何清漣★★国際政治ガラガラポン:中国がRCEPで最初のチャンスをつかむ 2020年11月30日

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 米国大統領選挙の混乱に乗じて、中国は格好のカードを手に入れました。そして、時を移さずチャンスを逃さず、8年間にわたって熟成させてきた東アジア地域包括的経済連携(RCEP-15 )に正式署名しました。

 現在、問題を抱えている相手のインドにさえ、将来の参加を歓迎するとしながら、中国のの言うことを聞かない台湾という「叛乱の島」は除外しました。日本とオーストラリアは、不満ながらも「鼻をつまみながら」参加しました。

 中国のプロパガンダは、すべてRCEP-15の経済効果ばかり言及していますが、その目標はアジア太平洋地域の経済の機関車になるだけではないことは誰の目にも明らかです。

 ★世界経済の「天下三分」の情勢

 中国はもちろん「ウィン・ウィンの経済関係」を口にしますが、その最大の狙いは、東アジア・東南アジアの産業チェーン全体を統合し、経済的に中国への依存度を高め、これまでの政治支配を永続させ、強化することにあります。

 欧州連合(EU)をモデルにして1990年代初頭に始まったグローバリゼーションのラウンドは、本質的には国家主権を消滅させるグローバリゼーションでした。英国のブレクジットや、米国でのトランプ大統領の登場は、どちらもこのグローバリゼーションに対する否定でした。

 しかし、世界各国で、グローバリゼーションで唯一受益者となった中国に対しては「寛大」でした。北京が国家主義を主張し、さらに各国が中共の長期執政権という核心的利益を尊重するように強調したことに対して、各国は何もしようとせず、却って自国の中国経済への依存性に屈してしまい、中国の国家至上主義を黙認し、米国を批判してきたのです。

 今回、RCEP-15 に署名することで、中国は東南アジアにおける経済的リーダーシップを確保しただけでなく、同時に、西側世界のこれまでのグローバリズムに対する単純すぎる理解を否定したのです。

 この単純な理解とは、ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・L・フリードマンのベストセラー『The World Is Flat』に描かれています。

 同書では、グローバリズムによって、世界の地理的距離は本質的に抹消され、世界のどの部分も同じように相互につながっていると主張しています。しかし、中国は オーストラリアを攻撃し台湾を排除して、そんな「平等」が幻想であることが証明されました。

 RCEP-15 の署名は、中国の悲願を達成したのです。すなわち、純粋な国家や国家ブロック化に代わる三つの大きな地域経済ブロック、世界経済「3足鼎立」の実現です。

 ひとつ目は、アメリカを軸とした北米経済圏です。 アメリカ・メキシコ・カナダの経済統合は、これまでは北米自由貿易協定(NAFTA)によるものでしたが、現在はアメリカ・メキシコ・カナダ三国間協定(USMCA)によるものとなっています。 ふたつ目は欧州連合です。 第三は、中国を中心としたRCEP-15の形でのアジア太平洋経済です。

 ★中国中心のRCEP-15に直面して、各国は複雑

 中国を中軸とした「RCEP-15」に対して、署名した日本やオーストラリアは、心中不満です。この2年間、中国経済と政治面からの打撃を被ったオーストラリアの危機感は最も強いものがあります。

 11月17日、オーストラリアのモリソン首相と日本の菅義偉新首相は対面会談を行い、二国間の防衛・安全保障問題に関する相互アクセス協定(RAA)で合意しました。今回の合意は、アジア太平洋地域で高まる中国の野望に対抗するため、両国の軍備を緊密にし、同盟国である米国との連携を強化するものです。

 この合意に対して、中国は極めて立腹しています。日本に対しては知らん顔をしながら、オーストラリアに対して圧力をかけ、赤ワインの関税を24%引き上げるなどの経済制裁を強化し、オーストラリアに対する中国の14の不満の要約を3つの報道機関に送り、ある大使館関係者はシドニー・モーニング・ヘラルド紙にも今回の合意について「中国を敵と考えるならば、中国は敵になる」と言った。その狙いはオーストラリアに国防を放棄させようというものだ。

 欧州は三大国がそれぞれ違ったことを考えているので、話も違います。ドイツ経済が2年連続で急落し、5期にわたって首相を務めてきたアンゲラ・メルケル氏が首相を続ける気は無いとおおっぴらに話をしていますから、この状態のドイツ政府は自然と事態を見守る姿勢です。

 現在、ブレクジット中の英国は、新型コロナ禍に悩まされ、不確実性に満ちた経済復活の難題や、深刻な失業、負債の持続的な上昇、さらには景気を刺激するための持続的な金融緩和政策を採用しなければならない状況にあります。

 しかし、このような山積みの困難にもかかわらず、英国はある決定を下しました。今後4年間に241億ポンドの国防支出を増やすと言うのです。これは英国政府がこの30年間で最大の軍事費の上昇で、これ以前に華為(ファーウェイ)の5G技術の不採用を決めており、英国政府がある種の危機感をもっていることです。

 11月 28日、イギリスとフランスが共同で英国海峡を横断する不法移民を終了することを目的とした合意書に署名しました。 フランスに資金を提供して、英仏海峡を渡って密入国しようとしている不法移民をやめさせようというものです。

 フランスは2つの方法でフランスの復興を考えるようになった。 1つ目は、経済自立。フランス政府は今年8月31日、「外国依存を減らし、戦略的産業を還元する」計画を実行するために主要5産業を特定したと発表し、フランスの「産業主権」を復活させるために1000億ユーロの再生計画を打ち出しました。

 2021年1月からは、企業の各種生産にたいして100億ユーロの減税を行う。さらに仏公共投資銀行(BIPF)と協力して「戦略的産業の本国送還を提案するすべての企業への助成金申請」を発表した。これは、トランプにならった「フランスを再び偉大に」計画だと冗談で呼ばれています。

 第二には、国内の公共安全について考え始めました。最近起こった数件の斬首テロ事件に対して、マクロン大統領もついに堪忍袋の緒が切れたようで、「イスラム主義」を批判しました。これまでのように「極端なイスラム主義」の「極端」が省かれていたため、多くのイスラム国家の反対を受けましたが、いまのところ、マクロンは屈服していません。

 さらに重要なのは、フランスがEU内で反イスラム主義の考えを押し通そうとしていることだ。 マクロンは11月10日、パリでオーストリアのセバスチャン・コッツィー首相、ドイツのメルケル首相、オランダのルッテ首相、ミシェルEU常任委員長、ライエンEU理事長とテレビ会議で会談しました。EUの小規模なサミットで非公式なものですが、移民テロ攻撃の脅威を初めて公式に対象とし、イスラムに矛先を向けたという点で意味があります。

 世界秩序の深遠な変容、欧米間の疎外感の増大、地域構造の微妙な変化、フランスのロシアと仏ロ関係に対する認識の変化などにより、マクロンは就任以来、ロシアに対する政策を積極的に調整してきました。グローバルな問題では、ロシアが関わる危機に対して、西側陣営と一致した立場を維持しつつ、地域レベルの問題ではロシアとの直接対決を避けるために選択的な対応をしました。両国間関係では、ロシアとの貿易関係や政治的信頼の再建、社会、文化交流に力を入れてきた。

こうしたことは、欧州の2大国である仏と独の関係を更に一歩、へだてることになるものです。

 ★台湾の排除は政治的的大国へのカード

 中国共産党は、RCEPの創設で、多数派を引き込み、オーストラリアを叩き、台湾を排除する戦略をとっています。オーストラリアに関しては、別稿の ★美国大选触发国际关系提前重组(拙訳:米大統領選挙結果で生き返る中国か? 2020年11月29日)で書いておきましたので、ここでは、中国の台湾孤立化政策をあげておきます。

 地域経済の結びつきと貢献という点では、台湾はRCEPの重要なメンバーの資格があります。しかし、台湾は北京に対して、政治的に言うことを聞きませんから、近年、国際的な公共空間が厳しい圧迫を受けています。

 台湾実業家の能力と、独自のハイテク技術のおかげで、台湾の経済的な空間は、まだ相当広いと言えます。しかし、中国がRCEP-15を作った後では、台湾の政治的、経済的な余地はどちらもそうとうなプレッシャーを受けるでしょう。

 台湾の国民党と民進党の対中国戦略は異なります。国民党の失敗は経済上、大陸に依存して、政治的に中共の台湾への様々な「紅色浸透」を許してしまったことでした。民進党は、政治的には米国に依存して、経済的には徐々に台湾の中国依存を減らそうとしていました。しかし、情勢からして、この戦略はなかなか思うようにいきません。

 台湾の金融担当当局がこのほど発表した統計によると、2020年上半期には、台湾の中国本土(香港を含む)への輸出額は668億ドル、9.8%増となった。これは、台湾の主要輸出市場で最も急成長している地域であり、台湾の総輸出額に占める中国本土への輸出の割合は42.3%に上昇、約10年ぶりに過去最高を記録したといいます。

RCEP-15ができてから、北京は台湾の加盟を拒否する姿勢を明確にし、台湾でも社会的関心が高まりました。民進党政権は「短期的には大きな影響はない」 と台湾経済界を安心させようとしましたが、国民党は間髪入れずに民進党を攻撃を開始し、11月15日、国民党の報道官は、民進党の不適切な政策が台湾をアジア太平洋・インド太平洋地域の真の「経済的限界」にしてしまったと公言。民進党の政策を「容認できない」と批判しました。「民進党は米国にしがみつきたいだけ」と、蔡英文総統に対し、RCEPの全面的な評価を行い、具体的な対応方法を提案するために、緊急にシニアレベルの会合を招集するよう求めました。

 台湾を締め出しているのは、明らかに北京なのですが、国民党は、民進党がRCEPが台湾にとって重要であり、中共がRCEPに影響力を行使するのに、民進党当局は海峡を挟んだ両国の政治対話の基盤を維持しようとせず、参加への道を困難にした、と非難しているのです。

 今回の国際政治のガラガラポンの中で、米国は大統領選挙で混乱しており、これが国際政治の大転換の原因でもありますが、当面は、局外者となっています。(終わり)

何清漣氏のこれまでの論評の目次はこちらです。

评论 | 何清涟:国际政治大洗牌 中国RCEP抢先机

2020-11-30

美国大选引发的内乱,让中国摸了一手好牌,中国也迫不及待地将这手牌打出去了。北京趁这个机会窗口,让酝酿了长达八年的的RCEP-15正式签署,向目前纠纷甚多的印度表示欢迎将来加入,却将不臣服的“叛离之岛”台湾排除在外。日本与澳大利亚虽然很不情愿,还得捏着鼻子加入。尽管中国所有宣传都只提及RCEP-15的经济利益,但谁都清楚中国的目标不仅仅是做亚太地区的经济火车头。

世界经济格局的三分天下局面

中国谈的当然都是经济上“互利共赢”,但其主要目的在于整合整个东亚和东南亚的产业链,让各国对中国产生更深的经济依赖,延续并加强以往形成的政治控制。

1990年代初开始的这轮全球化以欧盟为模本,基本是消解国家主权的全球化。英国退欧、美国川普胜选,都是对这种全球化的否定。但世界各国对全球化唯一的净受益者中国却网开一面,尽管北京强调国家主义至上,还强调要各国尊重中国共产党长久执政的核心利益,但各国并不怎么针对中国,相反因为自身对中国的经济依赖而默认中国的国家主义至上,对美国批评有加。这次中国抓住机会窗口签署RCEP-15,不仅确保了中国在东南亚地区的经济领导地位,同时也否定西方世界以往对全球化过分简单的解读。这种简单解读以《纽约时报》专栏作家托马斯·弗里德曼(Thomas L. Friedman)那本畅销书《世界是平的》(The World Is Flat)为代表,该书认为世界的地理距离已从本质上被消解,世界任何地方都以平等的方式相互联系,但中国却用自己打压澳大利亚、将台湾排除在外的行动证明这种“平等”子虚乌有。

RCEP-15的签署,达成了中国长期追求的目标:世界经济三足鼎立,三个大区域经济集团取代了纯粹的国家、集团。

第一个是以美国为轴心的北美经济区。美、墨、加的经济一体化以前是通过《北美自由贸易协定》(NAFTA),现在是通过《美墨加三国协议》(USMCA)。第二个是欧盟。第三个是以中国为中心的RCEP-15形式出现的亚太地区经济体。

面对以中国为轴心的RCEP-15,各国心态复杂

日本、澳大利亚等对中国轴心的 RCEP-15签订心有不甘,近两年备受中国经济政治双重打击的澳大利亚危机感最强。11月17日,澳大利亚总理莫里森和日本新任首相菅义伟举行了面对面会谈,并就双边国防安全问题达成了《互惠协定》(Reciprocal Access Agreement)。协议将使两国的军队更加紧密地合作,加强这两个美国盟国之间的关系,以对抗中国在亚太地区日益增长的野心。对这个协议,中国深感恼火,采取分而治之方式,对日本不闻不问,但对澳大利亚步步紧逼,不断抽紧经济制裁的绳索,比如对该国红葡萄酒立刻加征24%的关税,中国驻澳大使馆官员还把中国对澳大利亚14条不满的概述发给了三家新闻机构,一位大使馆官员还向《悉尼先驱晨报》(The Sydney Morning Herald)解释说,“如果你们把中国当敌人的话,中国就一定是你们的敌人”,目的是逼迫澳大利亚放弃国防。

欧洲则是另一副景象,三大国各有考虑。德国经济连续两年大幅下滑,已经担任五届总理的默克尔已经放话,不再考虑继续担任总理,这种状态下德国政府自然是看守状态。

正在脱欧的英国现在因疫情困扰,面对充满不确定性的经济复苏难题,失业严重,政府负债持续上升,还不得不采用持续性的货币宽松政策刺激经济。但是,即使如此困难,英国最近还是做出了一个决定,未来4年英国将增加241亿英镑国防开支,这是英国政府30年来最大幅度的军费上调,此前弃用华为5G技术,说明英国现政府有点危机意识。11月28日,英国和法国共同签署了一项旨在终止非法移民横渡英吉利海峡的协议,由英国提供费用,让法国帮助拦截那些企图偷渡英吉利海峡的非法移民。

法国从两方面开始考虑法国的复兴。一是经济上觉得应该自立了。今年8月31日,法国政府宣布确定5大产业实施“减少对外依赖,战略工业回流”计划,为了重振法国的“工业主权”,推出1000亿欧元振兴计划,从2021年1月1日起,企业生产各类税务减免的100亿欧元。法国政府还联手法国公共投资银行,向“所有提出战略工业回流的企业开放补助金申请通道”——这个计划刚出来时,人们戏称这是摹仿川普的“让法国重新伟大”计划。

二是开始考虑国内公共安全了。最近因几起密集的斩首恐怖事件,马克龙也终于忍无可忍,因应民众的安全要求,批评了“伊斯兰主义”,因为前面没有冠以“极端”二字,引发了不少伊斯兰国家的反对,但马克龙暂时没有屈服。

更重要的是,法国已经尝试将反伊斯兰主义这一主张推向欧盟内部。马克龙自2017年提出“唤醒欧洲”之后,得不到欧洲响应,现在总算等来了机会。11月10日,马克龙在巴黎跟奥地利总理库茨会面,并与德国总理默克尔、荷兰首相吕特、欧盟常任主席查尔斯·米歇尔及和欧盟执委会主席冯德莱恩召开视像会议,讨论恐怖威胁问题。虽然这只是小型欧盟峰会,但意义重大,因为峰会非正式,欧盟首度正式将恐袭威胁指向移民,而且矛头直指伊斯兰主义。

全球秩序的深刻转型、欧美关系的日渐疏离、区域格局的微妙变化,法国对俄罗斯及法俄关系认知的变化,导致马克龙自上任以来积极调整对俄政策。在全球事务中,针对涉及俄罗斯的危机,法国在保持与西方阵营立场一致的同时,在区域层面,法国与俄罗斯进行选择性接触,避免直接冲撞。在双边关系上,法俄增进经贸关系,重建政治互信,加强社会、文化交流。

这些将导致欧洲两大国法德关系进一步疏离。

台湾被排除,又成政敌政治牌

中共在RCEP的建立过程中,采取拉拢大多数,打击澳大利亚、排除台湾的策略。打击澳大利亚的情况我在《美国大选触发国际关系提前重组》(澳大利亚广播网,2020年11月27日)一文中曾加以分析,本文只提中国对台湾的孤立政策。

从区域经济联系及贡献来看,台湾完全应该成为RCEP的重要成员。但因为对北京政治上的不服从,台湾近年面临北京的步步紧逼,国际公共空间受到严重挤压。但由于台商的灵活,以及高科技方面确有独到之处,台湾的经济空间还算裕如。但中国主导的RCEP-15建立之后,台湾的政治空间与经济空间将双重受压。

台湾国民、民进两党对大陆政策不相同,国民党之失败在于其奉行经济上依赖大陆,政治允许大陆对台湾实行各种红色渗透。民进党希望政治上依靠美国,经济上逐步减少台湾经济对大陆的依赖。但形格势禁,这一策略实难如愿。据台湾当局财政主管部门日前发布的统计,2020年上半年,台湾对大陆(含香港)出口达668亿美元,同比增长9.8%,为台湾主要出口市场中增长最快的地区;对大陆出口占台湾总出口比重上升到42.3%,创近十年新高。

RCEP-15建立之后,北京明确表示拒绝台湾加入,这一姿态在台湾引发社会担忧。民进党政府尽力安抚台湾经济界,说短期内不会有大的影响;但国民党不失时机地向民进党进攻,11月15日,国民党发言人公开表示,民进党的不当政策让台湾真正变成亚太或印太地区的“经济边缘人”,批评“民进党只想抓住美国”,呼吁蔡英文紧急召开跨高层会议,针对RCEP进行全方位评估,提出具体因应之道。明明是北京将台湾拒之门外,但国民党却指责说,民进党当局明知RCEP对台湾的重要性以及大陆在RCEP的影响力,民进党当局却无心维系两岸的政治对话基础,以致参与之路难上加难。

在这场洗牌行动中,美国由于大选内乱,既是国际政治大洗牌的原因,也因此暂时成为局外者。




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