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L'Effervescence~サステイナブルな美食~

良い波だった。
前半の複雑な繊細さ、引き出された野菜の滋味、後半のストレートな旨味甘い熟成が香るデザート、点で合わせるドリンクの香りとバリエーション……
どれも凄かった。

火入れ、香り、旨味、五味、温度、演出、構成、、、と色々な面で楽しめた。
値段もそれなりにするが、それでも納得する美味しさだった。

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2020年の12月、ミシュランガイド東京で新たに三つ星を得たのは2件。
茶膳華と、L`Effervescenceだ。

更に、新基準であるグリーンスター(環境に配慮した店への評価)を得たのは6店。
L`Effervescenceはそれにも選ばれている。

グリーンスターの基準はサステイナブル。
詳しくは後ほど解説するが“持続可能な食“に焦点が当てられた。

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お店はシックな作りだが、漆喰土壁が使われていたりと内装にも環境への配慮が見られる。

・料理

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ウェルカムドリンク

2種類の酒を合わせて熱燗に、パプリカ、ローリエ、胡椒、コリアンダーの香りを移す。

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日本酒と白ワインを合わせる驚き。
正直そこを合わせる意味は理解出来なかったが、コレでバランスが取れるのだろう。

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金杯に、パプリカの綺麗な色が美しい。
味は、パプリカとローリエが強く、胡椒が味を締め、仄かにカルダモンが香る。
結構熱め。寒い日だったのでちょうど良い。

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俺は左の白ワインを飲みつつ。
友人は右のシャンパンで。

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メニューは比較的分かりやすい。
抽象的じゃないメニューが好きだ。

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一献野菜クリスプのブーケと豆腐サワークリーム

野菜の味がとにかく良く引き出されていた。
仄かに塩にも調味されていたかな??
玉葱が特に美味かった。

ソースは、クリーミーながらサッパリ
オリーブオイルが苦いのも良い。
このソースはそのままパンにつけて食べる。

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ナイフは好きなのを選んでってやり方。
たしかに愛着が沸く。

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ずっしり系で使いやすく、かなり切れる。

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茶道を意識しているそうで、最初は米。
温かいご飯で腹と舌のウォーミングアップ。

目の前でグツグツと仕上げる事で、面白さ、香り、温度がしっかり。

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ふぐ白子 ササニシキ 自家製干し貝柱 カラスミ

干し貝柱の出汁で炊いたリゾット。
焼き白子とカラスミが和のテイスト。

仕上げの紫芽(シソの花)が良いアクセント。
カラスミをほんのり効かせるのが素敵。
この値段だからこそできる料理。

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じゃがいも入りフォカッチャ

パンは2種類、最初はフォカッチャ。
焼きたてで無く、あえて時間を置いて常温にする事で甘さやしっとり感を際立たせる。

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最初の豆腐サワークリームのソースをパンに塗って食べる。
パンは少し油が多いように感じたが、ソースがバターより軽く、酸味がある為に良い塩梅。

パンに塗ると、オリーブオイルの苦味がハッキリしてパンの甘さが引き立つ。

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次は野菜の盛り合わせ。
この日は45種類
先に見せて貰えるのでワクワクする。
見せ方や話し方も上手で素敵。

生江シェフの修業先へのリスペクトを込めた品だそう。

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野菜の一覧の紙。
こんなにマニアックな西洋野菜を国内で作っているのが驚き。
生産者を身近に感じる。

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裏には、他の食材の生産者のリスト。
有名な所から、マニアックな所まで様々。
国産にこだわっているのが伝わるのが良い。

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アルチザン野菜

シンプルながら、様々な味と香り、歯応え、と素材の味がよく分かる。
1個1個食べる事で、味覚が開く感じ。

昆布の粉末を少し置いているのがまた良い。
飽きさせない工夫だなぁ。

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古代小麦入りパン

生江シェフが監修している、ブリコラージュというパン屋の物で、全粒粉や国産小麦にこだわっている。
しっかりした酸味で大好き。

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蕪を複雑に火を入れて シンプルに

この店のスペシャリテ。
何時間もかけて火入れし、仕上げに焼き目をつけ、塩、イタリアンパセリのソースで。

オープン当初から同じ火入れ、同じ味付けで、変わるのは蕪だけ。
何度も食べる事で味の違いが分かるそう。
歯応え、ジューシーな果汁、塩加減、ソース、どれも良い。
切ると固いが、口に含むとこれでもかとジュースが広がる。

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次は魚料理。
熱々の備長炭がでてきた。
銀杏を煎る網に炭をいれて、、、

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ノドグロの上から火入れ。
まさかのスタイル。
ふつふつパチパチしてきて、脂が溶けているのが分かる。

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のどぐろ ずわい蟹 菊の花 里芋 柚子 山山椒

想像以上に身が柔らかい。
というか柔らかすぎる。

口の中で溶けるというか、すでに溶けている。
たしかにあの焼き方じゃないと崩れるな、、と納得。

和食っぽい組み合わせなのに、絶対に和食にはないアプローチ。
旨味、塩味、甘味、香り、と本能的に美味しいと思う物をガツンときた。
美味すぎてニヤけた。
餡はもう少し熱い方が好き。

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前半の白ワインが終わってからは、ノンアルのペアリングをお願いした。
ノドグロには生姜ベースのドリンク。

生姜、酒粕、カルダモン、シナモン。
爽やかにスパイシー、甘いコクと熟成の香り。
のどぐろの餡に生姜を足しても美味いだろうが、ドリンクで足してきた。

この料理に合わせるための飲み物。
点で合わせてくる。

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京都産・鴨胸肉を東京檜腹村のミズナラで焼いて
ソース・ヴァンルージュ 冬野菜と

とってもシンプル。
けど一番印象に残っている。
過去に食べた鴨で一番美味かった。

皮目を限界までサクッとさせて、身はしっとり。
仄かな薪のスモーキーな香りも良い。
前半の複雑な料理に慣れた所に、このシンプルな美味さ。
最高過ぎる。

焼き方はもちろんながら、肉の質が良い
嫌な臭みが無く、良い野生味と血の美味さ。
鴨の概念が変わった。

添えてある白菜はしっかり歯応え
みずみずしく淡い滋味ので鴨を引き立てる。

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ドリンクは、ビーツが主体。
料理とドリンクは同系色が合う。

ビーツ、紅茶、コンブチャ(紅茶キノコの方)、黒糖、しょっつる。

ビーツの土っぽさ、紅茶とコンブチャの発酵した酸味と旨味、黒糖ののっぺりした甘味
確かに鴨に合う。
肉類の旨味に、コンブチャの旨味をかけあわせる。
アプローチはわかるがセレクトが変わってる。

しょっつる(ハタハタの魚醤)は極小量。
言われても気づかない程度。
野生味には合うのかも知れない。

白菜の仄かな土っぽさと、ビーツは相性抜群。
甘味より歯応えがメインの白菜だから、ドリンクで甘いのが良い。

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タヤリン・イン・ブロート
鴨の様々な部位をトリュフとともに

タヤリンは細いパスタ、ブロートは出汁。
鴨の出汁と鴨肉を味わう料理。
トリュフを引き立て役に使うのが素敵。

一般的なタヤリンとは違い、平たいがそれも良い。
昔ながらの中華蕎麦のようだ。

おかわりはいかがです??
と聞かれ、2杯目も頂いた。
丁寧に味わって食べても、ガツガツ食べても美味い。
ちょっと麺がボソボソしているような気もした。

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アルチザンチーズ

左から、ブルーチーズ、シェーブルチーズ、古代チーズ 蘇、カマンベール、カチョカバロの5種類。

全てが国産だというのが驚き。

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蜂蜜やみりん粕、洋酒漬けのドライフルーツなどと合わせて出してくれる。
全部美味いし、いい時間。
特に、ブルーチーズとみりん粕の相性が良かった。

ゆったり味わってデザートへの切り替え。

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栗 みかん 小豆 ショコラ

モンブラン。と言うにはオシャレすぎる。
栗拾いをイメージしたそう。

ショコラのサクッとした生地に、小豆のアイス、みかん、モカクリーム。
この組み合わせはバランスを間違えると一気に変になりそうだが、それをベストなバランスで美味しく仕立てていた。

手前の小さい栗も美味くって、栗ペースト×ラム酒
1個違う色のはコアントローの香りかな。
爽やかで良い。

甘さと香り、熟成、温度、、、良いなぁ。。。
レストランのデザートってケーキ屋とかと違って
その場で食べるからこその魅力があって良い。

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紫芋 白ごま

小さくて可愛らしい茶菓子。
作るの絶対大変だろなぁ、、、と同業者視点になる。

芋の香りと白ごま、ホロホロと滑らか
王道ですね。

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ショコラ 生姜、キャラメルナッツサブレ、イチジク ブルーチーズ
醤油粕 落花生 黒糖、カシス レモン マリーゴールド

全部美味しいし楽しい。
中でも、醤油粕を使ったミニケーキは特に良かった。
甘塩っぱい美味しさ、醤油粕はよく使うので勉強になる。

酒粕も醤油粕もみりん粕も食品ロス削減という面でも素敵。

種類が多くて楽しいのでが、小さすぎて味がわかりにくいとも思った。
けど、こういうの好きな人も多いんだろうなぁ。。。

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お薄

ラストは抹茶
目の前で立ててくれる。

淡い苦みとしっかりした香り。
和の食材を沢山使っていたのもあって、最後が抹茶でもしっくり。
苦さを主張させてない茶菓子との相性も良い。

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World Peace

アーモンドミルク百年の孤独(焼酎)を混ぜているそう。
これと抹茶を交互に飲むと抹茶ラテのようになって美味い。


お土産にいくつかの食材や調味料からセレクトできたり、店をでるときにフォカッチャを頂いたりと至り尽くせり。

キッチンの中も見せて頂いた。
想像以上に人数が多くて、改めて手数の多い事を実感。
素敵な皆さんでした。
薪の窯も格好よかった!


・全体として。

別に俺は料理評論をできるほど詳しくは無いし、このnoteも備忘録としてなので、なに言ってんだってなっても悪しからず。

コース全体として、凄かった。
とにかく良い流れだった。
構成というか、素敵な音楽ライブみたいな。

最初はゆったり優しく温めて
野菜で苦味や香りの複雑な美味しさを味わい
味覚が開いたところにガツンと蕪のジュース
ノドグロ、鴨とで旨味や塩味系の直線的な美味しさ
チーズの熟成でうっとりして
デザートで滑らかな甘さと香り
最後の薄茶でキリッと締め。

こういうレストランにしては品数が少ないので、流れが分かりやすく
一品一品への熱が凄かった。

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上品にまとめているがインパクトの弱い店もたまにあるのだが
この店はまとまった流れも、強いインパクトもある。
比較するものじゃないが、こう思えたのはカンテサンス以来だ。

とにもかくにも美味しかったし楽しかった。
また行こうと思う。

・グリーンスターについて

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ミシュランガイドが新たに取り入れた評価基準で、サステイナブルなお店に与えられる評価だ。

持続可能な食という基準で
フードロス、地産地消、絶滅危惧種の保護、環境へ考慮した食材、などなど
食にまつわる環境問題への取り組みを大切にしている。


日本でグリーンスターを取っているのは、13店
東京には6店。
行ったことがあるのは東京の4店のみだが
この店は特に生産者や職人を身近に感じた。

もちろん、他のお店も素晴らしかったし、アプローチの仕方は様々あるのは言うまでも無いと思うが。

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レフェルヴェソンスでは、特に仮想水(ヴァーチャルウォーター)を意識しているそうだ。
仮想水ってのは、生産や輸送に必要な水のこと。

遠くから運べばその分輸送に水を使う。
飼育や生産方法でも変わる。
そう言う物を考えた結果国産が多いのだろう。

レフェルヴェソンスの環境問題への取り組みは、この記事が分かりやすい。
【シェフがつなぐ食の未来】


・おわりに

美味しかったし、楽しかったし、幸せでした。
ごちそうさまでした。

改めて三つ星、グリーンスターおめでとうございます。

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これからのレストランは更にサステイナブルが求められるようになるのだろう。

いつもありがとうございます。 書くの大好きだけどやっぱ大変だから、サポートして貰えると持続性が増します。