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開発初期の段階でAlが不良を予測

開発者の皆さん。製品がいよいよ発売!という時に不良が見つかって発売延期、または発売中止になった経験はありませんか。新商品の開発初期の段階で製品の不良を予測できるAIがあったら使いたいと思いませんか。そう、まだ無い。あるいは知らないだけか。

開発者にとって最大の喜びは、開発に携わった商品が世に出る事だと思う。私が新入社員の頃に初めて開発を担当した商品がある。その商品の開発に5年かかったが、結局発売出来なかった。理由は外観不良だ。その商品をMと呼ぼう。開発担当は、私と一つ上の先輩の二人だった。私達は、仕様を決めるためにMの性能を上げるあらゆる試作品を作った。また、Mをお使いのプロの方からアドバイスを頂くために新幹線で何度も出張し、試作→評価を幾度と行った。(昔のノートを見返したらその数46回だった。)その試作にAIや統計を使えば良いだろうという声も聞こえてきそうだか、この分野ではまだまだAIや解析で分からない事が多く『感』で設計しているのでここでは割愛する。

ではなぜ、多くの方に使ってもらえる高性能のMが完成したのに、外観不良で発売出来なかったのか。考えられる理由は2つ。1つは、私と先輩をはじめ開発チームメンバーは、この程度の外観不良は致命的ではないと考えていたから。もう一つは、営業チームメンバーにMを使った事がある人が一人もいなかったからだ。まず致命的な外観ではないという認識。私を含む数人の開発メンバーは、日常的にMを使う。その外観の不良があっても使用に全く問題がなかった。問題ないとは言ったが、外観不良の原因を検証して、原因の工程を突き止めた。そして、その改善が難しい事も分かった。二つめの営業メンバーがMを使った事が無いという事が特に問題だった。営業は、この外観で売っていけるか最後の最後で疑問に思ってしまい、社外の小売店に外観だけ聞いてしまった。製品の性能を突き詰めた結果、Mは誰にもその性能を評価されることなく倉庫の引き出しにしまわれた。

私達はどうすればよかったのか。もし当時AIがあれば、開発の初期の段階でお互いに不良モードを確認していれば良かったんじゃないかと思う。例えば、AIが社内の過去の不良データを種類別、レベル別(開発ストップになるレベル10、販売は出来るレベル3とか)に分類したとする。製品の企画段階で開発と営業が同じ認識だったら、きっと今頃Mは多くの人に使われていたかもしれない。

この経験がその後の私の業務に生かされている事は確かだが、今も倉庫には沢山のMが眠っている。そして、製品の品質の基準にいまだに疑り深いのは、この時のトラウマに他ならない。

今の技術ならそんな事もAIで可能なんだろう。もう取り入れている企業もあるかもしれない。しかし、わが社の導入事例はまだ無い。この記事が、これからどのようにAIを取り入れていけばよいか考えるきっかけになりそうだ。