【雑感】2024年J1リーグ 第36節 対ヴィッセル神戸~充実感のある悔しさ~
東京ヴェルディ 1-1 ヴィッセル神戸
スタメン
前節・新潟に2-0で勝利したヴェルディ。2週間以上試合間隔は空いたものの2連勝の良い流れを大事にスタメン11名の変更は無し。
対する神戸も前節・磐田に2-0で勝利し首位に立つ。この日は酒井、大迫に代わり鍬先と佐々木が起用される。大黒柱2名が欠場となる。ベンチには古巣対戦となる新井と井出が入った。
前半
ここまでリーグ6位と好位置につけるヴェルディにとって前年覇者で現在首位につける神戸とシーズン終盤に本気の試合ができることはこの上なく嬉しいことだっただろう。
キックオフからの千田がフィード。山田剛綺が競り、こぼれを森田晃樹が拾う。右に流れる木村に浮き球を入れると相手を背負いながらキープ。反転して中へ切れ込みシュート。前川に防がれるも開始20秒あまりで素晴らしい試合の入りを見せる。
序盤からお互いに身体ぶつけバチバチしとても強度の高い一戦となる。
ボール非保持時1523で見木、木村、剛綺のプレスを仕掛けようとするヴェルディに対して神戸はそれを回避するかのように最終ラインからどんどんロングボール蹴る。プレッシングをしたくてもできずに交わされるヴェルディ。相手もそれをわかって敢えてやってきている面もあっただろう。
アバウトなボールでも武藤と佐々木中心に前線で競り勝ち、敵陣に入る。宮原のハンドを誘い獲得した左サイドからFKが流れて右からCKを獲得。扇原が蹴ったCKのクリアが小さくなったところを山川がトラップから思い切りよくボレーシュート。千田にあたりコースが変わってそのままゴールイン。神戸がファーストシュートでいきなり先制する。
アグレッシブな入りをしながらも出鼻を挫かれたヴェルディ。4バックの神戸に攻撃時には5トップで宮原と翁長が大外で余る位置的優位を作れる。ボールを大きく動かしてフリーの選手を使おうとするも神戸のスライドやシュートブロックも徹底しており次第にシュートへ持っていけなくなる。この日、右SBで起用された鍬先やDH井手口のカバーリングやボール奪取は光っていた。鍬先は長崎時代のDHの印象強かったがSBでも上手くこなしていた。
対する神戸はボール保持時に右ワイドの武藤とトップの佐々木が入れ替わりながら最終ラインからのロングボールを競る。谷口栄斗、千田、綱島悠斗の3バックが身体を張って対抗する。お互いにシュートは多くないものの人とボールがスピーディーに動き、プレーが切れる時間も少なくあっという間に経過していく。
ボール保持時1343のヴェルディに対しては神戸も佐々木と宮代を縦関係にして前節新潟同様に14231となり、1トップと2SHの3枚同数で最終ライン3枚にプレッシングする。上述のとおりにWB宮原と翁長はフリーになりがちだが外切りをして中を防ぎ、強度の高い神戸のプレッシングにヴェルディは自陣から好きにボール運べない。特に齋藤にボールが入った時にプレス、プレスバックをかけられて狙われている感じを受けた。
ビルドアップに苦しむヴェルディは最終ラインから最前線の木村へパスを当てても山川とトゥーレルに跳ね返されるためシャドーの見木と剛綺が中へ絞ると近い距離を取ることでパスが繋がり始める。ようやくリズムが生まれると最終ラインも高い位置になり敵陣に大半の選手を押し込みゲームメイクが始まる。すると神戸は4-4でリトリートをする。そうなることで神戸の攻撃のスタート位置は低くなりヴェルディが再びボール回収し、再度攻撃に入るという循環が生まれる。4-4でリトリートしていたため1442でプレスを始める神戸。そうなると最終ライン3枚のヴェルディが伸び伸びとボールを握れた。右CB悠斗がボール持った時にシャドーの見木が右SB鍬先を引き連れて中へ入る動きをして左大外の翁長に広大なスペースを作り対角へロングフィードを魅せる。このあたりはチームとしてイメージ共有できてた場面であった。
リズムが出来てボール保持率も神戸を上回るヴェルディであったが前半終了間際、前線でボールを収めた佐々木と武藤がスイッチし、武藤が個の力でサイドを突破していきファーサイドへシュート。シュートはポスト直撃で事なきを得たが武藤の個人技の高さ、脅威が出た。
後半
1点ビハインドのヴェルディはハーフタイム明けに剛綺に代えて山見を投入しそのまま右シャドーへ。ポストプレー、ファーストディフェンダーとしてプレスに貢献していた剛綺であったがシュートチャンスは少なく得点を取りに行くこともあり交代をしたのだろう。
山見はDF背後を取る動きを見せる。右からダイアゴナルな動きを見せてゴール前へ飛び込む。前半途中からの流れと変わらずに1442で嵌めてくる神戸に対して、ヴェルディは左CB栄斗からDH齋藤へ鋭い縦パスが何度か入り、ファーストディフェンスを突破。井手口と扇原が寄せてきても齋藤や晃樹は狭いエリアでも反転してすぐに前進できるので、敵陣に入り込める。山見が背後を突く動き出しをすることで神戸最終ラインを下げる。クリアするも再びマイボールにする展開でヴェルディが押し込む後半の立ち上がり。この良い時間帯に得点が欲しかったのは本音である。
神戸は左ワイド広瀬に代わりパトリッキを投入。ただ、パトリッキは終始さっぱりだった印象で宮原や綱島悠斗に完封されてた。その後に佐々木と鍬先に代えて井出と菊地を投入。宮代がトップになり井出が衛星的にプレーする。
ヴェルディが押し込むので後半、神戸がボール保持することはあまり無く14231の神戸に対してヴェルディは1343でWBも連動してプレスかけてる場面はあった。得点が欲しいヴェルディは千田と翁長に代えて松橋優安と染野を投入。宮原が右CBで優安が右WBで山見が左WBと攻撃的な布陣へ。染野が果敢にシュートを放つも決めきれず、神戸が再びギアを上げるようにメンバーを代えて強度を維持していく。宮代と扇原に代えて初瀬と山口を投入。武藤をトップに配置して最後の力を振り絞ってプレッシングとボールキープで試合を終わらせにかかる。
ヴェルディは残り5分で見木に代えて松村投入して1442へシステム変更。2トップの神戸のプレスに対しては齋藤と晃樹が臨機応変に下がって3バック化で数的優位を形成してフォロー。
ディフェンスラインを高く維持して依然として主導権を握るとこの日何度も見せていた悠斗の対角へのフィードが活きる。左SHとなりサイドに張る山見へ鋭いボールが通ると左SBの優安が追い越し、左足でダイレクトでクロスを上げる。跳ね返されるもこぼれ球を拾った山見がインスイングでクロスを入れるとトゥーレルがクリアし損ないそのままゴールイン。ヴェルディが土壇場で追いついた。
狂喜乱舞のスタジアム。まだ時間は残されている。神戸は武藤がシュートを放つもマテウスがキャッチ。ヴェルディは右サイドからCKを獲得。この日、最大のボルテージに包まれる。山見がアウトスイングで入れたボールを染野がヘディングで合わす。タイミングは完璧であったが、ジャストミートができず枠外へ。決めていたらどんなことになっていただろうかというくらいに最高のシチュエーションだった。そのあともショートカウンターで木村が持ち運び並走する山見へパスを試みるも山川に防がれ好機を逃し、タイムアップ。強敵相手に自分たちのサッカーで真っ向勝負を挑むも勝点1を手にするに終わった。
まとめ
後半ATに失点して同点に追いつかれた神戸、後半ATに得点してその後の好機を逃して引き分けたヴェルディ。お互いに勝点3を取りこぼしたと感じてしまう内容であっただろう。首位チーム相手に正々堂々と戦ったヴェルディの完成度、姿勢は素晴らしいものであった。
神戸の個人戦術やプレー強度の高さは流石のものであり武藤や井手口に牽引されるように他の選手たちもレベルは高かった。かつてヴェルディに所属していた井出も当時よりもさらにプレー判断も速くなりテクニックも上がっているように見えた。ぜひシャーレを手にしてもらいたいと願うばかりだ。
好敵手との一戦でやれることはやれたと思う。「もう一度やりたい、もう一度やれば勝点3が取れる」試合後の監督会見でのコメントのように手応えもあっただろう。試合強度も締まった良いものであった。次節はホーム最終戦。集大成を飾るべく多くの観衆の前で良い締めくくりを見せてもらいたい。