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ひよこ日記、出張と試験と無駄な抵抗

試験勉強を家でしていたらパソコンにメールが入ってきた。はじめて一人での出張。場所はジュネーブ。一泊二日。不安でしかたない。
大丈夫なのかな?なんかやらかさないかな?ミスしたらカバーできる?てかヤバいくらい方向音痴な私が一人であちこち移動できるの?
任されるのは嬉しいけれど、試験も近いし、手が回らない。メールを見ながらため息が漏れる。勉強を見てくれているアルベルトがお茶を淹れにキッチンに行っていてトレイを持って戻ってきた。

どうしたの?浮かない顔して

アルはすぐにわたしの些細な表情の変化に気がつく。

仕事で出張に行く話はしてたけど
出張先が決まった事、明後日行くこと、一泊二日の短い出張だけど方向音痴だし、そもそも一人で全部こなせるのか不安だと正直に打ち明けた

どこに出張?
ジュネーブ。近いけどさ。一泊二日なんだ

あのね、あの、やっぱいい…明後日の夜電話してもいい?

ん?ちょっとまっててね、手帳取ってくる
アルベルトが手帳を持って戻ってきた
なんか手帳じっと見てる。

どこに泊まるの?

んーとっ!確か…メールには…

メール見てもいい?

うん。仕事の内容は書いてないからいいよ

ここに泊まらないといけないの?

わかんない。なんで?

僕は20時位ならそちらに着くかな
一緒に泊まろう

へ?仕事は?え、でも

片付けてくるよ。

ひよこちゃん、僕ら婚約してるんだよ?
出張先にパートナー連れって何も問題じゃないんだよ?仕事先に顔出すわけじゃないから安心して。

婚約してたっけ?とか一瞬ハテナマークが頭をよぎったのは超秘密

でもアルベルトはお見通しらしく

うん、まだ自覚してないっぽいねえ。と笑ってた。

僕が泊まるとこ手配しても構わない?

あ、うん。

来てくれるの?

もちろん。僕が一緒にいたいから

あんなに忙しいのに。負担にならないような言い回しをして。

ひよこちゃんとジュネーブで過ごせるんだね。
楽しみだな。

完敗。

明後日はすぐやってきて、仕事は百点とは言えないけどギリギリセーフて所だろうか。


慣れない仕事で頭がクタクタになり、仕事が終わったその足で目に入ったカフェに入って甘ーいザッハトルテを食べていたら仕事中は必死だったのでそこまで頭が働かなかったけれど、ビジネス英語やフランス語はまだまだ使いこなせなくてたどたどしくならなかっただろうかと
今になって波が押し寄せる。

メールが来ていた。予定していたTGVよりひとつ早いのに乗れたからもうすぐ着くよ。

へ。じゃあもう着いてるてことじゃない?

今どこ?

えっと。お店のQRコードをスキャンして送ると、近いからそっちに行くとすぐに返事が来た。

10分しない内にアルベルトは来た。
ニコニコと笑ってひよこちゃん。て声をかけられたら泣きそうになった。

頑張ったね。

何も言ってないのに。全部わかっちゃうのかな?

それ美味しい?

味わかんない。劇的に甘い事だけはわかる。

緊張してたみたいだね。

そうだね

行こうか。

泊まる所は広くて落ち着いた部屋で
すぐにでも寝たい位だった。

下で食事する?

わがまま言ってもいい?

ああ、ルームサービスがいいんだね。ここにメニューがあるよ

完全に把握されてた
もうなんかわたし無駄な抵抗をしてる。それを最近ありありと感じる。流れに任せてもいいのかもしれない。

どうしてわたしにここまでしてくれるの?

してくれるのじゃなくて、したいからだよ。

はあ、ほんとわたし無駄な抵抗ずっとしてたんだ。なんでそんな事してたんだろう。



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