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DXの勘違い その2

 DXについて、講演の質疑応答で「DXについて勘違いをされているな」と思える例を前回に引き続き書いてみました。

クラウド化したらDXできる

 「システムをクラウド化すればDXできるのか?」という質問も多いのですが、単にクラウドに移せば済むのか?と言えばそんなことはありません。ただ、クラウドを活用することでDXを進めることは可能です。

 「では早速うちの会社がDXするクラウドを紹介してください。」
 とおっしゃるかたも居られますが、そんなに簡単なことではありません。

 (自社内で構築している)オンプレミスで運用されているシステムをクラウドに移行すればDXできるわけではありません。単に場所を移したに過ぎないからです。

 ただ「DXを進める」と考えた際には「クラウド移行」は2つのメリットが存在します。
 それは「社外から柔軟にデータを利用するための仕組みが組みやすい」という点と「既存のクラウドサービスを利用することで現場のニーズに柔軟に対応できる」という点です。

 (自社内で構築している)オンプレミスの基幹システムは社外からの柔軟なアクセスを狙ったものではなく、社内にある情報を厳重に管理するものとして利用されてきました。
 当然ながらお客様情報など社外に漏れてはいけない情報も厳密に守る事ができる一方で、その情報を現場で活用し負担を軽減できるようなことは少なかった様に思えます。

 例えば、お客様管理システムは社内のセキュリティエリア内で自社のパソコンでしかシステムにアクセスする権限がない。なんてことも多かったですので、営業さんはお客様情報を参照するためにオフィスへ出向き、情報の一部を書き出して持ち出す、手元になければ「持ち帰り確認します」なんてことになっていました。

 当然ながら情報が外に漏れると大変なことになりますがデジタルシステムとして直接現場で活用できないため、「コピーをUSBで持ち出して紛失」、「印刷して持ち出して紛失」…なんてことも多く発生していました。
 社外からでも安全にそれらのデータをリアルタイムで使えるようになっていれば、USBや紙にする必要もないのですが、それが出来ないシステムになっていたことも原因だと感じます。

 最近では「ゼロトラストネットワーク」などシステムへアクセスする「端末」や「利用者」の制限を厳密にしクラウドサービスなどへのアクセス&情報の参照などが行えるようになってきています。

 紙で持ち出すこともなく、USBやパソコンにコピーすることもなく、クラウド上にだけデータがある訳ですから紛失による情報漏洩を防ぐことも出来ます。
 インターネットなどのインフラやクラウドサービスが普及する中で「安全にデータが使える時代」がやってきたのです。

 あとは「現場の人ができれば良い」と思っていることをクラウド上のデータ活用でできるようになれば良い訳です。

 そのために活用できるのが「パブリッククラウドサービス」です。 

 自社で細かくシステムを構築するのは極めて難しいです。特に現場で行なっている作業が多岐に渡っている場合など、簡単に多様なシステムを提供することは難しくなります。

 そんな時に力を発揮するのが「各種クラウドサービス」です。

 カスタマイズを簡単に行えるクラウドサービスや現場の人たちでも簡単にカスタマイズできるクラウドサービスなど、さまざまなサービスが世の中には存在しています。

 「現場の人たちがこれが出来れば助かるのに」
 「お客様が直接これを参照できれば対応が楽になるのに」

 現場にはさまざまな変革に対する要望が存在します。

 これらを先に見つけ、「システムのクラウド化」「パブリッククラウドの活用」を考えることでDXが実現できます。

 単にクラウド化してもこの現場のニーズが見えていなければDXは進みません。「現場のニーズを先に確認」し、「最適なクラウドシステム」を導入することでDXが進むわけですから、「クラウド導入でDXできる」はある意味正解で、ある意味勘違いとも言えるのです。

何も変えずにDXしたい

 「今のインフラも、働き方も、会社のあり方も変えずにDXを行いたい。そのためにはどんなデジタルを導入すれば良いか。」と問われることもあります。

 これについては、「そもそもDXはX、変えることが前提なので何も変えず。ではDX出来ない」というお答えをしています。

 こういう質問をされる方々はデジタルは完璧なもので、問題のある現場の代わりになんでもこなしてくれる万能ツール。と思われている人も多いのではないかと感じます。
 しかしながら「AIを導入したら従業員不要」なんて理論が通じないのと同様、完璧なものがデジタル導入だけで実現できるわけではありません。
 そのようなものがあれば今頃デジタル投資を進めている会社は大幅にコストを削減し莫大な利益を上げられる様になっています。

 GAFAMですら、レイオフなどを行い、スマート化しなければ事業継続出来ないような危機感を持つ時代です。デジタル環境を提供している彼らですらそんな便利なデジタルを持っていない。そのようなものが見えたのではないでしょうか。

 ただ、「デジタルを導入しない」という結論はあり得るのか?」

 というとそれは無いと考えます。なぜなら世界中がデジタル化を行い経済成長を遂げているからです。

 「発展途上国」と認識されている国ですら急速にデジタル化が進んでいます。

 「アフリカ」「ベトナム」「インド」…さまざまな国がデジタル化を急速に進めています。物価レベルでみるともうすでに日本は「タイ」に追い抜かれています。(ビックマック指数でタイの方が上になっている)
 今度、海外の発展途上国と見られていた国がデジタルを使って日本企業を脅かす存在になり得るのです。

 今行っている事の延長線上では途上国にも遅れをとってしまう時代です。ある日突然、途上国の企業がデジタルを使い自分たちの事業の妨げになる。なんて事もいつ起こってもおかしく無い時代です。
 変化をする事、デジタルが必要なら使う事で「DX」を実現することができます。

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