、撮影に向けて準備を進める今、もう一度映画の題材となるものについて考えてみると、、、

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私たちは、映画を作るのに十分な芸術作品の鑑賞ができていない。ならば観に行こうではないか。いざ、芸術の集うあの館へ。

まずは『スイス プチ・パレ美術館展』へ。ここでフランス近代絵画の流れを掴む。次に、美術監修として映画に協力をしてくれている作家さんのグループ展と個展に向かう。写真で見たことのあるあの絵画を実際に観ると、つくることが少し身近に感じられた。監督はここである絵画に心を奪われてしまったみたいだ。美術館やグループ展は、予想していなかった出会いをももたらしてくれる。ここで私は、絵の前で文字通り動けなくなってしまう人間を初めて見た。『自然と人のダイアローグ』を回るともう頭がパンクしてしまいそうだった。多分していた。

「どの絵が好きだった!?」

「選べん!でも点描画すごかったな〜」

「あれが綺麗だった!夕日の前に立つ女性!もちろんモネもゴッホも!」

「絵を観ている人たちの背筋が伸びてたの気づいた?」

「うん。いいものの前ではスッとなるよね」

多くの作家が、つくることで何かを訴えようとし、時を経てそれを観た私たちが理解しようとする。これが芸術なのかな。

『ルートヴィヒ美術館展』は私たちに、つくる人や観る人が特別ではなく、普通の人間であることを教えてくれた。『ゲルハルト・リヒター展』はまさに、つくり手の心の中を覗かせてくれるような展覧会だった。

「つくった人には100あるけど、観る人には80までしか分からない作品って面白いよね。残り20には絶対に辿り着けない」

「畏れ多さ」

「そう。最後まで観ても、理解できなかった」

完全に知ることができないのが芸術の面白いところだ。

つくる人、特に絵を描く人に焦点を当てた作品には偉大な先輩がいる。『ブルーピリオド展』のサブタイトル「アートって、才能か?」は、今回観てきた数々の作品と、それらを生み出した人たちを最も私たちに近づける言葉だ。そして同時に、これから何かをつくる人たちに向けた、この上なく心強い言葉でもある。

「最後にブルーピリオド展でよかった!最高!」

作品を通してつくることに触れたことで、以前よりも『キャンバス』を理解できたような気がする。

この映画を、つくる人に届けたい。

文責:あきら


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