【雑感】2021年J2リーグ 第24節 対水戸ホーリーホック~修正に対応できずに逃げ切れず~

東京ヴェルディ 1-1 水戸ホーリーホック

 中断期間空けの再開初戦。蓋を開けてみたらガラリとメンバーが変わり、選手たちはフレッシュさ満点でコンディションが良かったのの終わってみたら、ここ最近と変わらずにリード守り切れずに追いつかれて引き分けに。形勢逆転を許した訳を考えながら試合を振り返っていきたい。

スタメン

 再開初戦、ヴェルディは怪我人などの影響もあり前節愛媛戦からガラリとメンバー変更。システムはいつもどおりに14123であるが、GKにはベテラン柴崎、右SBに森田晃樹、中盤には山本理仁を起用。ベンチには5年ぶりに復帰した杉本竜士が早速入った。
 対する水戸は中断期間中に柳澤、住吉、平野の3名がJ1へ個人昇格を果たす。主力が引き抜かれる形になりSBに村田、CBにはJデビュー戦の山田、中盤には7年ぶりに復帰した新加入の中里が入り、1442システムで臨む。

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SB森田晃樹の意図は?

 休養たっぷりで臨んだことでフィジカル面の状態はお互いに回復していたが、昇格も降格もあまり関係ない順位にいるチーム同士ということもあったのか、なかなかエンジンがかからずにミスが目立つプレー強度が上がらない試合の入りになった。

 台風の影響でかなり強い風がピッチ上に吹き、前半はヴェルディが風上に立った。その利点を生かしてロングボールを水戸最終ラインの背後へ蹴りこむ場面が何度も見られて、前半3分に福村が蹴りこむと山田と入れ替わった佐藤優平が抜け出してPA内で牲川と1対1になる決定機を作った。1442で構えて前から嵌めに来る水戸は2トップと中盤4名が縦方向へのプレスをかける回数が多いためヴェルディは横パスで水戸のプレスをズラしてスペースを空けてから縦パスを通してSH裏で優平がDHの間で端戸がパスを受けて中盤までのラインをこじ開ける。試合後の永井監督のコメントにあったように、常にスペースを作り、優位に進めていく狙いがあった立ち上がりだった。

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 対する水戸はボール保持時にDHの1枚が最終ラインに下りて、SBが2列目まで上がり、SHがハーフスペースを埋めて13151へ可変する。北九州と似た形である。松崎の単独突破からのシュート、中山のポストから中へ絞っていた伊藤の右足での強烈なミドルシュートで形を作っていく。

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 10分、最終ラインのンドカがSHの裏で待つ理仁へ速い縦パスを入れると、理仁から左のパライバへ。パライバがカットインしながらシュートを放ち、抜け出した小池が合わせてゴールネットを揺らすもわずかにオフサイドになりノーゴール。得点は奪えなかったものの一つ形が出た場面であった。 

 両チームの守備強度が緩く縦パスを通される、ボールロストをして相手に渡す場面が続く立ち上がり。ヴェルディがボールを握り左サイドで組み立てると、この日SB起用された森田晃樹が高い位置を取り始める。偽SBどころかSH伊藤の裏に位置取りするように2列目まで上がっていく。

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 すると15分、最終ラインが水戸ブロックの外を回すようにパスを繋ぐと内側に立つ晃樹はSHの裏を取る。若狭、小池、晃樹が絡み一度、ボールを失うも小池がすぐさまカバーしてサイドで大崎との駆け引きに勝ち、クロスを入れる。PA内で優平が端戸へ丁寧な落としをすると端戸が見事なコントロールシュートを決めてヴェルディが先制する。SB起用された晃樹が良い位置を取ることで相手を喰いつかせたことで帰陣が遅れて端戸がフリーになり落ち着いて得点を挙げることが出来た。晃樹の良さが活きた、起用が的中した場面だった。

 先制点以降もヴェルディがゴールへ迫る場面が続く。1442で守り、加藤と理仁の2DHが守備意識高くこぼれ球回収すると、素早く前線へボールを放り込む。あるいはボール保持時に前からプレスをかけに来る水戸を逆手に取って全体を引き付けると縦パス一本で水戸最終ラインの裏を取って小池が抜け出してシュートまで持っていく。

 時折、水戸に攻め込まれてシュートまで行かれるも柴崎がゼロに防ぎ、ヴェルディとしては追加点が欲しかった前半だった。

形成逆転した理由

 後半開始からヴェルディはパライバに変えて山下を投入。前半途中での相手選手との接触による痛みからの交代だろう。対する水戸はこの日デビュー戦だった山田に変えてベテランCB細川を投入する。

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 パライバは居るだけで対面していた相手SB村田に意識づけして押し込んでいたが、欠けただけで一気にその迫力が落ちたことと、水戸が後半から風上に立ったことも形勢逆転の理由だろう。

 後半から水戸はプレスのかけ方にも工夫が見られ、2トップ中山と奥田が中盤の加藤と山本理仁へのパスコース切りながら縦方向中心だったところにサイドへ追いやるようなプレスをかけて誘導してそこにSH松崎と伊藤が連動して挟む。狭い方向へ追い込むことをしていきボール奪取、もしくはそれをヴェルディが嫌ってロングボールを入れるも風に戻されたり、精度が欠くことで水戸が回収することが増えていく。プレス強度が上がったにもかかわらず、ヴェルディはビルドアップの形を変えずにいたことで、必然的に水戸がボールを回収して握る時間が増えていきシュートまで運ぶ。

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 松崎に代わって投入された藤尾がトップに入り、奥田が右に回る。ドリブル得意な松崎に対して、藤尾はポストプレーをこなせる。藤尾がポストプレーしてくれるから中山がフィニッシャーになれ、サイドへ散らすことでクロスに中山と藤尾の2枚がターゲットになってる。攻撃に厚みが出てきて、藤尾は投入されて間もなく立て続けにPA内でシュートを放ちゴールを脅かす。

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 自陣でのプレーを強いられるヴェルディは75分に2枚替えしてシステム変更する。古巣復帰した杉本竜士が左SHへ、佐藤凌我がトップに入り1442となる。同じタイミングで水戸も奥田に変えて森を投入してお互いに動きをかける。

 途中出場の竜士が左サイドから仕掛けてクロスを演出する場面があったが決めきれずにいると、流れを掴んでいた水戸がついに追いつく。84分、バックパスの乱れからサイドへスローインに逃げる。素早いリスタートを見せた水戸は森が思いっきりよくシュートを放つとヴェルディの選手に当たりコースが変わってそのままゴールイン。残り5分で試合は振り出しへ。

 同点に追いつかれたヴェルディは梶川、そのあとに石浦大雅を投入して再び14123へシステムを戻す。左サイドの竜士の突破からのクロスなどで活路を見出し、佐藤凌我に2回決定機があったものの決めきれずに再開初戦は1-1の引き分けに終わった。これで4戦勝ち無しの状況になった。

まとめ

 同じタイプの選手同士の交代で同じポジションに入ったヴェルディ。異なるタイプの選手同士の交代で同じポジションに入れた水戸。このアクセントがこの日は水戸に効果が出て同点に追いついた。ヴェルディも先制点の後も決めるチャンスはあり、水戸の同点弾も多少の運の良さもあり、1-1のロースコアだったから両監督の采配が当たった外れたがすべてでは無かった内容だろう。
 試合全体を通してみると、強風の影響でボールが伸びてラインを割ることが多く流れがぶった切られる場面も目立ったがそれ以上に技術的なミスや判断スピードの鈍さが両者に目立ち、実践から離れたことによる試合勘や中間くらいの順位に居ることのモチベーションの難しさがどうしても出てしまっていた。ヴェルディはまたしても残りわずかな時間での失点で勝ち点3を失っており、劣勢になった時の流れを取り戻せずにそのまま崩壊してしまった。どう挽回するかが課題だろうが、この順位にいてはなかなか向き合うのが難しいのが本音だと考える。
 選手について個別で触れるとしたら、森田晃樹は上述の通り攻撃ではその役割を遂行したもののやはり守備では苦労することも多く、早く本職SBを戻したい。また、途中出場した杉本竜士。プレスのかけ方やスピードは他選手に比べて圧倒的なものであり、サイドでの1対1の仕掛け・貪欲さはかつてと変わらない突貫小僧ぶりで良くも悪くも安心した。早めに結果をつけて調子を上げて行ってもらいたい。選手登録が間に合っていない新戦力の浜崎と戸島の合流で次節以降の戦いぶりに期待したい。