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ゆらぎを保障しあえること

【2015年10月7日に書いたノートより】

8月28日から立命館大学の山本耕平さんにお声がけを頂き「ピアスタッフの育ちを保障するピア・プロ相互の学び合い試行プログラムに関する実践研究」にぎふNPOセンターの笠原さんと共に参加させて頂きました。今回の企画におけるピアスタッフとは”ひきこもり経験のあるスタッフのみでなく同年代のさまざまな生きづらさをもつ若者で、支援の現場に参加している人”と定義付けられており、参加者層は全国で若者さサポートステーションや、社会的居場所、地域での協働による居場所、仕事づくりをしている20代~30代の若者スタッフが福島県郡山市へ集まりました。
 当日は佛教大学の鈴木勉さんや、佐藤洋作さんから1970年代からの若者支援における歴史と、持つべき視座に関してのレクチャーがあり、それぞれの学びあいへと入りました。 今回の学びとなった言葉は”ゆらぎを大切にすること”。事例研究やケース会議の際に「プロでしょ」と言った言葉を出されると、その場における”悩み”が共有しにくいのではないかとの課題には、私もしばしば遭遇しています。こちらもしばしば出会うことではありますが、断定口調で伝えることの危うさは視野を狭め、追い詰めることに繋がっていきます。社会福祉の分野に従事し生活をしていても、資格があって、長い間関わっていても、それぞれ出会う若者は全く別の個である限り、常に判断や方向性に迷うものです。そうした際に起こる”思考や判断のゆらぎ”を大切できるかは非常に重要なポイントです。この実践を行っていく中での”ゆらぎの共有”は、経歴に関わらず、構成するメンバーとして、だれもが大切な仲間であり、尊重されるべき存在であるとの場づくりから安心して自己開示できる”包み込まれ感”を醸成することからから。そのようなチームこそ良い実践が行えるのでしょう。 さて、ワークショップの中ではピアスタッフが遭遇する”ゆらぎ”として、「いつまでも成長していないのではないか」と思われる不安感や、包み込まれ感覚がなく、スタッフとなった時に続けて働くことができるのか不安との意見も。一方で参加者の学生からは「サポート現場で働いたことが無いから・・・」と、まさにこの場における疎外感を覚えたとカムしてくれ、参加者の中での貴重な学びと内省に繋がっていきました。堤雅雄さんは”居場所”のひとつの定義として「他者によって自分の存在が確認され,求められる場,即ち自分という感覚が自己を越え,拡張される場」とされていますが、これは職場でも生活給を稼ぐためだけで働くのではなく、所属意識や精神的な居場所を求めて就労するといった部分においても同じことが言え、ピアスタッフや若手世代がもつニーズにも一致し、だれもが当事者であり、ピアスタッフであることを認識させられました。
 実践研究に参加中、興味深かい交わりの一つとして「僕らが若者支援現場に関わる事の限界を感じていること」のシェアでした。これはポポロの中川さんが「僕ら世代は手弁当のボランティアで取り組んできたけれど、今は初めからこの分野で仕事をしたいと入ってくる若者が増え始めた」との指摘もある中で、関わり始めて7-8年経つと、はじめは勢いだけで活動をしていたものの、齢を経ていくと手取り10数万円でどう将来を見据えることができず、間近なライフイベント(結婚、親の介護、親しい友人との交際・・・etc)に接して行くなかで悩み、離れていく仲間も多い。これらは社会的、構造的な課題であるだけでなく、まさに若者世代が社会福祉と言われる分野に携わる際に、自分自身もピア(いきづらさの当事者性)であることを思い起こさせ、苦しい部分であるといった共有ができたことは貴重であったように思います。 この様な学びの機会、そして新たな仲間とつながる機会を頂いたことに感謝いたします。今回の参加だけで終わらせるのではなく、いかに実践していくか、私も悩みながらも進んでいきたいと思います。
※余談として※
参加した実践研究は福島県郡山市で行われましたが、現地入りし何よりも衝撃的であったのは、除染作業が駅前でフツーに行われていることでした。除染作業員と作業者が道路の細やかな溝に溜まった土を取り除く。その作業が日常風景に溶け込んでいることそのものに、岐阜での生活との違いを考えさせられました。今回、同室となったメンバーの中には双葉町付近出身の方で、郡山市へ避難された方、郡山市に自宅があり遅れている除染作業を待っている方など、福島で罹災された方と交わる機会もあり、実践研究だけでない深い学びの機会を得ました。これらの学びをどう消化するかを試行錯誤しながらこの原稿も書いていますが、この課題は当面の間、心に留まることになりそうです。

現場から現代社会を思考する/コミュニティソーシャルワーカー(社会福祉士|精神保健福祉士)/地域の組織づくりや再生が生業/実践地域:東京-岐阜/領域:地方自治|政治|若者|子ども|虐待|地域福祉|生活困窮|学校|LGBTQ