【雑感】2021年J2リーグ 第25節 対ジュビロ磐田~ゆずり合いと貪欲さの格闘~

東京ヴェルディ 1-2 ジュビロ磐田

   またしても勝てず。。。これで5戦未勝利となった。結果だけを見ればセットプレー2発に沈んだが、内容はかなりの差を感じた。お互いに似ていた本音と建前を試合振り返りながら考えていきたい。

スタメン

 前節・水戸に追いつかれて1-1の引き分けたヴェルディ。GKにマテウスが復帰。右SBには変わらず森田晃樹を起用。前線はパライバではなくて山下を起用。ベンチには松本から移籍してきた浜崎と戸島が初めてベンチ入りする。
 対する磐田も前節は甲府に追いつかれてと2-2の引き分け。こちらは前節と同じ11名で臨む。

画像1

ゆずり合いたい両者

 『ボール持たすのはOK』というニュアンスに近い試合前コメントを残した磐田・鈴木監督。キックオフしてヴェルディにボールが収まっても1541の守備陣形を敷くだけでヴェルディ最終ラインへ積極的にプレスをかける場面が少なく、じっくりと構えて入る。磐田守備陣がどのように乱れるかをヴェルディは確認するかのようにボールを握り、後方から縦パスを入れて中盤周辺、CBWBなどスペースつく。これは磐田の前節の対戦相手の甲府を踏襲しているかのような攻撃のやり方であった。

画像2

 6分、中央でボールを持った加藤が端戸が下りてきたことで生まれたスペースに走り出した小池へスルーパスを通す。GKと一対一のチャンスになるも抜ききれずに決定機を活かせない。

 ただ、磐田もボールを持たせておくのには理由があった。相手を引き付けることで背後に大きなスペースを生ませておき、手数かけずにショートカウンターからシュートチャンスを作っていく。ボール奪取すると、右の小川と左の松本の走力、シャドーの大津と山田のボールキープ力を活かして素早いサイド攻撃から立ち上がりからどんどんシュートを放っていく。

画像3

 こうしたことがジャブのように効いてきてヴェルディの重心が低くなり、だんだんと磐田が押し込んで行く。

 しかし、実はヴェルデイもショートカウンターが得意なチームだった。劣勢になりつつある13分、自陣でボール奪取すると山下、佐藤優平と繋ぎ、右サイドを駆け上がってきた森田晃樹へパス。帰陣が遅れた磐田の守備陣をうまく交わしてニアへシュートを打ち込み、見事な先制点を挙げた。昨季のヤマハスタジアムでの試合と似ていてお互いにオープンな展開から得点を感じさせていた。

 そのあともヴェルディは落ち着いてボールを動かしていけるようになり、磐田最終ラインに対して斜めの動き出しを多く織り交ぜて揺さぶり追加点を目指していく。これに対して磐田は前線の個の力で陣地挽回して再び盛り返していくと、20分にPA手前で不用意なファールからFKを与えてしまう。これを遠藤に直接決められてあっという間に同点に追いつかれた。

 同点になったことで磐田がどう立ち振る舞うかに注目した。基本的に変わらず『ボールを持たすのはOKで要所は締めましょう』という感じであるが、プレスの強度と球際の激しさはギアを上げて行った。その結果としてヴェルディはプレッシャーに負けてしまい、技術的なミスが多くなっていき、磐田がボールと主導権を握る構図になった。両WB小川と松本が大外に張り、ヴェルディの前線からの守備などボールホルダーへのプレッシングが遅れ気味になり防戦一方になった。

画像4

 時折、ボール保持したヴェルディが山下を中心として縦に速い動きからゴールへ迫るも磐田が圧倒するように前半を折り返す。

交代策に勢いがつかなかった理由

 後半立ち上がり左ワイドの小池が裏抜けを何本か見せてピッチを広く使う意識を見せたヴェルディには修正が入ったことが感じ取れた。しかし、パスミスやトラップミスが続き、磐田にボールを渡す。磐田は継続して球際を激しくいき、シュートで終わる狙いが明確だった。

 シャドーに入る大津のパフォーマンスの良さが目立ち始めた。トランジション時の起点、ディフェンス、シュートと中盤での存在感が光り、サイド攻撃の要となってCKを獲得していく。

 すると、51分に磐田が獲得したCKから遠藤がインスイングのボールを入れるとニアで山田がヘディング合わせ逆転する。この日、何度か見せていたニアサイドでのヘディングが実った。

 この日、初めてリードを奪った磐田。これでやることがさらに明確になった。自陣でブロックを敷き、ボール奪取したらショートカウンター。陣地挽回したらゲームテンポをコントロールするように落ち着かせてボール保持してシュートで終わらす。

 攻めあぐねるヴェルディは62分にまったくボールに絡めなくなった加藤に変えて梶川投入して優平を底に入れる。優平はボール循環させるように積極的にボールに絡み左右に散らしていき、梶川はスペースへ動き回りボールサイドに顔を出す。

画像5

 この狙いは当たりヴェルディに再びリズムが生まれる。幅を取り大外とハーフスペースの循環を加えてサイドから攻撃を仕掛けて、深い位置まで抉る。これに対して磐田は5バックでリトリートして対抗。特に3CBは中央をガッチリ固めて反撃を許さない。

 しばらくこの状態が続き、残り10分くらいのタイミングでようやくヴェルディは次の手を打つ。杉本、パライバ、戸島の3枚を同時投入。ビハインドかつ、得点の匂いがない状態でこの交代はかなり遅いタイミングだっただろう。システムを以下のように変更してスクランブル体制になった。

画像6

 杉本とパライバのスピードを活かしたいが、磐田が引いて守るためスペース無く、スプリントすらろくに出来なかった。戸島も磐田CBに囲まれてほとんどプレーさせて貰えずに持ち味が出せなかった。終了間際には佐藤凌我も投入して前線の枚数を増やすものの攻撃の組み立てが単調になり過ぎて最後までシュートへ持って行けず1-2で逆転負けを喫した。これで5戦未勝利となる。

まとめ

 ボールを大事に扱い保持しながら得点を奪おうとする志向の強い選手が多い両チームであるが、選手たちの特徴からするとショートカウンターが適している。よってお互いにボールを持たせておいて全体を引きつけて広大なスペースを使いたい裏のテーマがあった。ボール非保持を我慢してここぞでスイッチを入れてフィニッシュへ持ち込むのは磐田が1枚も2枚も上手だった。
 ヴェルディはSB起用の森田晃樹に今季初ゴールが生まれたが、痛恨の逆転負けを喫した。ボールロスト後の即時奪回の意識の弱さ、ネガトラ時の位置取りの甘さや守り方の構造的欠陥があり磐田に長い距離を運ばれる場面が終始見られた。この点はかなり深刻な課題として受け止めなければならない。
 また、押し込まれていくことでだんだんと視野が狭くなりプレーの選択肢が少なくなってしまった。その結果、簡単なミスが目立ち、自陣でのパスミスが多かった。積極性にも欠きシュート数もたったの4本だけだった。後半に至ってはまともなシュートチャンスも無かった。梶川の交代は意図が明確であったが、それ以外の4名は後手後手になり何も出来なかった。夏の移籍市場を経て手持ちの駒が増えたが、上手く使いこなすには辛抱が必要だろうか。