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夫婦×金×育ち

私たちは結婚して2ヶ月の新婚夫婦である。結婚式を4ヶ月後に控え、バタバタしても幸せな日々を送っている。
日ごろ仲のいい夫婦だと思っていたが、悩み事が起こった。

主人の仕事の成績が伸びず、結婚式に会社の人を招待しにくいといった理由だった。
会社の人で半分を占める予定の結婚式に待ったがかかった。
4年目の営業の仕事に自信を無くしつつあった主人を見るのはつらかった。
上司のプレッシャもあり、結婚式に一瞬陰りがみえた。


会社に貢献できていない自分が結婚式で祝ってもらうのは忍びないと感じたのだろう。
いつもなら、そんなの気にしなくていいとまともに取り合わない私であった。
今回ばかりは主人の気持ちを考えてみた。

主人の悩みはこうだった。

仕事で数字が取れない。

会社に貢献できていない。

祝儀を頂くのに値しない。

私は全く理解ができなかった。
仕事と結婚式(プライベート)なのだから関係はないと考えるからだ。

少しずつ成績が伸び、主人は自信を取り戻しはじめた。
結婚式の全員招待を前向きに考えるようになった。


これで解決だと思った。


3日前からだ。また事件は起きた。
主人の成績が伸びなくなり、元気がなくかった。

おそらく、精一杯なのだろう。

以前の結婚式の全員参加は、承諾の上話が進んだため問題は別の形で現れた。

自分の販売している商品を母に購入させ、営業成績を上げたいと言いだした。
会社では自然な流れだった。しかし私は納得できなかったし、無念だった。


出資金は自分たち夫婦が負担する言い分が理解できなかった。その金額は20万だ。
どこにそんなお金があるのか。結婚式も控え、余裕ができたらハネムーンにいきたい。
人生で一度の機会を十分に謳歌したいと考えていた。

欲しくもないのに一銭も払いたくない。ましてや望んでもいないのに。

その夜、主人は私に懇願するかの如く頼み込んだ。

首を縦に振る気はサラサラなかった。おやすみを言って、お互い別別の寝室にむかった。

ベットに横になると、どっと涙が溢れた。泣いたのは、何年ぶりだろう。
複雑な気持ちだった。

主人の成績が振るわない。
私は主人の頑張りが楽しみでもあったし、励みにしていた。
元気に家に帰ってくる主人が好きだった。今はどこか元気がない。

ベットに入ってから、1時間ほど眠れなかった。昼間忙しく仕事をして疲れていたはずなのに。

主人もここ3週間程度。変な時間に目覚めると不眠を口にしていた。仕事を休む日もあった。

主人はこんなにもストレスを抱えていたんだ、全然気づけなかった。

いてもたってもいられず、1階の主人の部屋に行き、抱きついた。
「大好きだよ」と返してくれた。

「この人…。どこまで優しいんだろう。」
私はまた自分のベットに戻り、考えた。

主人の父親、母親は私たちよりお金に余裕があるのを知っていた。
両親に頼むべきと私はさっきの会話で反論していた。

営業成績のために身銭を使うのに、反対だった。
主人のくだらないプライドが許せないと思ってしまった。
こんな理由でお金を出して、何になるのだ。
メリットが感じられず、こんなことがまた起こるんじゃないのか。その前に私が負の流れを絶たないと変な正義感との葛藤だった。

それでも、どこか主人を信じたいと思った。
実際は理に叶っていなくても。

自分の感覚のでき方


私の育った家は裕福な家ではなかった。
周りが持っているからという理由で、プーマのジャージを欲しがった私に父は強い剣幕でどなかった。

私は怖がり泣きながらも、父に話をした。
「無名のジャージに比べれば、高いが長持ちする。物がいいから。約束する、必ず長く使う。」

大人になった今でもそのジャージは大事にしている。
買ってもらってすぐ、バレー中飛び込んでボールを拾ったら、膝に穴が空いたがまだまだ使う予定だ。

あの時、果敢に立ち向かって父を説得させた私の苦労を主人は知らない。
主人の頼みは当時の私ほどでないと悟った。

プーマジャージ騒動には後がある。
「あんなに子どもを泣かせなくても、ジャージの一つなってやればいいのに。」
祖母は言った。

子どもの私は自分の置かれている状況を理解した。

こんな苦労をしなくても、プーマのジャージを履ける子がいるのか。
はじめての感覚だった。

主人は育ちのいい人で大人しい。


私があの日感じた、悔しさを解らないのだろう。
あの出来事から私は辛抱強く相手を説得する術を、ことあるごとに研究した。

ベットの中で1つの決断に至った。
結果としてはこうだ。お金は出そう。だが、貸すという条件付きで。金額も20万ではなく私の貯えの10万を。

あとの不足分は主人が財布と相談してもらおう。
私なりの気持ちの整理と折り合いの付け方だった。

前日までびた一文出さない話し合いだった。
主人は今朝私の話にビックリ仰天していた。
私が折れた案を出してきたからだ。

今回の決断は、賢い選択とは未だに思っていない。
それでも主人と暮らしていこうと思っている矢先に、金で喧嘩したら愛を育む前におわってしまうと。

自分と考えのズレは誰にでもある。

せっかく選んだ相手なのだから、損得より大事なことを考えさせられた昨日でした。





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