地獄へ邁進するバレンシア - 初夏の陣
皆様こんにちは。
前回のバレンシア大量構想外に関する記事が好評を博しまして
個人的には複雑な思いです。
そして、記事内で
「バレンシアがこれから進む道の先は、闇か地獄しかありません。」
と私は発言しました。
あれから約3週間経過し、その予想が外れることを願っていました。
しかし現実は非情なことに、その予想が的中しつつあります。
今回は、前回から更に混沌としたバレンシアの現状を紹介いたします。
【最低な人員整理】
まず、構想外選手たちの扱いです。
前回の記事では、構想外となる選手を2パターンに分類しました。
パフォーマンス面を主な理由とした【戦術的構想外】
メリトン独裁の為の犠牲となる【独裁的構想外】
の2パターンです。
それらの構想外が現時点でどうなっているか。
まず【戦術的構想外】の選手から。
このリストには
・ティエリー・コレイア
・ルベン・ソブリーノ
・エリアキム・マンガラ
・ムクタル・ディアカビ
・イェスパー・シレッセン
が含まれていました。
この内、移籍の話が進んでいるのはシレッセンとソブリーノのみです。
コレイア、マンガラにはオファー自体が届いていません。
プロとしてデビューして4試合しか出ていない選手を1200万€という高額で購入し、いざ使ってみれば攻撃も守備も出来ない惨状だったコレイアにはレンタルの打診すら中々やってきません。
シーズンの半分をリハビリに費やし、ギャンブルプレーの多いマンガラに対しても、大金を提示してまで獲得を希望するクラブは現れないでしょう。
ディアカビについても、昨夏4000万€というオファーを拒否した報いとして、今夏は獲得時の1500万€を大きく下回るオファーしか届いていません。
彼の昨シーズンのパフォーマンスを見れば500万€という値段ですら手を挙げるクラブは無いでしょう。
ましてほとんどのクラブがコロナ禍による経済的ダメージを受けている中で、通常守備は自動ドア、セットプレーでは相手選手を掴み倒し、異常なペースでPKを献上していくCBを見れば、オファーなど無くても当然でしょう。
シレッセンにはアヤックス行きの話がありますが、前提としてアヤックスの現在のレギュラーGKであるアンドレ・オナナの移籍が必要となります。
その前提をクリアした上で、バレンシアが条件を譲歩して初めて移籍が成立する見込みとなっています。
彼は昨夏、ネトとのトレードで移籍金3500万€という値段でやってきました。
この値段はGKとしてクラブ史上最高額であり、全選手で見ても歴代2番目の移籍金です(1位はゲデスの4000万€)
そして、現在彼が受け取っている給与もクラブの中ではトップクラスのものであり、現在のバレンシアの経済状況で賄えるものではありません。
彼の放出はクラブの経営を守る上で必要不可欠なものですが、獲得時と同等のオファーが来ない限りは赤字となる取引です。
そして、そんな額でアヤックスがオファーしてくることはおそらく無いでしょう。
クラブは赤字覚悟で必然的に足元を見られたオファーを呑むか、経済状況を悪化させる覚悟で残留させるしかありません。
そして1年半前にアラベスから獲得してきたルベン・ソブリーノは、来シーズンおそらくアラベスへ帰還することになります。
加入してからほとんど見せ場はなく、セビージャ戦での同点ゴールが唯一の見せ場でした。
昨シーズン残留争いを強いられたアラベスは、ルーカス・ペレス、ホセルと競争が出来、アレイチュ・ビダルが抜けるサイドでもプレー可能な元クラブOBのソブリーノを優先候補として挙げています。
ですが、アラベスの経営規模ではソブリーノを完全移籍で獲得するのは難しいでしょう。
しかし、だからといってバレンシアに残留する可能性も0に近い状況です。
そのためバレンシアは、彼の移籍金を断念してでも、給与削減と人員整理の観点から彼を手放さざるを得ません。
結果、残された道はアラベスへのレンタルという一点に絞られます。
バレンシアは戦術的構想外となる選手で利益を得る可能性はほぼ無い状況となってしまいました。
次にメリトンが独裁政権を築く上で邪魔な選手達の去就です。
クラブのキャプテンであり、絶対的存在であったダニエル・パレホは
メリトンが独裁政権を築く上での最大の障害です。
彼はメリトンによって追放されたマルセリーノ監督を支持していた選手です。
2017/2018シーズンの開幕前、移籍を考慮していたパレホは、マルセリーノ監督の存在のおかげでクラブに留まる選択をしました。
しかし、そのマルセリーノ監督がピーター・リムの身勝手な振る舞いによりクラブから追放され、多くの選手が異を唱えました。
その旗頭がパレホとエセキエル・ガライです。
ガライは今夏、クラブと契約延長の場すら与えられず、更にクラブから度重なる嫌がらせを受け、契約満了を迎えました。
そしてパレホは今、構想外という建前で強制的に排除されようとしています。
そんな彼の行き先はあろうことか、同じ州のライバルであり、欧州圏内を争う相手であるビジャレアルです。
今、ビジャレアルは500万€~600万€でパレホの獲得に迫っています。
ビジャレアルの監督であるウナイ・エメリはかつてバレンシアを指揮していた時にパレホも指導しており、彼の扱い方は理解しているでしょう。
バレンシアはクラブ強化のためと謳いながら、実際は独裁化とライバルチームの強化に明け暮れています。
更にパレホとコンビを組んでいたコクランも同じくビジャレアルへ移籍するでしょう。
パレホとコクランの両獲りは【お買得パック】として、2人合わせて1800万€~2000万€と言われています。
パレホが500万€~600万€という値段なので、コクランには1200万~1300万€の値段が付くことになるでしょう。
驚くべき点は、この2人ともバレンシアにやってきてからキャリアハイの活躍を見せているにも関わらず、ほとんど利益が得られないという点です。
パレホは500万€で、コクランは1350万€でバレンシアにやってきました。
現在、パレホには5000万€の、コクランには8000万€の契約解除金が設定されています。
もちろん、そんな値段を支払うクラブは存在しないでしょう。
しかし、それでも現在のオファー額の倍は相当する選手たちであり、間違いなくクラブの中心となれる選手たちです。
そんな彼らでも、メリトンが独裁を達成するためであれば、利益度外視で売られていくことになるでしょう。
独裁化による構想外選手で状況が複雑なのはロドリゴ・モレノとジョフレイ・コンドグビアです。
まずコンドグビアの状況ですが、これは好転しています。
ハビ・グラシア監督はアニル・マーシー会長との会合で、コンドグビアを来シーズンの構想内選手として扱うことを希望しました。
そしてこれはなんとかマーシー会長、そしてメリトン側に受け入れられたのでしょう。
事実、来シーズンのユニフォーム発表の場にコンドグビアの姿がありました。
彼自身もバレンシアから移籍する意思はあまり無く、構想外とされないのであれば残留が濃厚になりつつあります。
しかし、メリトンにとっては反乱予備軍であることに変わりなく、メリトンが納得行くオファーがあれば問答無用で売られていくでしょう。
次にロドリゴ・モレノです。
彼は昨夏、昨冬、そして今夏と売却リストに名前が載っています。
現在のバレンシアでは最も値段が付く選手であり、反メリトン分子であり、代理人がジョルジュ・メンデスだからです。
しかし、彼を取り巻く状況は最も複雑です。
まず、現在彼は右膝の怪我を負っています。
この怪我は昨シーズンから繰り返し負傷していたものであり、シーズン終盤についに耐えきれなくなったものでした。
そのため、獲得するクラブはこの怪我を考慮しなければならなくなりました。
そして、それは売却額の低下にも繋がるでしょう。
コロナ禍による経済的ダメージに加え、膝の負傷を抱えた選手を積極的に獲得しようとするクラブは決して多くないでしょう。
しかし、メリトンとしては、ピーター・リムの友人であるジョルジュ・メンデスが代理人である彼の売却はマストと考えています。
同時にロドリゴは反メリトン分子=親マルセリーノ派でもあります。
彼はセラーデス監督解任後の初戦となったアスレティック戦で、メリトンにとってのNGワードであったマルセリーノ体制の事を言及しました。
先日は【#LimGoHome】や【FCKLIM】というロゴを入れたファンとの写真撮影にも応じており、彼のメリトン体制による不信感は顕著なものです。
メリトンは届く可能性の薄い高額オファーを待つか、反乱分子を内に留めておくかの選択を迫られることになるでしょう。
最後にガメイロの状況です。
彼もおそらく来シーズンのスカッドにはいないでしょう。
しかし、彼の元にはメリトンが納得出来るオファーが届いていません。
33歳のスピード型FWという特性を考えれば、高額オファーは期待できないでしょう。
それどころか、現在届いているオファーはどれも契約満了を見越したフリー移籍での提案ばかりです。
メリトンとしてはガメイロも他選手と同様に邪魔な選手です。
なんとしても彼を追い出すことを考えれば、契約解除という選択肢も取らざるを得ません。
最終的に言えることは、構想外選手を全て追い出したとしても、バレンシアが得られる利益はほぼ0に近いということだけです。
【親マルセリーノ派を巡る闇】
マルセリーノを慕う選手達がクラブから排除されるのであれば
同じくスタッフ達も排除されることになります。
昨シーズンの途中、彼と連携を取っていたSDのマテウ・アレマニーは
数々の取引を成功させ、クラブに莫大な利益をもたらしました。
しかしマルセリーノ解任後、彼はクラブから仕事を取り上げられ、何のポジションもないまま数ヶ月飼い殺しにされ、結果的に解任されました。
彼より早くクラブを去ったのはパブロ・ロンゴリアです。
ユベントスのスカウティング部門で結果を残した彼は、バレンシアでも下部組織を中心にその実力を発揮しました。
しかし、アレマニーと同様、マルセリーノ解任後はクラブから居場所を奪われました。
そして、彼はアレマニーよりは現場との繋がりが薄かったために、早々にクラブから去っていくことになりました。
更に先日、また一人、クラブから去っていった人物が追加されました。
クラブの世話役であり、バレンシアのレジェンドだったパコ・カマラサです。
彼は1990年代バレンシアの紛れもないレジェンド選手であり、彼がまだ下部組織時代から現在までの全てをバレンシア一筋で貫いた方です。
しかし、彼は【マルセリーノ一家と交友関係がある】という理由だけで、メリトンから一方的に解雇されました。
そしてこれによって、メリトンの現場レベルにおける独裁はほぼ完了しました。
残ったマルセリーノ支持者はただ一人。
6度の暫定監督を引き受け、その都度クラブを救っていたボロ・ゴンサレスのみです。
彼がクラブから追放されることがあれば、その時はバレンシアの終焉を意味することになるでしょう。
【繰り返される忖度】
メリトンによるお友達人事はこれまで何度も行われてきました。
最初のケースであったフアン・アントニオ・ピッツィ監督解任から、メンデス物件第1号のヌーノ・エスピーリト・サント監督招聘が最初です。
それから、メリトン=ピーター・リムのお友達人事はあまりにも度を越したものとなっています。
彼らの人事で成功したケースはごく僅かです。
2014/15シーズンのアンドレ・ゴメス、ジョアン・カンセロ、ロドリゴ・モレノ獲得、そして2017/18シーズンのゴンサロ・ゲデス獲得が数少ない成功例です。
そして、これ以外の人事はほぼ全てが外れです。
最も有名なのはギャリー・ネヴィル監督の招聘でしょう。
彼が率いていた期間、バレンシアはクラブ史に残る低迷を記録しました。
他にもメンデス物件の選手たちが立ち代わりやってきては、全く結果を出せずに去っていっています。
そしてこれは、成績面での失敗に留まりません。
ジョルジュ・メンデスとメリトン=ピーター・リムが関与する取引は常にバレンシアにとって損失が生じます。
今でこそ成功したと言える取引であっても、彼らがやってきた際は経営状況を度外視した移籍金です。
アンドレ・ゴメスとカンセロには1500万€を、ロドリゴには3000万€を費やしました。
買収直後で金銭的余裕があったとは言え、それまでの経営規模を考えれば常識外れの値段です。
その後のゴンサロ・ゲデスに関しては4000万€という値段での取引でした。
これに関しては、交渉担当だったマテウ・アレマニーがPSGの要求額の約半分まで値引きする交渉を担当し、そして見事実現しました。
しかし、アレマニーが関与していなければ、メンデスの言い値でメリトンは購入を決めています。
その殆どが、最低でも1500万€であり、これはバレンシアの経営状態からいって、決して安くない金額です。
そして、この値段で獲得してきたメンデス物件の選手は、上記の選手以外、ほぼ全て1年でクラブを去っています。
残されるのは、1500万€以上での獲得費用、その半額以下の売却額という結果のみです。
そして、今夏成立してしまったフェラン・トーレスの移籍にもメンデスが絡んでいます。
フェラン・トーレスの代理人は本来、ジョルジュ・メンデスではありませんでした。
しかし、今回の交渉を担当したのはピーター・リム本人、そしてジョルジュ・メンデスです。
自分のクライアントではないフェラン・トーレスの移籍を担当するメリットはメンデスにはありません。
彼は友人であり、そして大事な商売相手(カモ)であるリムの頼みでこの交渉を担当したに過ぎません。
結果、本来の市場価値からは考えられないほどの安価でフェラン・トーレスはシティ移籍が決定しました。
シティからすれば超お買い得物件を手に入れたという考えでしょうし、それは正しいでしょう。
それは同時に、バレンシアが大きな損失を被ったということでもあります。
フェランは移籍後のインタビューにて、本当はバレンシア残留を希望していたと話しました。
同時に彼のバレンシアへの要求がクラブ規模に見合わず巨大すぎたこと。
そしてそれに対するバレンシアの対応があまりにも杜撰だったことも明かしています。
しかし、クラブが誠意ある対応をしていれば状況は少しは変わったのです。
それを無に帰したのがメリトンであり、ジョルジュ・メンデスなのです。
更に、メリトンによる忖度はメンデス物件には留まりません。
その最たるものが、もはや何の意味も為さない【メリトンユースポリシー】です。
簡単に言ってしまえば、下部組織の強化を重視するという、メリトンの取り組みです。
しかし、これは建前であり、実際に行われているのは
【メリトン=ピーター・リムお気に入りの選手の重用】でしかありません。
その旗頭として担ぎ上げられてしまったのがイ・ガンインでしょう。
本来であれば、実力を持ってポジションを奪わなければならないのがこの世界です。
しかし、ピーター・リムは事あるごとにイ・ガンインを重用するよう、現場に圧力をかけていました。
これはこの取組を行う上で丁度良い駒であり、リムと同じアジア人ということが理由だったのです。
結果的に、イ・ガンインは周囲が望まない形でクラブの中心選手として設定されることになりました。
彼を慎重に扱い、彼が最も活きる場面で起用することを是としていたマルセリーノ監督は追放されました。
そして、セラーデス監督はメリトンの言いなり通りイ・ガンインを重用し、選手・監督ともに評判を地に落とすこととなりました。
そしてハビ・グラシア監督が率いる来シーズン、イ・ガンインは再びチームの中心選手として組み込まれることになります。
それは彼が実力で勝ち取ったものではありません。
【メリトンユースポリシー】という皮を被ったピーター・リムの贔屓・忖度により、呪いの装備のように中心選手として祀り上げられるのです。
マルセリーノ監督が若手に大きな責任を負わせないよう慎重に起用していたことも。
フェランの移籍後インタビューで、イ・ガンインと共にマルセリーノ解任の元凶と疑われる羽目になったことも。
最も持ち味が活きない場面で無理矢理起用され、暴力的なプレーばかり報道されることになってしまったイ・ガンインの状況も。
メリトンにとっては一切聞く耳持たないことでしかないのです。
【これはまだ地獄の始まり】
リーガ終了から僅か3週間あまり。
それだけの期間であっても、ほぼ毎日のようにバレンシア関連のネガティブなニュースが舞い込んできます。
この期間にあったポジティブなニュースは僅か2つのみです。
1つ目はウーゴ・ギジャモンの契約更新です。
契約期間が今夏で切れることもあり、多くのクラブが獲得に動いていたギジャモンですが、彼の意思により残留が叶いました。
来シーズンは若干20歳ながら、キャプテンの一人としてもプレーする姿が見られるでしょう。
2つ目はVCFメスタージャの監督にオスカル・フェルナンデスが就任したことです。
彼はかつて下部組織の監督も努め、2007/08シーズンにキケ・サンチェス・フローレス監督解任時には暫定的にトップチームの監督も努めています。
更に、当時まだバレンシアに在籍していたジョルディ・アルバを左サイドバックにコンバートするようエメリ監督に進言したのも彼です。
バレンシアを離れて以降も、数クラブの監督を経験し、彼の本職である下部組織の監督として、再びクラブに戻ってきてくれました。
そして、これだけが現在のバレンシアのポジティブなニュースです。
これ以外のニュースはほぼ、バレンシアにとっては不利益しか産まないものばかりです。
何より、このネガティブな流れはまだ始まったばかりなのです。
ここがバレンシアにとっての底ではありません。
まだバレンシアは地獄の底へ落下し始めたばかりなのです。
バレンシアが次に浮上する機会を掴めるのは、諸悪の根源が一掃される時だけなのです。
そしてその機会が訪れるのはいつになるかわからない、地獄の暗闇なのです。
【最後に】
もし、応援しているクラブが外資に買収されたとしたら。
このような独裁的なクラブにならないことを祈ってください。
そして、我々バレンシアニスタが苦しむ絶望を、他の皆さんが経験しないことを願っています。
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