見出し画像

ひよこ日記、ロンドン、タウンハウス⑧ 執務室

マギーさんに選んでもらった服を着て、メイクを直してまだ時間に余裕があるので部屋でお茶を飲みながら宿題をしていた。

そういえばフレッドは今何してるんだろう?ロンドンになんの用事があってかえって来たんだろ?

そのまま疑問をマギーさんにしてみる
フレッドはいま何してるんですか?

執務室でトマスと仕事をしています。

家に執務室があるの?!

ございます。

この家のことはまだよく知らない。居間と自分の部屋とダイニングくらいしか用事がないし、他人の家を探検するのも失礼かなとウズウズする気持ちを抑えていたのだから。

仕事中のフレッドを覗きにいってもいいかしら?

…まあ、そうですね。よろしいのではないかと。

マギーさんに案内してもらい、その執務室とやらに案内してもらった。

わたしの部屋以外は19世紀にタイムトリップしたのかな?というくらいに重厚な家具と絵画と
歴史の本で見たことあります。的な色んなものが溢れていた。廊下のものすごく大きな花瓶に百合や薔薇が活けられ
またこれがさらになんというか上流階級感を引き上げていた。

ひよこさまがお越しです。入室の許可を。

入れ。フレッドの声がする。

部屋に入るとクラっときた。さらに異空間な感覚がしてくる。

大きなマホガニーの机に羽ペン?今どき羽ペン?でサラサラ書類にサインしているフレッドはこちらを見ようともせずに、トマス、案内してやれ。と言った。

どうぞこちらへ。ソファーに案内されぽすんと座る。部屋は薄暗くそして圧迫感があった。

では私はこれで。
さっさとマギーさんは退室した。

特に理由ないのに来る部屋じゃなかったなあ。
見ただけで満足したので帰ろうかなと思ったら

フレッドがお前、何しにきたんだ?と仕事モードな声で話しかけてきた。

はいー、そうですねー。ではごきげんよう。

トマスなんか出してやれ

はい。

何しに来たんだ?
なかなかキツめなセリフだと思うんだけどなあ。そんなことは口には出さないけれども。

トマスさんがお茶を出してくれた。とにかくこの家にいるとやたらめったらお茶をだされるのでお茶でお腹が満腹になってしまいそうだ。
美味しいから飲むけどさ。

お茶を飲みながらすることがなくてぼーっとしているとフレッドがいきなり笑いだした。

??

この家になかなか馴染んでるじゃないか。

そんなことは

いやあるね。な、トマス。

そうでございますね。ひよこさまは馴染んでおられますね。

そうですかね?

庭で口論する位には馴染んでるよな。

確かに

見てたの?

いえ、おそらくそうであろうと

フハハハハ

ナイショにしてください!

もちろんでございますとも。

トマスこれだけか?

後はお戻りになられてからで

後は何があるんだ?

わたし席を外しますから

いろ。

え、でも。

いいんだ。そこにいろ

お邪魔みたいだから

なら最初から来るな。

げーっ、やっぱ言い方キツイ。

ふてくされるな。顔にもろだしじゃないか

言い方!さっきいったばっかりじゃない!

お前これに目くじら立ててたらこの先やってけないぞ?

…どうして?

海千山千の奴ら相手に渡りあうのが広報だろうが。…おぼえとけ。マナーは自分を護る盾にも切っ先を向ける剣にもなる。もちろん和平を保つ道具でもある

ふうん…

要は使い方だ。知らないじゃ済まされない。

それはわかるわよ。

いい加減腹括れ。

わかってるわよ。

いーやわかってない。

お前が守られるだけで満足するような奴じゃないこと位こっちはお見通しだ。オフは死ぬほど甘やかされてりゃいいさ。だがな、オンは別だ。自覚がないのも甚だしい。

俺やアルベルトを護る強さがほしいくせに。
なんだ口だけかよ。

ケンカ売ってんの?

いーや。誰も言わない事をわざわざ言ってやっただけだ。俺だから言える。

なんなのよ、あー言えばこうで嫌味ったらしさが倍増してるじゃない。

おまえのためだ

大きなお世話よ

その気の強さを別の方向でつかえ

望むところよ。あとから跪かせてやる。

トマスさんが笑いをこらえてるのか肩が震えている。

いや、実にいい光景です。

何がだよ?

いえ、やはりひよこさまじゃないとフレデリック様の相手は務まりません。ひよこさまが采配を振るうのを楽しみにしております。


…や、そんな、大役

俺がなんかあったらお前が引き継ぐんだ。

なんかあったら困るんですけど。

なんかなくても共同戦線張るんだ。
背中を預けられるパートナーに一日でも早くなれ。

へ?

車が到着した音がする。

着いたみたいだな。行くとするか。
トマスこのまま置いといてくれ。

ふと書類箱見ると山のように書類が入ってた。

なにこれ、こんなあるの?

ああ

休む暇ないじゃない!

まあ

息つまらない?

そういうもんだ

どうにかならないの?

じゃぁお前手伝え。

わたし、なにも知らないから

覚えりゃいいだろ?

そりゃあそうだけど…

お前に任せて良さそうなやつ全部回すから

は?わたし研修で手一杯なんだけど?

月一でここに来い。で、覚えろ。

はい?

おい、行くぞ。待たせるな

いやいやいや、ちょっとちょっと

釈然としないままバリっとおめかししてきたカイとギヨームと車に乗り込み、レストランに向かった。

俺らそれっぽく見える?
何そのそれっぽいて。

いいとこの坊ちゃん系?

ほんまもんのいいとこの坊ちゃんが何いってんの

ひよはあれだな。スイスに行っただけあるな

ん?

弁えてる

ありがと!なにも出ないよ?

なんか奢ってくれるかなとか期待したぜ

ひよ?

ん?

おまえ、立派になれよ

なにそれ

親友の願いだよ
あんたもね。

まあね。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?