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タケモトピアノのCMに出てくるピアノ、デカいよね?

どれくらいデカいのか調べてみたよ!

なんで今まで気づかなかったんだ

深夜にぼーっとテレビを見ていたとき。
番組本編よりも耳に残る、あのメロディが流れてきた。

「もっとも~っとタケモット♪ もっと!」
「みんなまぁ~るくタケモトピアノ♪」

このCM今もやってるのか!

CM界の金字塔、ピアノ買取専門「タケモトピアノ」のCMである。
朝日新聞デジタルによると、2000年から放送しているという。当時、テレビはまだブラウン管が主流だった。画面の縦や横より奥行きの方が厚かった時代から続いてるCMなのだ。

一応YouTubeを貼っておくが、見たことがある方は多いだろう。
ひとりのジェントルマンと4人のダンサーが、ピアノの上で踊っている…

え?「ピアノの上で踊る」?

ちょっと待て、あのピアノめっちゃデカくない?
何百回も見ているはずなのに、なぜ気づかなかったんだろうか。

気になり出したら止まらない。ピアノのデカさを調べよう!


あのピアノは何ピアノか?

まず、ピアノは「グランドピアノ」と「アップライトピアノ」に大別される。

どっちピアノ

一言で言うと、弦が水平に張ってあるのがグランドピアノ、垂直に張ってあるのがアップライトピアノだ。形状やサイズには大きな違いがある。

では、CMの舞台となっているのはどっちピアノなのか?
これを最初に特定したい。

しかし、残念ながらCMには鍵盤の部分しか映っておらず、ピアノ全体の姿がわからない。
「カメラさんもっと引いて!」と指示したいところだが、メインはあくまでも歌とダンスなのだから仕方ないだろう。

だが、ピアノに詳しい人だったら、鍵盤を見て種類がわかったりしないだろうか?
ものは試しと思ってツイートしてみた。

すると、

なんと、予備校の世界史講師である世界史の鳩さんがリプライを!
さっそくDMでお聞きしてみた。

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「ピアノに詳しい方」と呼びかけて、相談内容がこれだとはよもや想像できなかったと思うが、全くたじろがず確認してくれる鳩先生。

そして数分後。

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えっ、わかるの?なんで?

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フタの裏…?

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すっ、

すっ、

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人生で初めて「コナンの推理に立ち会う奴」の心境を体験できた。驚嘆すべき観察力と推理力。
皆さん教訓です。事件の犯人になるなら、コナンと鳩先生がいないことを確かめてからにしましょう。そもそも犯人になるな。

鮮やかにピアノの種類がわかり、調査が大きく前進した。
世界史の鳩さん、ありがとうございました!助かりました!


デカさを計算する

さて、このピアノはアップライトピアノである。

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5人の人間が鍵盤を踏みしめて踊れる規模のピアノ、どれくらいのサイズなのか?

ヒントになるのは、中央にいるジェントルマンこと財津一郎さんである。
オンライン人物辞典によると財津さんの身長は176cmだというから、
①画面上で「財津さんの身長」と「白鍵の幅」を測定し、白鍵の幅を求める。
②その幅を普通のピアノと比較して「普通のピアノの何倍か」を求める。
こうすればサイズがわかるはずだ。


写真 2021-05-10 20 22 01

まず、財津さんが正面向きに映っている瞬間をスクショして印刷。
デジタルノギスで計測したところ、財津さんの身長は87.05mm、白鍵の幅は46.55mmであった。

測定結果より、白鍵の幅は財津さんの身長の0.53倍だとわかる。
財津さんの身長は176cmなので、デカピアノの白鍵の幅は94cm。横断歩道の白線の幅が45cmだと言えば、その長さがイメージできるだろうか。

計測

これに対して普通のピアノの場合、白鍵の幅は2.3cmである(参考)。つまり、デカピアノは通常の41倍のサイズなのだ。

ここまでくれば、全体のデカさを求められる。
ヤマハのアップライトピアノを参考に、各サイズを41倍すると…

出た!
デカピアノは幅63m、奥行き25m、高さ50mだ!

普通のピアノと比較

50mという高さは16階建てのマンションに相当する。これを見て「建物」と呼ぶ人はいても「楽器」と呼ぶ人はいないだろう。普通のピアノが、たらこスパゲティを食べた後のお皿にはりついた海苔の切れっ端みたいになってしまった。

ここまでデカいとなると、タケモトピアノの本社ビルを超えているのではないか?
タケモトピアノの公式サイトによると、本社にはピアノの修理工場があるという。サイトには工場の外観が載っているが、高さは目測で20~30mぐらいだ。どう考えてもCMのピアノの方がデカい。

タケモトピアノと比較

本社を食う勢いのデカピアノ。もはや周りの建物の日照権が心配になるレベルである。

そして忘れてはならない。
CMでは、鍵盤の上でダンスしていることを。

一般的なアップライトピアノの場合、鍵盤の高さは床から73cmだという。(参考:ヤマハのサイト
デカピアノは41倍だから30mだ。

崖っぷち

CMでは朗らかにパフォーマンスしているダンサーたちだが、実は高さ30mの断崖絶壁で踊っていたのだ。
しかも映像を見る限り、ダンサーは命綱をつけていない。ひとたび足を滑らせれば一巻の終わりだ、というか足を滑らせてすっ転んでるシーンあるじゃないか。振付師は人命を何だと思っているんだ。

財津さんの艶のある歌声に表情豊かなダンス。あの楽しげなCMは、アクション映画のように命がけのセットで撮影されていたのだ。ぜひともジャッキー・チェンにこの事実を伝えて、感想を聞いてみたいものである。


誰が弾くピアノなんだ?

そんなピアノが存在したことに驚くばかりだが、謎が残る。
このデカピアノ、誰が弾くピアノなのか?

普通のピアノは、身長160cm~170cmぐらいの人間が弾くことを想定して作られているはず。つまりデカピアノを弾く者の身長は41倍で、70mの巨大生命体ということになる。

そんなUMAが日本に存在するのか?特撮じゃあるまいし…

だが、あきらめずに考えればヒントが見つかるものである。タケモトピアノの所在地は大阪なのだ。
大阪にいる、身長70mの者といえば。

脳内をさまようスポットライトが一点に重なり、その人物を光らせた。


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太陽の塔である。

1970年の大阪万博において、芸術家・岡本太郎が発案し制作された巨大な彫刻だ。高さはなんと70m。「なんて大きいんだ」じゃなくて「なんてピッタリなんだ」という意味の、なんと70mである。

太陽の塔は万博会場の中心に屹立し、約半年の会期にわたって訪れたのは917万3533人。
しかし祭りが終われば、周辺の展示施設はことごとく撤去され、太陽の塔だけが取り残された。
月日が経ち、次第に老朽化してゆく寂しさがそうさせたのだろうか。

太陽は、ピアノを買った。

漆黒に輝くアップライトピアノを据え、両腕をぐにぃ~っと曲げて鍵盤に向かう太陽。

太陽
【ピアノを弾く太陽の塔】

楽器を買いたての頃は、メロディーにならなくても何かしらの音を出すだけで心が躍るものである。新鮮な音色にしばし身をまかせる太陽。

太陽演奏
【ノリにノってる太陽の塔】

しかし、その日のうちに太陽は悟る。
ピアノという楽器が自分には向いてないことを。

なぜなら、

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腕がぶっといからである。
細かい指運びができない、どころか指自体が無いその両腕は、常に5~6本の鍵盤を一網打尽に押し込んでしまう。演奏というよりゲームセンターで台をバンバン叩いてる中学生みたいだ。レミオロメンの名曲「粉雪」を弾いても、黒鍵白鍵が束になって襲い来るドカ雪のような旋律になってしまうのだ。

買う前に、誰も太陽に「ピアノはドラムじゃないよ」と教えてあげなかったのが悲劇だった。
いつしか太陽はピアノに向かわなくなり、貴重な巨大楽器は部屋の隅に追いやられ、そのまま洗濯物置き場と成り果てる。

Tシャツや靴下が山積みされたデカピアノを見て、太陽はやるせなくつぶやいた。
「このピアノなぁ。無駄にスペースとってるだけだし、もう捨ててしまおうか…」

そのとき、同じ大阪府内から美声が!

太陽の塔とタケモトピアノ

南風が運んできたバリトンボイスは、ピアノ買取界の王・タケモトピアノからの助け舟だったのだ!
売買契約はたちどころに成立し、太陽もタケモトピアノも大満足!みんなまぁ~るく収まったのである!

そして、タケモトピアノは買い取ったデカピアノを舞台として見事なCMを作り上げ、人々に愛される存在となっていった…


デカピアノには、まだまだ謎が多い。
作ったのは誰か。今どこにあるのか。

気になることは尽きないが、最大の謎はこれだろう。


あのCMはいつまで続くんだろうか。


参考文献
太陽の塔(編著/平野暁臣 2018年 小学館発行)


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