自民党が政権奪還できて、民主党にそれができない理由

こんばんは。今日もお疲れ様です。

4年前の日経の記事が、重要な事実を示唆していた件

もう昔の、といっても4年前ですが、日経の下記の記事がまだアップされているので、これ幸いと使わせて頂きます。日本の政治を語るのに、これより適切な記事は、他には見つからないからです。
(一昨日ご紹介した日刊なんちゃらDIGITALと違い、こちらは3,052団体の収支報告書を手作業で集計した労作です。)

「政治と金」はいつも問題となりますが、それは「政治は金」だからです。通常、それは悪い意味で捕らえられますが、良い意味であってもです。

2009年に鳩山由紀夫内閣が発足して、自民党は野党に転落した訳ですが、その3年後に自民党が政権を奪還して、その後民主党が政権を(たぶん)二度と奪還できないであろう経済的な理由がそこに説明されています。

では、それを説明してまいります。

自民党への政治献金・寄付の経年変化

国民政治協会とは、自民党の政治資金団体です。自民党自体に献金したいと思う個人・法人は、手続き上、国民政治協会に寄付します。

2007年に国民政治協会の収入が30億円に達したのを境に、その後民主党に政権を奪われ、野党であった時代には、10億円まで減収となりました。
その後政権復帰してからは、徐々に復帰前の数字に近づいています。

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自民党と民主党への政治献金・寄付の経年変化

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こちらは同じ期間の民主党の献金・寄付収入との比較になっています。
民主党が政権をとった2009年には、まだ自民党の方が収入が大きかったものの、2010年から2012年までは、民主党の収入が自民党の収入を超えていました。
2012年末に自民党が政権を奪い返すと、翌2013年には明確に逆転しました。

いずれも、皆さん与党になびく、ということですよね。

繰越金に見る自民党の成功と民主党の失敗

ここからが、重要なポイントになります。

自民党も民主党も、翌年への繰越金を、銀行口座の預金という形式で保有しています。
この数字の推移で、近年の自民党の成功と民主党の失敗が、極めて判りやすく理解できます。

自民党は下野した2009年以降、浪人となって収入がなくなった250人の前国会議員とその秘書を養うため、100億円あった預金をほぼ全額取り崩して支援しました。
2010年から2012年の3年間は、党の収入も激減していましたが、これも惜しみなく取り崩して支援を継続しました。
政権復帰できた2013年からは、支援する必要がなくなったので内部留保に努め、3年で預金を100億円にまで戻しました。
再び総選挙で厳しい戦いを強いられる場合の備えが、これで準備完了となった訳です。

一方、民主党は政権を取った2009年以降、預金が50億円から200億円まで増やしたのですが、2012年の選挙で使ったのが自民党が2009年に使った100億の半分の50億しか使わず、野党になったのに150億円を手許に残し、浪人した落選議員の支援を自民党程には十分に行いませんでした。

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この預金はその後民進党、現在は国民民主党に引き継がれていますが、手許に潤沢な資金が残っているのに配分を怠っているため、実は選挙で勝てていない状況です。

安倍政権がやってきた、度重なる解散総選挙の経済的意味

どの程度あたっているかは判りませんが、安倍政権がこれまでやってきた、度重なる解散総選挙の経済的意味は、明白です。

民主党系が引き継いだ150億円をさらに取り崩させれば、自民党の1強は半永久的に維持できます。

つまり、自民党は極めて合理的な戦略を駆使しているのです。

「政治は金」ですが、「選挙も金」です。特に「常在戦場」と言われる衆議院は、いつ解散総選挙があってもおかしくない状況ですから、国会議員が選挙準備に奔走せず、政策構築に集中するためには、選挙の度に発生する資金繰りの心配から解放してあげる必要があります。

私の拙い経験の範疇で言いますと、国会議員の選挙には、1回あたり一切合切で5千万円は必要です。河井克行前法務大臣は、奥さんの河井案里参議院議員の選挙に際して内閣官房機密費から1億5千万円貰ったと言われてますが、さすがにそれは1億円程貰いすぎです。

現在の衆議院の定足数は465議席ですから、その過半数、233議席を獲得するために必要な選挙資金合計は、116億5千万円となります。それを全額党が負担する必要はありませんが、「この候補は絶対当選してもらいたい」場合には、その候補がお金全く持ってなくても、最大5千万円資金提供して勝たせるべきでしょう。
一方、自民党にしてみれば、国民民主党に引き継がれた150億円が、116億5千万円より少なくなるように取り崩させれば、もう絶対安泰、ということになる訳です。

自民党は、なんだかんだ言っても、そこをしっかりやっているから、選挙も強いのです。旧民主党系に見切りをつけて、自民党に移籍した国会議員は二桁に上ります。また維新やれいわ新選組に移った浪人組も居ます。「選挙も金」ですから、そうした議員を批判することは簡単ですが、やむを得ない行動でしょう。

旧民主党は、自民党がやってたことが全くできなかったので、今日の状況を招いています。

なお、ここまでの議論では、話をシンプルにするために、政党の献金に次ぐ収入である、政党助成金については触れませんでした。現在は、政党助成金を含めて、政党の収入構造が成り立っていますので、結論に変わりはありません。共産党だけは、引き続き政党助成金を受け取ってないそうですが。

民主党が、政権担当時にやるべきだったこと

政治にべき論は禁物ですが、最後にひとことだけ。

民主党が、政権担当時にやるべきだったことは、明白です。2012年、安倍自民党総裁の挑発に乗らず、批判されても非難されても政権を手放さずに、あと3年、じっと我慢していればよかったのです。そうしたら、自民党の貯金が尽きて、浪人を支援し続けることが出来なくなったでしょうから、選挙でひっくり返される懸念も後退してた筈なのです。

でも、野田内閣の、誰もそこに気づいてませんでしたね。

わが国で二大政党政治を確立する芽が、そこで潰されてしまいました。
誰かさんの受け売りではありませんが、まさに断腸の思いです。

では、また明日。

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