にあん

卵巣癌IIIC。 にゃんこと共に、都会の片隅でひっそり生息しております。

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最近の記事

コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。⑧

その時、患者は地獄を見た。朝食前の時間、不安げな表情で朝の挨拶をして来た若い兄ちゃんが研修医だとわかるのに、時間は掛からなかった。 ネームプレートにそう書いてあったからね。 この時点で何もわかってない患者は、これから何が起こるのかわからないまま朝の挨拶を返し、よろしくお願いしまーすと言われるがままに腕を出す。 「あ、こっち側じゃ無いんです」と内側を出した掌を返された。 あれ?そうなの? 「採血とは違うところに入れるんです」とな。 ここから研修医くんの格闘が始まる。 とにか

    • コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。⑦

      日帰りか入院か。腫瘍が大きい(10cm超)のと腹膜播種がある為、先に抗癌剤を何回かやり、腫瘍を小さくしてから手術をする事になった。小さいのは抗癌剤でかなり叩けるらしいので、取りこぼしを少なくする為でもある。(2回目) ここでも無知な自分、育った腫瘍を小さく出来ると言う事に驚いた。悪いものをサクッと取って、また出て来ないようにする為の抗癌剤だと思っていた知識の甘さよ。 パクリタキセルとカルボプラチンと言う冗談のような美味しそうな名前の抗癌剤を点滴で入れる治療。TC療法と呼ぶ

      • コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。⑥

        慌てる上司。診察終了後、今後の相談も兼ねて上司へ連絡。 悪性だった事を伝えると、「マ────ジかよ……。嘘だろ……」と本人以上にダメージを受けている。 抗癌剤投与の入院は二泊三日だし、副作用もずっと出っ放しではないと聞いていたので、働きながら治療をしていきたいと言うと、「ちょ、ちょ、待って。俺も初めてのケースだから人事と相談させて。抗癌剤って副作用結構出るんでしょ?」 まあそう言う反応ですよね、普通は。 「出方は人によって違うそうなんですよ。ステージIで死ぬ程キツい人もい

        • コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。⑤

          ガン告知は突然に。ソワソワしながら迎えた結果発表の日。 日本アカデミー賞でもレコード大賞でもありませぬ。ただの一般人の検査結果が出るだけです。 姉まで呼び付けて大ごとになっちゃったけど、そう言う時に限って大した事無かったりするんだ、うんそうだそうだ。 恒例の長時間待ちを経て姉と共に診察室へ入ると、早速画面の確認。 背後では姉が一昔前の事件記者のようにメモとペンを構えている。 またしても怒涛の写真解説が始まり、その一環で先生が言った。 「癌ですね。ステージはIIIC」

        コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。⑧

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。④

          腹水穿刺。PET-CTを終え、次の日は腹水穿刺の為に日帰り入院をした。 入院なんて、前回がいつだったか忘れるくらい前の事。 日帰りなら別に何も用意しなくて良いじゃん?と余裕で構えていたら、一応一通りは用意するよう言われてしまった。 普段はTシャツに短パンだから、流石に不味い。 仕方なく、ルームウェアみたいなパジャマやタオルなどを慌てて準備する。 この時はまだ自分の身体が大変な事になってるとは露程も思ってないので、次に使うのはいつになるかわからない物を用意する事態にまた無駄

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。④

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。③

          大学病院デビュー世情に疎い自分でも、名をよく知る病院である。 自宅近くにあるとは思ってもみなかった。 自分が持つ大学病院のイメージは、白い巨塔と医龍である。 田宮二郎や唐沢寿明や坂口憲二が眉間に皺寄せて院内を練り歩いてるイメージなのだ。 こんなとこ通うのは一般的な病院では手に負えない難病や、治療が困難な人に限られてるのでは無いかと思うんだが、違うのか。 来てしまって良いのか本当に、本気で悩む。 繰り返すが、それが自分の持つ大学病院に対するイメージなのだ。大袈裟かも知れないけ

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。③

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。②

          まずは内視鏡内科へ。検索をしまくった結果発見したのは、最寄駅から数駅先にある、内視鏡専門の消化器内科。 まだ開院して間もないこの病院の院長は、自分でも名前くらいは知っている某・有名病院の内視鏡専門科で部長を務めていた先生だ。 内視鏡専門ならサクッと中を見てすぐ判断して貰えるだろう、と言う安直な考えですぐネット予約。 何年か前に子宮筋腫で通っていた大きい病院(地元の病院から紹介状出されて行った)は予約が物凄く取り辛く、電話のみ・しかも予約出来る曜日が限定、時間帯も数時間限定

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。②

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。①

          遂に中年の仲間入り?緊急事態宣言が出され、それに伴い我が職場も世の中に倣い長期休業を余儀なくされた2020年の春。 接客業なので、自宅で仕事をする事は当然無理。現場の人間は一斉に自宅待機となり、その長い休業から明けて現場に戻ったのが初夏くらい。 久し振りに戻った現場で、1ヶ月半の休業でこんなに体力が落ち、仕事の勘も鈍るのかと毎日自分のヘタレ加減に当時は凹んでおりました。 仕事中着る制服がまたゆとりの無いピッタリした、身体の線がモロに出るデザイン。 それだけでも中年体型には

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。①

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。序

          今や日本人の2人に1人は罹ると言われている病気、癌。 これだけ確率が高いにも関わらず、まさか自分が罹患するとは思わずに日々を過ごしているのが普通だと思う。自分もそうだった。 新型コロナウイルスで日本中が振り回された2020年の事。 卵巣癌が発覚しました。 ステージはIIIC。 猫達と戯れ、彼らとの暮らしを守る事を勤労の目的とし、毎日をのほほんと暮らしていた人間の人生に突然出現した、癌という名前の非日常。 平凡な自分の人生にいきなり、前触れも無く、奴は土足で踏み込んで

          コロナ太りかと思ってたら、癌だった話。序