Banana

大学院生| 映画鑑賞| Netflix| 語学学習(英語、独語) |読書|

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最近の記事

ピープル

街を歩いている時、電車に揺られている時、買い物に行く時、僕たちは「ピープル」に囲まれる。「ピープル」に人間らしさはない。彼らの人間らしさに僕たちは目を向ける時間と心のゆとりを持ち合わせていない。「ピープル」は景色の一部だ。だから僕たちは電車で化粧をするし、大きな音で音楽を聞く。しかし「ピープル」にぶつかって「すみません」と言った時「ピープル」は初めて人間らしさを持つ。言葉を交わすことが、「ピープル」を景色から人間へと変えていく。 しかし言葉なしで「ピープル」は時に人間化する

    • ウイスキーがお好きでしょ。

      バーにハンチングを被った、男たちがスタスタと入ってきた。面倒くさそうにタバコをふかしながら、いつもの奥の席へと向かっていく。その中の一人、髭を貯えた男がカウンターに「いつもので」と低く響く声で注文する。周りの客はいつもの光景を横目で見ながら、それぞれの談笑を楽しむ。ハンチングの男たちは席へ座ると足を大きく広げ、話始める。「あいつらは俺らが誰かを分かっちゃいねえ」興奮気味の男がグラスを机に叩きつける。穏やかではない雰囲気を察したリーダーが話し始める。「これを飲んでからだ。」

      • マジシャン

        なんでも好きなものを手の中から出すことができるマジシャンは今日も町の人たちを魅了している。鳩、コイン、お金、なんだって出すことができる。町の人たちは自分たちを楽しませてくれるそのマジシャンのことが大好きだった。しかし、誰一人としてマジシャンがどこに住んでいるのかわからなかった。そして誰もマジシャンの名前を知らなかった。今日もマジシャンは舞台の上に上がって最高のショーでお客を楽しませる。剣、ドレス、宝箱と次々に出していく。最後に犬を出したところでショーは終わりを告げた。大歓声の

        • 「心の伸び」

          「心の傷は消えない」とはよく言ったもので、傷ついた記憶はなかなか忘れられない。数年前のことだって昨日のことのように傷つくし、悲しくなったりする。確かに傷ついた記憶は気分を落ち込ませたり、もう一度傷をえぐったりするけど、人はそれを糧にできるし、それを乗り越えるために強くなる。月並みなことだけど、こういう人の健気さ、まっすぐさはきれいだと思う。 人を傷つけた記憶はというものは本人の意識がない限り、すぐに消える。いじめていた側以上にいじめられた側が覚えているというのはよくある話。け

        ピープル

          バー保安官

          ある寒い冬の夜、長いコートを着た背の高い男がバーに入る。男はバーに入ってビールを注文すると美味しそうに口に入れた。それからバーを見渡し、今日も人で賑わうバーの雰囲気を楽しんだ。友達同士おしゃべりを楽しむ、一人角の方で本を読む、恋人同士キスをする。各々バーを楽しんでいることを確認すると、男はそそくさとバーを立ち去る。男はバーを行き来し、その平和を保つバー保安官なのだ。老若男女さまざまな人間が集い、酒を飲み、酔い潰れるバーの平和が保たれているのはバー保安官のおかげだったのだ。

          バー保安官

          雨日記 1

          雨が降ると現れる女性がこの辺にいるらしい。短髪でハツラツとした元気いっぱいといった若い女性だ。 くもり空のある朝、僕が仕事に向かっていると、 「雨降るよ、この後」 そんな声がした。振り返ると、噂の女性が立っていた。本当にいたんだ。 僕は急いでいて時間がなかったから、そのまま駅へと向っていった。 仕事場について朝のメールをチェックしていると外の雨の音が聞こえた。彼女の言ったことは当たっている。そんな彼女について知りたくなった僕は気が付いたらスマホで次の雨の予報を探していた。

          雨日記 1

          カッコつける

          今日もペンを走らせて何かを書いている。 いつ終わるかも、何を書いているのかもわからない。人生はそんなものだ と誰かが言った。僕はそんなことを真面目な顔で言える人の気が知れない。 人生論について語るなんて、、、、 そんなカッコいい言葉を恥ずかしがらずに言えるなんて、 僕はカッコいい言葉を言える程カッコよくないのかと納得した。

          カッコつける

          歩コーヒー(あるコーヒー)

          僕はコーヒーを歩きながら飲むことができない。歩く時の振動でコーヒーが一気に口の中に入ってきてやけどしたり、怖がって全然飲めなかったり。「歩コーヒー」ができないのだ。世の中にはそんな「歩コーヒー」をいとも簡単にやってのける人たちがいる。彼らはコーヒーを片手に、どこかへ急いで歩いていく。思わず、「ゆっくりしたらどうですか。」と声をかけたくなるほど、せかせかとしている。コーヒーを飲むことを一つの作業として行っているようにも見える。髪を乾かす間に歯磨きをするように。そういう人達を見る

          歩コーヒー(あるコーヒー)

          春気分

          春が近づいてくる足音を聞くと、冬の間に凝り固まった気持ちがそっと伸びをする。気持ちが晴れやかになって、何かを始めたい気分になる。僕はこの気分を個人的に「春気分」と呼んでいる。新年が始まって数か月、やっとやる気が出てきた。心が開いてくると自然の音にも気を配るようになる。今日の風はいつもより元気がいいなあ。少し前までは自分を温めることで精一杯で自然のことなんて知らんぷり。 心に余裕が出てくると、優しくなれる。他人にも、自然にも。「それじゃあ、一年中春にしよう」なんてことを言う人が

          春気分

          トースター物語

          毎朝僕は働く。僕のシフトはだいたい朝だ。週末には朝と昼の間にシフトが入るなんてこともよくあるけど午後になると僕はお払い箱さ。誰も構ってなんてくれない。僕は小さいからお菓子を作るのには都合が悪いし、料理にも使えない。この間うちにオーブンレンジが新しく来た。今まで僕の仕事だったパンを焼くこともそいつに奪われてしまった。 僕ならもっとパンがおいしく焼けるぞ! 僕の焦げ目のつけ方は誰にもまねできないぞ! そんなこと誰も聞いてくれないさ。僕の存在意義って何なんだろう。

          トースター物語

          本を読む冒険

          本を読む人の中には、「本を読むことでいろいろな世界を冒険することができる」という人がいる。確かにいろいろな経験を本から得ることで一種「冒険」のような経験を得ることができるのは確かだ。しかし、僕はこの比喩にいささか違和感がある。「全然いいよ。」という言葉と同じくらい。 そもそも「冒険」は「主体的」であり、予想外のことも起こるけど、ある程度どこに行って何をするかを計画することができる。「冒険」も長さも自分で調整できる。だから「思ったよりも長かった」みたいなことはそうそう起こらない

          本を読む冒険

          くもり時々くもり

          人の心は天気みたいなものだ。一年中晴れみたいに上向きな人もいれば 雨の多い下向き加減の人もいる。いつもくもりの人もいる。僕はそういう人を知っている。 特段悲しそうなわけでもないし、変に明るいわけでもない。しかしいつも心が晴れない。 僕はそういう人が好きだ。そういう人は物事を心の中でありとあらゆる方向から眺め、じっくり時間をかけて吟味する。話し方も落ち着いているその人たちの言葉の一つ一つは適度な重みがあって、心に残りやすい。僕はどちらかというと晴れ時々雨の性格なので、くもり時々

          くもり時々くもり

          パラノイア

          みんな僕のことが嫌いだ。 みんな僕のことを貶めようとしている。 みんな僕の悲しむ顔がみたいんだ。 SNSで僕の目につくのはネガティヴな言葉だけ。 そんな言葉が心に刺さって、毎日血を流している。 そんな僕はポジティブな言葉に目を向けたことはない。 心の血を洗い流す清らかな言葉を拒絶しているのは僕なんだ。 好き、好き、好き 完璧じゃない自分が好き 頼りがいのない自分が好き そんな言葉なんて案外そこら中にあふれてるのかも。

          パラノイア

          熊、リス、魚

          昔々山の奥に体の大きな熊が住んでいました。 熊は毎日お腹が減ると川に行って、魚をお腹いっぱいになるまで食べていました。 ある日熊がいつものように川で魚を食べていると、リスがやってきました。 「くまさん、そんなに食べたら魚さんがかわいそうだよ。」 熊は魚を夢中で食べ続けながら 「じゃあ、リス君は僕が何も食べられなくていいっていうのかい?」 リスは慌ててこう答えました。 「そうじゃないさ。木の実をたべたりすればいいだろう。そしたら誰も悲しまないさ。」 熊は呆れた顔をし

          熊、リス、魚

          ありがとう

          ありがとう、ありがとう みんなのために無理してくれてありがとう ありがとう、ありがとう 人知れず頑張ってくれてありがとう ありがとう、ありがとう 今日も、明日も、明後日も 元気でいてくれてありがとう ありがとう、ありがとう たまには一休みしてはいかがですか。 有り難い自分にありがとう。

          ありがとう

          匂いの不思議

          匂いを嗅ぐと思い出がよみがえる。匂いだけで楽しくなったり、悲しくなったり、気まずくなったり、申し訳ない気持ちになったり。 金木犀は昔住んでたボロアパートの嫌な思い出。 チョークは学生時代の放課後の良い思い出。 良い匂いはラベンダーの香りじゃないし、臭い匂いは、ゴミの匂いじゃない。 良い匂いの人はいい思い出の人。香水の人じゃない。 好きな匂いは勿論、実家の匂い。

          匂いの不思議