寄付の話

連続投稿になりますが、寄付の話を少し。

イギリスでは寄付やチャリティの考えが日常生活の中に浸透しており、駅や空港、文化的施設、スーパーなどの目立つ場所に献金ボックスが置いて有ることは元より、テレビでも街中でもチャリティー広告が頻繁に目につくし、何と言っても献金方法が非常に気軽です。コンタクトレスでピッと献金できる機械の設置もよく見るし、クレジットカードを持っていれば電話一本で献金できるそうで、ほんのちょっと前までは、何か心に響く援助を必要とする対象の特集テレビ番組があって、感動して少しでも役に立ちたい!と思った人が思い立ってすぐに電話をかけるとい方法もけっこうな募金額を達成する窓口となっていたようです。日本でも24時間テレビ(?)とかでそういうのありましたっけ。何よりも、少額の寄付からでも血の通った電話口の相手に暖かく受け付けてもらい、たとえ一言であっても「ありがとうございます」「あなたのご寄付を必ず役立たせていただきます」と言ってもらうことで、ものすごく嬉しい気持ちにさせてもらえるというウィンウィンの効果があるようですね。
寄付というのはそれ自体が良い習慣ですが、控えめの自己主張ができる良さがあります。社会と繋がれる感じ。

また、もちろん「お利口ちゃんの必須アイテム」みたいな側面もありますね。
イギリスの場合、寄付をすること自体はわりと当たり前の行動なのであまり「寄付した!」と言ってしまうと逆に恥ずかしいようなところも出てくる(「私はこの活動を応援してるよ!」の意の場合はその限りではないものの)のですが、もう一つ進んで、チャリティ活動を自分で主催するというのがひとつのアピールとなっており、わりとお手軽な若者たちの点数稼ぎとなってる事実があります。この辺は、大前提として寄付は良いことであるという考えに私も賛同する中で、頑張る子たちの出鼻をくじきたくないし難しいのですが、こういうチャリティで何か行動するということが尊敬される人物としての裏付けの一つとなってる。
何か無料或いは安価でできる行動(ビデオ上映会とか縄跳び100回X30日間チャレンジとか氷水を頭からかぶる動画をウェブにあげるとか)を軸にして、チャリティの趣旨に賛同してくれた人から献金を募るイベント。有名なところではロックダウン中にNHSへの寄付金を募るために、100歳の誕生日を前にした退役軍人キャプテン・トム・ムーア氏が、歩行器を使って自宅玄関から前庭のポーチのところまで毎日100歩歩いたというパフォーマンスが有ります。なんと最終的に日本円にして47億円の寄付が集まったそう。
ここまではなかなか行かないにしても、人気のある生徒や面白いネタで注目された子はけっこう驚くような金額を集めることもあり、なんだか良くも悪くも子どものうちに今の世の中の仕組みを学べる機会にもなっています。特に「意識高い系」でなくても始めやすい、比較的ハードルの低いムードがあるかも知れません。

で、そういう自主的にチャリティーレイジング(募金の企画)もするような子がたくさんいて、学校としてもいくつか地方紙に載るような大きなチャリティ企画をして来た、息子がお世話になってた前の学校ですが・・
卒業記念の寄付として日本円で二十数万円程度の屋外遊具を買おうということになって寄付を募ったところ、いつまで経っても寄付金が集まらず、最後にいつもボランティアなどで一番労力を提供してきていたお母さんたちが繰り返しの献金をしてやっとやっと達成ということがありました。
これには本当にガックリきました。
いちおう状況を弁護してあげるならば、イギリスは2020年の3月半ばごろより結構長期間にわたって完全なロックダウンをしていたので、最終学年に当たる子どもたちのうちけっこうな人数の生徒さんが早い段階で帰国してしまっていたり、最初の頃は特にあまり上手く行ってなかったオンライン授業に愛想をつかして転校した子も出たくらいで・・卒業の6月7月ともなれば、お子さんたち本人というよりも親の側の帰属意識が低下してたというのは有ったのかも知れないのですが、それにしても。小さな学校ながら卒業学年には70人強の生徒さんがいたのに、割り当てとせず寄付としたところ、わずか20万円程度が集まりませんでした。献金しても名前が出るわけでもなく、広く推奨されてることだったり自分たちにメリットがあったりしない対象に対しての募金だとこんなもんなんだろうか。ほんと残念な話です。
卒業寄付の主導をしてくれたお母さんは、最初から寄付の是非も予算もちゃんとみんなに聞いてくれており(そういうアプリがある)、もう発注してしまった上でのことだったので、最後は有志のお母さんたちの重複寄付でなんとかしました。何人かの人が十分の一以上払って、無事納品。
笑い話みたいですが、イギリスの学校のいいとこばかり書いても仕方ないのでちょっと最近思い出し方から書いてみました。