黙契


秋の終わり
日本海を見下ろす断崖の上
崩おれ来て波は
山に阻まれ
飛沫は谺となって
空へ散る
垂れ込めた雲間から
幾本の光が海に注ぎ
鈍色のうねりが
そこかしこ
青白の輝きに翻る
空と海とで
交わされていたなにか
刻々
海は色を変え
水温を下げ
夏に喪われた青の増殖に
取りかかる
と いつの間にか
雪だ
雪が降ってきた
遅れていた初雪が
いま一面を降りしきる

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