定例ミーティングとタスクの締切をなくした話

チームの数だけやり方があるともいえるマネジメントの世界で斬新な方法を実践しているお話をしたいと思います。

僕が代表になったのはNHK学生ロボコン2022が終わった6月からですが、直後に以前まで週1で行っていたオンラインミーティングを廃止しました。続いて来年に向けた開発を進めている段階でタスクの締切を撤廃しました。

対面にしたとか、開発スケジュールを作ったとかもなく、どちらも完全に撤廃しています。強いて言えば全体でビデオ審査や大会の時期は共有しているので、積極的なメンバーはある程度意識しているとは思いますが、時期的には先にあるものなので強制力としてはかなり弱いと思います。

マネジメントを行うと考えれば、ミーティングを通して行う全体の情報共有と締切や全体スケジュールを用いた徹底的な進捗管理が一般的だと思います。

しかし、それは本当にマネジメントなのでしょうか。

マネジメントの定義こそ人それぞれだとは思いますが、ぼくはメンバーを活かすこと、ロボコンに限定していえば、エンジニアが輝ける環境をつくることだと思います。

ミーティングで情報を伝達すること、課題を共有すること、チームの決断をすること。これらは非常に大事だと思いますが、定例ミーティングにおいてこれらを実践することが簡単ではないことは周知の事実だと思います。そして、これらの事項にこだわるほどミーティングに時間を使ってしまうでしょう。開発を円滑に行うためのミーティングが、開発の中心になることは望ましくないはずです。長期休暇ならまだしも、ミーティングに週1時間以上を費やせるメンバーは多くないと思います。より多くのメンバーで活動をしようと思うほど、顕著に感じられることだと思います。

情報を伝達するのであれば連絡ツールに全体チャネルがあれば十分です。課題を共有したいのであれば関心の持てそうなメンバーにDMをすれば良いはずです。チームの決断を行い、その責任を負うのがリーダーのはずです。民主主義はそのプロセスでしかありません。加えて、民主主義は全員が一同に介さずとも連絡ツールを駆使すれば比較的容易に達成可能です。定例ミーティングでは発言者が固定されてしまい本当に小さな意見は陽の目を浴びずに消えることの方が多いでしょう。

多くの場合、ロボコニストに一番不足しているものは時間でしょう。それをリーダーの心掛けで確保できるのであれば、間違った方法ではないと思います。

次に、なぜ締切をなくしたのか気になっているかと思います。

この理由は簡単でロボットを「つくりたい」という感情からつくって欲しいからです。人が成長するときは強い自発的な感情から動く時ですし、その時にみせる創意工夫は周囲を驚嘆させるでしょう。ぼくはそんなエンジニアの姿を見たいのです。

ロボット製作においては「いつ」「なにに」時間がかかるのか、事前に分からないことがほとんどです。時間をかけた箇所が自分たちの強みになると思います。時間的な制約を設けて、その機会を奪ってしまうのは非常にもったいないと思います。

ただ一方で不安に思うのが、開発は間に合うのか、という事だと思います。ぼくは開発を進めるために必要なのは締切ではなく、なぜ進まないのかという理由だと考えています。課題が忙しくて時間がないのか、CADの使い方が分からないのか、プログラムにバグがあるのか。理由が分からなければ対処はできません。そのためのコミュニケーションは惜しまないようにしています。時間がないのであれば、引き続き任せるかタスクを見直すかは、タスクの重要度に依存するでしょうし、既にメンバーの誰かが解決済みの問題であれば、代わりに聞いてあげるくらいの気配りは必要でしょう。

少なくとも、ぼくは間に合わせる開発に意味があるとは思いません。

代表としては締切をなくしたことで間に合わないリスクを気にする必要もなくなり、柔軟なタスク分配と円滑なコミュニケーションが実現できたので、非常に楽になりました。

ここまで半年間実践した経過としては非常に順調にいっていると感じています。チーム内では積極的な情報共有が行われ、メンバーはお互いのタスクに興味を持っている状況が出来ていると感じています。もちろん、ぼくの意図を理解して、この環境を活用してくれているメンバーの存在は忘れてはいけません。

この記事を読んで実践を考えてくれている人もいるかもしれません。そうであれば非常に嬉しく思います。記事にするほどでもない、ぼくが行っている心掛けは数多くあると思います。そういう意味で同じ状況が作れるとは断言できません。しかし、理論をもとに考えたマネジメントなので多くの組織に適用可能かと思います。

半年後、この斬新なマネジメントの結果が示されるでしょう。ぼくもまだどう転ぶか分からないので、不安はあります。しかし、この開発体制にこだわりマネジメントの強さを示したいと思っています。

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