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象印製の加湿器が最適な理由と加湿器のエビデンス

エビデンスを求めて三千里、着太郎(@192study)です。

先日Twitterで加湿器の話題があったので言及したのですが、加湿器のエビデンスを絡めて改めて記事としてまとめてみました。
なお、象印製の加湿器が最適だったのは面倒くさがりでかつ安全性を担保したい自分の場合の話なので、誰にとっても、という訳ではありません。

加湿器の種類

加湿器の種類には、主に超音波式気化式スチーム式ハイブリッド式4種類があります。

超音波式

超音波式加湿器は超音波により水を細かくして霧状にすることで加湿器としての機能を実現しています。必要なパーツが小型軽量で安価なため、値段は安いものが多く最近では100円ショップなどでも売られているほどです。

しかし、海外では2008年にキプロスの私立病院でレジオネラ症の新生児集団感染 ¹⁾ が、日本国内では1996年(東京)、2007年(新潟)、2018年(大分)に超音波式加湿器が原因とみられるレジオネラ症による死亡事故 ³⁾ ⁴⁾ が起きています。特に2018年の事故では「水は毎日交換、週に一度はブラシで洗浄されていた」⁶⁾ といいます。

Dyson の Hygienic Mist や Pure Humidify Cool のように紫外線等で殺菌する機能があるものや、確実に高頻度の定期的なメンテナンスが担保できる条件でない限りは、超音波式加湿器はかなりのリスクがあるように思います。廉価品の日常使用は絶対に止めましょう。

1) 倉 文明, 前川 純子「レジオネラ症-最近の多様な感染源」IASR Vol.34 p.169-170: 2013年6月号
2) 酒井 英明, 赤井畑 美津子, 新妻 一直, 細矢 光亮「乳児院におけるレジオネラ症の集団発生例」感染症学雑誌 78巻 5号 p.404-410
3) 遠藤 啓一,  伊藤 一寿「日本呼吸器学会誌:家庭用加湿器が原因と推定され,重症呼吸不全を呈して死亡したレジオネラ肺炎の1例」日本呼吸器学会雑誌 Vol.47 No.5 p.388-392, 2009
4) 山崎 哲, 松田 哲明, 山田 耕嗣, 石沢 幸子, 山田 豊, 竹内 裕, 江口ヒサ子, 棚橋 定衛「家庭用超音波式加湿器が感染源と考えられたレジオネラ症の1例」IASR Vol.29 p.19-20: 2008年1月号
5) 佐々木 麻里「加湿器が原因とされたレジオネラ症集団発生事例について」大分県衛生環境研究センター年報第45号,47-51(2017) [H・CRISIS]
6) 西 貴司「加湿器を原因とした老人福祉施設でのレジオネラ症集団発生事例~対応編~」厚生労働省 平成30年度生活衛生関係技術担当者研修会

気化式

気化式加湿器は水を効率的に自然蒸発させることで加湿器としての機能を実現しています。気化式加湿器は雑菌が繁殖しても飛散することは少ないと言われているようですが、それでも大繁殖すると飛散してしまうようです。⁷⁾

気化式加湿器については加湿水が微生物汚染を受けても室内に飛散することは少ないとされているが,高濃度の汚染の場合には飛散することが報告されており,また加湿器本体の汚染は加湿能力の低下を招くことになるため,その対策は重要である.

気化式には1996年時点で吸上げ式流下式膜式の3つのタイプがあり、このうち吸い上げ式は汚染が著しいようです。⁸⁾

吸上げ式”の場合,構造は単純であるが,水槽水は短時間で10^6cfU/mlレベルの高濃度の微生物汚染を受け,その汚染度は空気温度に関係なくほぼ同じであった.加湿エレメントは抗菌処理されているにもかかわらず,その汚染は著しく,短期間で加湿能力の低下が予想された.

7) 田中 英紀, 丹羽 英治, 武田 尚吾, 高橋 直樹, 熊田 瑶子, 松岡 紗矢佳「病院空気調和設備における水気化式加湿器の微生物汚染およびエネルギー性能に関する実証研究」空気調和・衛生工学会 論文集 43巻 259号 p. 11-20
8) 勝井 則明, 西川 文子, 中田 春男, 喜多 英二, 坂本 雅子「気化式加湿器の微生物汚染に関する実験的研究」空気調和・衛生工学会 論文集 21巻 61号 p.37-44

スチーム式

スチーム式加湿器は水を加熱して沸騰させることで加湿器としての機能を実現しています。加熱殺菌されるので細菌感染の面では基本的に安全です。ただ、水タンクや給水経路は抗菌処理されていても雑菌が繁殖しないわけではないので、各種パーツの定期的な清掃が必要です。(一般的に、浄水は使わない、酸性の水を使うなどの対策があります。ジャストアイディアですが氷を入れるのもいいかもしれません。)
また、沸騰した蒸気が噴き出してくるので子どもの居る家庭では安全に配慮が必要です。
その他、水を蒸発させるため、水に含まれるミネラル等が残りスケール(水垢)がヒーター部分などにこびりつくので、定期的にクエン酸による洗浄が必要です。

ハイブリッド式

ハイブリッド式加湿器には、スチーム式加熱式を組み合わせた加熱気化式と、スチーム式超音波式を組み合わせた加熱超音波式があります。

加熱気化式は気化式と同じくフィルターを使うので、雑菌の繁殖自体は防げないでしょう。加熱殺菌されていると勘違いして過信すると危険です。

象印のメリット

さて、象印の加湿器はスチーム式ですが、他社製品と比べてどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

絶対にカビない
最大のメリットが絶対にカビない点です。なぜ絶対にカビないかと言えば、最初に水をタンク内で丸ごと沸騰させてそのまま吹き出してしまうからです。単純明快!

他の製品は抗菌なんちゃらとか殺菌なんちゃらと涙ぐましい機能が喧伝されていますが、水の丸ごと沸騰ほど確実な方法はありません。タンク自体で加熱するため給水経路など余計な場所がカビることもありません。

手入れが楽
スチーム式なのでメンテナンスをしないとスケール自体は溜まってしまいますが、フィルターなど内装には余計なパーツが一切なく、また突起や穴などもないため、何も考えずに水とクエン酸30gを投入してクエン酸洗浄モードにするだけで綺麗になります。

同じスチーム式でもフィルターなどがあるものは複雑な形状のパーツにスケール(水垢)が付着したり、パーツの色が白でスケールの付き具合が分かりにくかったりします。

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掃除が必要なパーツらしいパーツと言えば蒸気口のカバー部分くらいでしょうか。他に手洗いが必要なパーツは一切ありません。

象印のデメリット

そうはいっても象印の加湿器にもデメリットはあります。しかも少なくありません。

沸騰音がうるさい
最大の欠点は、丸ごと沸騰させるため、とにかくうるさい点です。Amazonの☆×1のレビューを見ても異口同音にうるさいと書かれています。設置場所によっては耐えがたいものがあるので、よくよく検討してください。

加湿までに時間がかかる
沸騰音と並んで大きいデメリットの一つは、一度ポットの水を全て湧かすため、加湿が始まるまでに時間がかかる点です。
マニュアルを確認すると、室温20度、水温20度、満水の条件でEE-RP35で約20分、EE-RP50で約25分かかると記載がありますが、冬場に水温が20度もあることはないと思いますので、もう少し時間がかかるかもしれません。

給水が大変
いわゆる電気ポットと同じ構造のため水タンクが分離できません。本体に直接給水する形となるため、蛇口付近に設置していないと給水が面倒です。
我が家ではカウンターキッチンのカウンター部分に置いています。

スケール(水垢)がすぐに溜まる
スチーム式全般の欠点ですが、真っ白いスケール(水垢)がすぐに溜まります。また、赤サビも生じます。東京都の水道水を浄水器を通して使っていますが、我が家の浄水器の性能が低いためかも知れません。(通常の加湿器では雑菌の繁殖が早まるので浄水を使うのは止めましょう)
これはクエン酸洗浄で対処可能です。赤サビもクエン酸で除去されます。

防水ではない
直接水を投入する機構の割りに防水になっておらず、雑に給水して濡らしてしまうと壊れる危険があります。

水がすぐなくなる
自動モードにしておくと他の製品に比べてすぐに水がなくなる気がします。

消費電力が大きい
最初に全ての水を沸騰させるため、消費電力が大きいと言えます。
商品仕様によると、湯沸かし時(室温20度、水温20度、満水)の20~25分間は985W、加湿時は305~410Wとのこと。具体的な電気代の差はいつか計算してみたいと思います。

蒸気が危険
スチーム式全般の欠点ですが、沸騰した蒸気が出るので、子どもの顔や手が届く場所にあると危険です。商品ページには冷却構造により約65度まで下がった状態になるという説明がありますが、室温に依存すると思います。
安全で給水しやすい設置場所を探すのが難しいかも知れません。

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湿度の調整ができない
湿度センサーの性能が悪いのか構造的な問題なのか分かりませんが、運転モードを「ひかえめ」に設定してもあまり変わらない印象です。

内装が剥がれる
メンテナンスをサボると内装のコーティングが剥げます。我が家は使用開始から2年目で底のコーティングが剥げました。メンテナンスというか、空になって内部が熱い状態のまま給水していたのが原因かもしれません。

見た目がダサい
見たまんま古い電気ポットなので、控えめに言ってダサいです。

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過去にはEE-SA30型という攻めたデザインの商品も販売していたようですが、その後廃盤となったようで、推して知るべし。

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型番と価格

象印の加湿器の商品一覧ページを確認すると、現行の製品は EE-RP35, EE-RP50EE-DA50 の3製品のみのようです。(これは2020年1月当時の話で、2020年11月現在では EE-RQ35, EE-RQ50, EE-DB50 の3製品が現行製品です。)

ただ、Amazonの象印の加湿器の一覧を見てみると EE-RM35-WA, EE-RM50-WA, EE-RL35-CA, EE-RL50-CA, EE-RD35-HA, EE-RD50-HA, EE-RK35-CA, EE-RH35-CA, EE-RH50-CA, EE-RK50-CA, EE-RJ50-WA などの廃盤になった製品も流通しているようです。

2020年1月26日時点の Amazon で EE-RP35-WA が9,970円EE-RP50-WA が10,780円(キャッスレス払いで10,241円)、 EE-DA50-WA が19400円(キャッシュレス払いで18,430円)です。オススメは EE-RP50-WA です。

ちなみに一つ前の EE-RN50-WA が Amazon' Choice に選ばれたりしていますが、購入するようであれば最新の EE-RP50-WA の方が安いのでそちらがよいでしょう。

ちなみに我が家で購入した象印の加湿器は EE-RN50 で、配達時に外装が割れていました。交換が面倒だったのでそのまま使っていますが、振るとカラカラと音がします…。

デメリットも大きいですが、加湿器の赤カビ臭いに悩まされているご家庭は是非象印の加湿器を検討してみてください。

山善 SteamCUBE

当記事をツイートしたところ、入江真士 (@iikkkkuunn) さんから山善で類似品があるという情報をいただきました。

象印は電気ポットですが、山善の SteamCUBE は確かに完全に炊飯器…!
製品は3.0Lの KSF-L301 、2.8Lの KSF-K282 、 2.4L の KS-J24 があるようです。

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最上位機種の KSF-L301 は1万円超えで、ジェネリック家電の山善とはいえ価格的アドバンテージはそこまでではないようですが、象印と違って釜が外せるので、給水や内部を洗うときに便利そうです。KSF-L301 にはチャイルドロックもあるようで、デザインと釜の取り外しは象印よりアドバンテージがありそうです。(下位機種の KSF-K282 と KS-J24 にはチャイルドロックはなく、いたずら事故の危険性が高いので注意。)
デザインで悩んでる方はこちらの商品を検討してもいいかもしれませんね。

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