芸人人生 第80話 ラスボス

本日はSIGBA(シグバ)ネタ見せオーディションだ。

各クラスごとに時間ずらしてネタ見せが始まる。

他事務所ライブと言ったが

お笑い事務所は複数ある。

有名なのが

まず俺らの’押本興業’

次に’タナベエンターテインメント’

‘浅田企画’(あさだきかく)

‘カセキ芸能社’

‘ボリブロ’

俺らが対決する事務所は

‘人力茶’(じんりきちゃ)

他事務所の俺らの同期扱いとなる養成所の奴らとネタ対決をするライブだ。

これに燃えない芸人は居ない。

俺らは練りに練ったネタでオーディションに準備した。

万田ちゃんと腹を抱えるくらい笑って作ったネタだ。

ネタ作りもネタ合わせも楽しい。

かならず’7組’のうちに入る。


俺らは教室に入り、準備を始めた。

周りはネタ合わせをしてる奴らばかりだ。

ガヤガヤしている。


「万田ちゃん、絶対勝とうな。」

「負けたらお前のせいだぞ。」

「なんでだよ!!!」

俺らはいい緊張感を持ってる。いつも通りふざけられる。

俺の’なんでだよ!’も健在だ。

俺は変わらずこのツッコミを貫いている。

ホワイト組にも見せつけてやった。

そして俺の相方の頼りになるボケの万田ちゃん。

絶対に勝つんだ。

ただ、周りを見渡すと

またマシーン無骨の姿が見えなかった

「おはようございます!!!!」

同期の誰かがデカイ声で挨拶をし、その声に振り向き俺らも大きな声で挨拶をした。

恐らくネタを見てくれる講師の人だろう。

ただ見たことない人だった。


「えぇ〜っと、ちょっとみんな座っていいよ。」

『失礼します!!!』

俺らは軍隊の様にスッと座った

「今日ネタを見させてもらう、’山田ナビスポ’です。
よろしくお願いします。」

ナビスポ講師は軽い自己紹介を始めた。

作家歴は20年超え。ベテラン作家。
この押本興業の東京養成所が出来てから講師をやっていて、数々の若手芸人のお世話をしている。
芸人なら誰もが知っているという有名作家さんだ。


「今日ネタ見させてもらうんだけどぉ〜、11月から俺の授業が始まるからよろしくぅ〜ネタ見せ授業じゃなくて’平場の練習’をメインに。そこら辺は追々ね〜。」


ナビスポ講師は声がガラガラしている。それと語尾を必ず伸ばす。

見た目は眼鏡に帽子にヒゲ。まるで漫画家の様だ。

「じゃあ〜早速ネタ見ていきましょう〜。ネタ見せ終わった人から帰っていいよお〜!人多くてうっとうしいよ。ハハ」

1人で笑っているが、俺は橙団らへんのネタは見ておきたいなと思った。それまで帰るわけにはいかない。
みんなそう思ってるだろう。


「え〜っと、じゃあ最初は…」


ナビスポ講師はネタの順番表を見ながら喋っている間に、教室のドアがゆっくりと開いた


「シツレイシマス。オクレテシマイスミマセン。」


(誰だ?)


おじさんのような顔面に、ヒゲ面のおっさんみたいなやつが衣装姿で入ってきた。

2人とも30歳を超えてるような見た目。

何故か’ロボット’の様な話し方をする


「誰??君ら。」

ナビスポ講師が両腕を組み出して、問いかけた


「4組50番 高平ひこうきデス。」
「4組55番 松居アルコールデス。」


『’マシーン無骨’デス。』


「じゃあ君らからネタ見せてくれる?」


『ハイ。』

2人は早速漫才の準備を始めた。


みんなはびっくりしている。
トップバッターにマシーン無骨。ナビスポ講師の無茶振り。


みんな動揺を隠せない表情をしていた。



だが俺は違った。


(ずっと見たかったぜ。マシーン無骨。)


ゾクゾクした。




‘ラスボス’の登場だ。

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