見出し画像

スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(30)



前回:スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(29)





 それから泊も交えて、晴明と有賀がラインで話し合った結果、コラムの仮タイトルは「ライリスが行く!」に決まった。安直なタイトルだと晴明は自分でも感じていたが、名前がついていないと企画は動き出さないのだから、しょうがない。

 コラムの方向性もハニファンド千葉を取り上げるよりも、スポンサー会社や個人商店への訪問をメインで扱おうと決まった。クラブの外に目を向けたほうがいいのではという泊の提案に、二人が乗った形である。

 取材日である土曜日、晴明と有賀は千葉駅に集合した。正式な取材であるのに、有賀はTシャツにスキニーというラフな恰好だ。

 「今日は彼女と一緒じゃないの?」という開口一番の質問も、晴明は苦笑いで受け流す。桜子とは現地集合だと伝えると、有賀は安心したように息を吐いていた。桜子に一抹の苦手意識を持っているらしい。

 道中、有賀の口数が減ることはなかった。学校はどうだとか、なんか面白い話知ってる? だとか。しきりに放たれる質問を、晴明は全てはぐらかして答えた。本題ではないところで、決定的な情報を提供することは本意ではない。

 目的地であるスポーツ用品店・カヌマスポーツは、角を曲がったところにあった。曲がる前から談笑が漏れてきて、有賀の動きがぎこちなくなる。視線も俯きかけていたが、晴明は知らないふりをして角を曲がった。

 そこには、成と筒井がいた。晴明はまだ復帰を許されていないので、ライリスに入るのは今日も成の役目である。

 その隣では、桜子が話を止めて、晴明と有賀に目を向けていた。不在の泊に代わって、この店とアポイントメントを取ったのは桜子なのだから、来ているのは当然だ。

 だが、有賀の目線は、その三人のいずれにも向けられていなかった。桜子の隣にいる植田もまた硬直していた。

 予期せぬ再会に、脳の処理が追いつかなかったのだろう。口をだらしなく開けている。

 立ち止まっている有賀を気にすることなく、晴明は四人と合流した。

「おはようございます、似鳥さん、有賀さん。今日はよろしくお願いします」

 筒井の挨拶にも、有賀は消え入るような返事をするばかりだ。晴明たちに見せる無礼さは微塵もない。

「それじゃあ、さっそく中に入って段取りの確認をしましょうか。店長の鹿沼さん待ってますんで」

 晴明が頷くと、筒井を先頭に六人は店に入っていく。植田の近くにいるといたたまれないのか、有賀は走って筒井の後にドアをくぐっていた。

 成、桜子、晴明も店内に入るが、植田だけがなかなか入ろうとしない。右手でスラックスの表面を掻いている。

「どうしたんですか、ウエケン先生? 打ち合わせ、参加しないんですか?」

 事情を知っている桜子の言葉は、植田の胸に刺さったようで、植田は息を吐いた。

 晴明には、その呼吸が吐血のようにすら見えてしまう。

「いや、俺はさ、あくまで引率だから。活動は生徒の自主性に任せた方がいいんじゃないかなって」

 植田の態度は落ち着いても、素っ気なくもない。必死に理由を作って、自分を守ろうとしている。傷つかないようにしている。

 晴明がどう説得しようか考えていると、後ろから意外な声が飛んでくる。

「植田先生」

 有賀が入り口まで戻ってきていた。振り向くと、先日の吐露とはまた違った種類の、誠実な目をしていた。

「終わったら話しましょう」

 短い言葉は撃墜されることなく、植田の耳に届く。切実な一言に、植田は固く口を結んでから、意を決したように歩き出した。

 ドアが閉まると、乾いた革の匂いが晴明たちを包んでいた。





 取材はおおむねつつがなく進んだ。店主の鹿沼はライリスとのツーショット写真も快く引き受けてくれて、ハニファンド千葉に所属する柴本という選手が、よくスパイクを買いに来ていたなどのエピソードを話してくれた。

 ライリスも二回にわたって、サッカーボールやラケットを持ち、有賀や桜子がカメラを向けても嫌がることなくポーズを決めていた。窓の外から少し好奇の目線を浴びた以外は、取材は順調といってよかった。

 ただ、取材中はもちろん、成のコンディションを考慮して挟まれた一時間の休憩でも、有賀と植田は言葉を交わすことはなかった。お互いがお互いを見ないようにしていて、意地の張り合いによる気まずさが、店内に漂う。

 桜子も最初はフォローをしていたが、意味がないと知って、鹿沼のインタビューに切り替えている。

 外に出ることもできずに、晴明はきょろきょろと店内を見回している自分を、情けなく感じた。

「以上で本日の取材は終了になります。ありがとうございました」

 有賀が言っても、店内の強張った空気は少しも変わることはなかった。

 ライリスは最後にもう一度、鹿沼と握手をして、筒井とともにいち早く店から退出した。着替えるために、駐車場に停めてあるワゴン車に向かう。

 ただそれだけのことなのだが、晴明にはどこか気まずさから逃げたように感じられる。場を和ませる存在がいなくなった店内は、全くの無言になる。

 ゆっくりと鹿沼が立ち上がり、店の前の看板を営業中に変える。だけれど、誰も店に入ってくることはなかった。

 固まった空気の中で、最初に動いたのは植田だった。鹿沼に礼を告げ、足早に立ち去ろうとする。だけれど、ドアに右手をかけた瞬間、駆け寄ってきた有賀に左腕を掴まれる。

 振り向いた植田の目に込められていたのは、敵愾心か、自責の念か。様々な感情がない交ぜになっていて、晴明には真意を読むことができない。

「終わったら話しましょうって言いましたよね。逃げるつもりなんですか」

 厳しい口調。有賀の表情は晴明からは見えないが、背中には悲しい怒りのようなものが張りついていた。

「もう終わったことだろ。今さらどうしようもないんだよ」

 諦めを纏った植田の口調は、まぎれもない大人の口調だった。

 だが、その言葉は有賀の奥底でくすぶる火に、油を注いだらしい。

「あんたにとっては終わったことでも、俺にとっては終わってないんですよ」

 ドアに手をかけたままの植田を、強引に店内へと引きずり戻す。晴明と桜子の前を頑固な足取りで通過していき、棚を曲がって見えなくなる。

 二人がおそるおそる追いかけると、有賀と植田はバスケットボール用品のコーナーにいた。壁にユニフォームが飾られ、棚にはバスケットシューズが入っていると思しき箱が、いくつも積まれている。

 有賀と植田は両側の棚にそれぞれ背を向けて立っていた。レジに立つ鹿沼からは角度的に見えてはいない。

 先に口を開いたのは有賀だった。

「覚えてます? 俺たちの最後の市中大会のこと」

 植田はうなだれて、何も答えようとはしていなかった。記憶の砂漠をさまよっているようだ。

「あんた、『全部自分の責任だ』って言いましたよね。そのとき俺たちがどう思ったか分かります?」

「『本当にその通りだ』か?」

 放とうと思っていた言葉を先に言われても、有賀は意外なほど動じることはなかった。ボールやシューズに視線を遊ばせることなく、ただ植田を見ている。

「そうですよ。『やる気あんのか』とか『このくらいでへばってんじゃねぇよ』とか、ずっと叱咤してましたよね。プレーしてたのは、あんたじゃなく俺たちなんですよ。そりゃ頑張ろうって気も失せますよ。罵倒で強くなるわけがないじゃないですか」

「それについては、本当にすまなかった。心の底から悪かったと思ってる」

「本当にそう思ってんすか? だったら態度で示してくださいよ」

 晴明には謝罪を要求する有賀が、童話に出てくる鬼のようにすら見えてしまった。

 植田は腰をほとんど直角に曲げて、深く頭を下げている。

 だが、有賀の視線は死んだハエでも見るかのように冷ややかだった。

「そんなもんですか」

 口から出た言葉は残酷性を帯びていた。これだけ植田が頭を下げているというのに、まだ物足りないとは。

 晴明は自分を責めたくなった。話せば二人とも分かってくれるなんて、とんだ思い上がりだった。

 しかし、そう感じたのもつかの間、次に晴明が見た光景は目を疑うものだった。

 有賀が床に膝をついたのだ。

 うなだれていた植田も戸惑いを隠しきれていない。有賀はさらに床に手をついてから、はっきりと口にする。

「俺の、いや俺たちの方こそすいませんでした! 面と向かって嫌だって言えず、陰で愚痴ってばかりで。腐りきったガキでした。もっとちゃんと意思表示ができてれば、コンビニであんなに植田先生を傷つけることもなかった。手遅れになることもなかった。あいつらを代表して謝らせてください。本当にすいませんでした!」

 頭を床につけるほど、深く下げている有賀。結ばれた口は謝意に満ちている。

 急激な転調に、晴明は状況をうまく呑み込めない。隣の桜子も呆気にとられている。

 植田もゆっくりと膝を折る。有賀と同じく床に手をついたときには、泣き出しそうな目をしていた。

「いや、悪いのは俺の方なんだよ。お前らの気持ちも考えずに、過度な練習メニューを押し付けて、思い通りにならなかったら声を荒らげ続けて。俺の方こそクソみたいな教師だった。本当にすまなかった。許してくれ」

 植田も床に頭を擦りつける。大の大人二人が手をついて謝る姿を、晴明と桜子ははじめて目の当たりにした。いつもは自分を見下ろす二人が低頭していると、水中でもがき苦しむ魚を見ているように、晴明には見えてしまう。

 事実、二人はもがいている真っ最中だった。晴明と桜子に助けられる次元ではない。

「植田先生、俺たちが練習中、なんて言われたかったか分かります?」

 しばらく頭を下げ続けた後、先に顔を上げた有賀が、先ほどと似たような質問をした。もう声を荒らげてはいない。

 植田も前を向いて答える。正座して正対する二人に、ぶっきらぼうという言葉は似合わない。

「『頑張れ』か?」

「違いますよ。良いプレーをしたときは『いいぞ!』『その調子!』、悪いプレーをしたときは『気にすんな!』、そのどちらでもないときは、黙って頷いていてほしかったんです。こんな簡単なことでさえ、当時は伝えられなくて本当にすいませんでした」

 植田は目を瞬かせていた。店内に二人の邪魔をする者はいない。だから、植田にも考えを練る時間は十分にあった。

 少しの沈黙があって、ゆっくりと言葉を開く。

「俺の方こそ、こんな単純なことに気がつかなくて、申し訳なかった。罪滅ぼしというわけじゃないけれど、今言った言葉、俺から言っていいか?」

 有賀は黙って頷く。植田は一度せき込んだが、有賀から視線を逸らすことはなかった。

「じゃあ言うぞ。『有賀、いいぞ!』『有賀、その調子!』『有賀、気にすんな!』」

 恥を捨てるように、植田が大きな声で言うから、晴明には店の展示品が少し揺れたように見えた。鹿沼も心配そうにレジから出てきてしまっている。

 有賀は「何でもないです」といったように、三人に笑いかける。店に入ってはじめて見せた笑顔だ。

 再び植田に向き直る。表情からは険しさは消えていた。

「ありがとうございます。少しだけ過去を清算できた気がします。でも、植田先生。今、その言葉をかけるなら、俺以上に適切な相手がいるでしょう」

「部長だった生田や、エースだった小松か?」

 植田がそう答えると、何がおかしかったのか、有賀はさらに顔を綻ばせる。

「違いますよ。今受け持っている部員のことですよ。たぶんその調子じゃ、部活にもあんまり関わろうとしてないんでしょう。たまにでいいから、部員に声をかけてやってください。俯くだけが反省じゃないですよ。そうすれば、俺たちの三年間も、ちょっとは意味があったことになりますから」

 晴明たちに視線を向ける有賀につられて、植田も二人の方を向いた。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたが、すぐにその目はふっと緩められる。

 入り口の自動ドアが開く音。声を聞くに、成と筒井が戻ってきたらしい。

「二人も戻って来たことですし、今日はそろそろ終わりにしましょうか」

 有賀はそう言って立ち上がる。鹿沼に今日の礼と、大声を出してしまったことのお詫びをしていた。五人のもとにやってきた成が「ウエケン先生、どうして正座してるんですか!?」と、素っ頓狂な声を出して聞いてくる。

 植田は説明することもせず、少しの笑みを浮かべながら立ち上がった。晴明、桜子、そして成の肩を順番に叩く。

 成は状況が呑み込めていない様子だったが、晴明は桜子と目を合わせて、どちらからともなく小さく笑った。





 週が明けた月曜日は、入学して二回目の模試があった。晴明にとっては一日かけて冬樹に詰問される材料が増えただけだったが、桜子は帰り道でも誇らしげに胸を張っていて、少なくない手ごたえを得たらしい。

 意気揚々と語りかけてくる桜子に、晴明は模試の時間以上の疲れを感じ、家に帰ると、まずベッドにばたりと寝転んだ。三年後をぼんやりとではなく、はっきりと強烈に憂いた。

 憂鬱は夜が明けても尾を引き、晴明は翌日の授業をもやがかかった頭で過ごした。模試で延期された小テストの出来も芳しくなく、物理の授業はまるで呪文のようだった。

 時間が進むにつれて、少しずつ気分は回復していったものの、あっという間に放課後になる。桜子に連れられるようにして、部室に向かう。

 ドアを開けると、既に全員が部室に集まっていた。成は運動着姿だが、他の三人は制服を着たままだ。

 夏服に変わった制服の袖から覗く、程よく日に焼けた肌が晴明の気を引き締める。

 椅子はもう先輩たちで埋まっていたので、晴明と桜子は立っているしかなかった。二人が簡単に挨拶をした瞬間以外、会話は途切れない。

「で、昨日の模試マジめんどくなかったですか。私思った以上にできなくて。絶対E判定ですよー」

「成はどこ受けようとか、もう決まってるの?」

「別に決まってないですよ。適当に三つ選んで書いただけです」

「まぁ、二年のこの時期に行きたい大学決まってる人の方が少ないからね。でも、いずれは考えとかないとダメだよ。いろんな人にアドバイスもらうのもいいけど、決めるのは最終的には自分なんだからね」

「だってさ、フミ。私どうしたらいいと思う? フミは頭いいし、大学も行こうと思えば選び放題なんでしょ。いいなぁ」

「まあそれなりにはですけどね」

「ほら、謙遜しないー。強者の余裕ー。まあそっちの方がフミらしくていいんだけど」

 輪の中心にいる成は嘆いてみせたり、笑ってみせたり忙しい。だけれど、口を挟まずに聞き役に徹している渡ですら嫌そうな顔はしておらず、天性の快活さを晴明は感じる。太陽とまではいわないまでも、ぴかぴか光る電球みたいだ。

「そういえば、とま先輩って大学どこ受けるんですか?」

「確かに俺も聞いてないな。もう決まってんの?」

「私も気になります。とま先輩、どこ行こうと思ってるんですか?」

 三人分の疑問と、プラス二人分の視線を受けて、泊は困惑したようにはにかんだ。

「それはね……」

「それは……?」

「教えない!」

 泊が腕で大きくバツを作るのを見て、成が思いっきり「えー」というため息をこぼす。晴明も内心で肩を落とした。泊の進路は晴明にとっては、すでにどうでもいいトピックスではなかった。

「教えてくださいよー! 別に減るもんじゃないでしょー!」

「いや、行きたいなっていうところはいくつかあるんだけどさ、そんなとこ!? って思われるのがなんか嫌なんだよね。ほら、もう時間じゃない? 早く練習はじめようよ」

 はぐらかされた。泊は視線を佐貫に向けている。

 佐貫は何かに納得したのか、それ以上追及することなく、一つ頷いてから口を開いた。

「そうだな、もう時間だ。じゃあ俺たちは着替えるから、泊と南風原と文月はちょっと外に出てくれないか」

 成はまだ不満そうに口を尖らせていたが、桜子は「はい!」と同意する。

 夏至が近づき、日はかなり長くなっているものの、制限時間はある。晴明も、未だ憂鬱な気分を紛らわすために、早く体を動かしたい気分だった。

 桜子がスクールバッグを持って、外に出ようとする。

 その瞬間、部室のドアが勢いよく開けられた。

 入ってきたのは青いジャージを着た植田だった。今までは五十鈴のピンチヒッターとしてのみ、部活に来ていたのだが、五十鈴は今日は用事があるとは言っていない。

 急用が入ったのか、それとも植田が自分の意志で来ているのか。全員が珍しい魚を見るように固まっていた。

「ウエケン先生、どうしたんですか?」

 口にしたのは事情を知らない泊だった。あの後、晴明と桜子は植田に「照れくさいから他の部員には言わないでくれ」と言われていた。

 成の詮索も植田は「ちょっとな」と言って躱していたので、有賀との件を知っているのは、三人だけだ。

 植田は晴明と桜子の顔を一瞬見てから、少し恥ずかしそうに告げた。

「いや、俺もちょっとは部活に関わってみようと思ってな。五十鈴先生に任せっぱなしなのも申し訳ないし。これからは時間があるときは、なるべく部活に顔を出したいと思う」

 植田の言葉をすぐには飲み込めず、呆気にとられている上級生たちをよそに、晴明は自分の眉が下がっているのを感じた。

 植田と自分たちの間にあった壁は、なくなってはいないけれど、ずいぶんと低くなって見通しが良くなっている。

 桜子がいの一番に言った「ありがとうございます」が部室に響く。それが上級生たちの理解の手助けになったようで、口々に同じような礼が発せられる。

 植田の頬は照れていたけれど、目はしっかりと部員を見据えていた。

「俺はさ、スーツアクターについて詳しくないから、専門的な指導はできない。それに授業準備や教材研究もしたいから、たぶん毎日は来られない。だけれど、お前たちの話を聞くことならできるから。俺でよければ、いくらでも相談に乗る」

 話を遮る者はいない。植田は全員の顔を見渡してから、最後にこう口にした。

「だから、俺をお前たちの顧問にしてくれ」

 植田は頭を下げようとしたが、桜子に慌てて止められていた。素振りだけで植田が真剣であることは、おそらく部員全員に伝わっただろう。

 佐貫がその場で立ち上がる。両者の距離は、見た目ほど空いていないように晴明には思えた。

「ウエケン先生、当然じゃないですか。俺たちの方こそ、至らない部分ばかりですが、改めてこれからよろしくお願いします」

 ひとりでに口にした佐貫。部室の空気が、反対する者などいないことを告げている。泊も、成も、渡も声には出さなかったけれど、大きく頷いていた。

 植田を拒む者など、この部屋に誰一人存在していない。晴明はそう確信していた。

「ありがとう。じゃあ俺は外で待ってるから。練習の準備ができたら声をかけてくれ」

 最後に安心しきったような笑顔を見せて、植田はいったん部室から離れた。六人は視線を交わしてから、それぞれの準備に取り掛かる。

 梅雨時には珍しい、青空が覗く日のことだった。



シーズン1・完


シーズン2に続く



次回:スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(31)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?