最近すれ違った言葉:渇望サーフィン

この初期・椎名林檎もどきのような響き。渇望サーフィン。「渇望のサーフィン」と言うと、古舘伊知郎感も出る。

「マインドハンター」を観終わった寂しさを紛らわすために手を出した「入門 犯罪心理学」(ちくま新書)という本。内容はタイトルの通りと言えばそれまでなんだけど、ただ当然だけどドラマや映画で登場する「犯罪心理学」よりも遥かに地に足の着いた論理が展開される。そこがなんとも色っぽくもあった。

これによれば、「渇望サーフィン」というのは薬物受刑者に対して行われる治療の一環で、早い話が「やりたい!」が押し寄せた時に、それを忘れようとするのではなく、渇望を波ととらえて身を委ね、その波でサーフィンするイメージをしながらゆっくりと呼吸をしてやり過ごすというテクニックなんだそうだ。

生理学的にも、渇望というのは大体15分もすれば勝手に弱まっていくものらしい。薬物には手を出したことがないので、日常的に押し寄せる渇望といえば「酒飲みたい…」と「ムラムラする…」くらいのもんだが、差し当たってそれほどこいつらに悩まされてもいないわけで、とっとと解消してしまったほうが話が早い。

それとこの本でもう一つ面白かったのは、犯罪者と一般人を統計的に比較して導き出された中でも特に影響の大きい犯罪の危険因子の中に「余暇活用」ってのが挙げられてたことだ。「過去の犯罪歴」や「反社会的交友関係」と一緒に並ぶ「余暇活用」。つまりは暇な時間を何に使うかってことらしいが、犯罪者は日常的に暇な時間を持て余す傾向にあるそうだ。

一人で部屋に居ても全く暇せずに一日中過ごす自信がある。もちろん、ありとあらゆる要素が複雑に絡まりあった結果として犯罪が起こるというのはこの本の中でも再三言われることで、一つの要素を自分に照らし合わせて一喜一憂するのは無意味だ。でも、とりあえず飲酒や手淫やその他の渇望をサーフィンで乗り切る必要は今んとこやっぱないな。それこそ暇を持て余す。「渇望は15分くらいしか保たない」という情報と「渇望サーフィン」という手法を、いざという時のために頭の片隅にしまっておこう。

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