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ゼロから始める、BtoBサービスの営業セミナーのつくりかた ~①セミナー設計編~

はじめに

BtoBサービスのマーケティング活動のうち、営業セミナーを初めて任された…という方を対象に書いています。セミナーをやることになったが、何から手をつければいいのか分からない方へ、これまで気づいた知見を共有できれば幸いです。主にマーケティングやセミナーを初めてやる方にとって、価値のある内容になると思います。

自己紹介

消費財メーカーでBtoCマーケティングを5年、その後ITスタートアップのABEJAにてBtoBマーケティングを3年ほど担当しています。特に後者では「AI」という分かりにくいもの、形のないものを売ることが多かったので、セミナーという施策は大いに効果的でした。自分なりに試行錯誤したり、顧問の方々のアドバイスや他社セミナー等を真似たりすることで、内容や運用をブラッシュアップしていったので、その記録をまとめます。

0. 営業セミナーって?

サービスを売ることを目的としたセミナーです。通常、何かしらの知見や知識を共有することを目的としたセミナーが多いですが、案件獲得を目的としたセミナー開催なので、参加者が「買う」というアクションへつなげるためのセミナー設計をする必要があります。

実際に導入して使ってもらっている顧客に登壇してもらう事例セミナーや、他社との共催にて開催する共催セミナーなどもありますが、今回は自社単独での開催、登壇者も自社社員でやる、というセミナーという形に絞ります。社内調整だけで出来るので、ものすごく開催が楽だからです。まずは自社完結型セミナーを開いて、軌道に乗ったら外部ゲストをお招きしましょう。

1.目標を決める

では具体的にセミナーを開催しましょう…となったら何をすべきか。
営業セミナーを企画する際、当然ながら「営業」がつくわけなので、「売りにつながる」ことが重要です。なので、まずは参加者数商談の目標数を立てましょう。提案数や受注数なども目標に設定できると思いますが、営業側の変数も多く、マーケティングだけの頑張りでどうにかなるものでもありません。まずはセミナーで自社サービスに興味を持ってもらい、訪問に来てもよいよ、と言ってくれるお客様の数を目標に立てましょう。

セミナー開催が初めて…ということであれば、まずは自社オフィスで一番小奇麗な部屋を抑えて、3-4名程度から開催で十分だと思います。まずはやってみて反応を見てみる…という感じで進めればよいかと。


2.テーマを設計する

セミナーを企画するうえで一番重要なのが、このフェーズ。何について語るセミナーにするのか。このテーマ設計によって、たとえ同じ顧客リストにセミナー案内を送ったとしても、人数や参加者層、業種や悩みが大きく変わります。

このテーマ設計の段階で、顧客が関心を寄せてくれそうなテーマで企画できれば、あとは集客が簡単に行えますし、商談獲得にもつながりやすいです。
一方ここでの工数をケチって、適当にそれっぽい文言を並べたセミナーにすると、集客で地獄を見ることになりますし、参加して欲しい層に来てもらえない。気がつけば申込者は同業者しかいなかった…なんてことも十分にあり得ます。ここが頭の使いどころなので、テーマ設計に時間を使いましょう。

「とはいえ顧客が興味を持ちそうなテーマなんて、簡単に設定できない…」
そうなんですよね。私自身も結構、毎回頭を悩ませるポイントです。
去年はすごく旬なトピックだったけど、今年は意外と伸び悩む…そんなテーマも結構あるので、結果、毎度頭を捻る必要があったりします。個人的なメソッドとしては以下の方法を使ったりしています。

① 顧客が見そうな業界Webメディアを眺める
メディアの見出しって、結構セミナーのテーマの宝庫だったりします。
「特定の業界の方々が、最近何に興味があるのか?」
「最近の旬なトピックは何か?」
このあたりをメディアを眺めながら考えて、ワード単位でメモすることが多いです。

②ターゲット顧客のIR資料を見る
IR資料も良いネタ元で、いま何を課題に感じているのか?を1ページくらい掛けて書いてくれています。この内容は、今期絶対に解決しないとヤバい問題という形で現場レベルに降りてるはずなので、参加する必然性が出てくるはず。ここで得た知見も、ワード単位でメモします。

③自社の顧客の声を聴く
なぜ自社サービスを導入したのか…言い換えると、自社サービスで何を課題を解決しようとしたのか。自社の顧客は、最近何を課題に感じているのか。このあたりも良いヒントです。営業やカスタマーサクセスチームから、お客様のお悩みを聞きましょう。

①~③のリサーチを通して、キーワード単位でノートにメモを乱雑に書いていきましょう。2ページくらい埋めると、何となく「このあたり面白そう」とワードが浮かんでくると思います。

3.告知文を作る 

セミナーのテーマが大枠決まったら、集客において最も大切な告知文の作成です。この文言の良し悪しによって、セミナーの成功可否が決まります。気合を入れて書きましょう。
この告知文の作成は2.テーマ設計と同様に時間をとるべきポイントだと思っていて、テーマ設計を正しく伝えることが最優先ではありますが、加えてシズル感のある文章を作る必要があります。シズル感とはここでは「このセミナー…何かすごそう」「とりあえず行っておいた方がいいかも」と思わせるような修飾語のことです。たとえば「xxxの必勝法」とか「xxxの実践術」とかです。
このあたりのシズル感のあるワードは流行があり、ちょっと昔で言うと「×××を実践するためのxx個の法則」という表現は流行ってましたよね。こういうワードを如何に散りばめることが出来るかが、集客の成否に大きく影響します。ターゲット層に刺さりそうなシズルワードを集めると良いです。

① ターゲットは誰なのかを設定する
例えば「データ分析」と一口に言っても、ターゲット層は大きく異なります。データ分析はおろかExcelを触るのも初めてな層をターゲットにする場合と、ゴリゴリSQL書いてる層をターゲットにする場合では、大きく内容が異なります。
営業セミナーを初めて開催する場合は、きっと初心者層を対象とすることが多いはず。まずは初心者向けのセミナーであることを明言しましょう。でないと思わぬ大物、たとえば上場企業の本部長クラスにご参加いただくことになったが、内容に全くご満足いただけなく、むしろマイナス評価につながる…なんて可能性も。初心者向け・経験者向け、ビジネス向け・エンジニア向けなど、誰向けのセミナーなのかをまずは書きましょう。
とりあえず全方位向けで!みたいなケースもあると思いますが、往々にして全員に向けて書いたメッセージは全員に刺さらない、なんてこともあります。ターゲットは誰なのかのセグメント化をしましょう。具体的であればあるほど良いと思います。
…とは言え、セグメント化すればするほど、集客が難しくなる問題もあります。自社がリーチできる総量とセグメントの狭さのバランスをとるのが必要になると思います。集客施策としてリーチできる総量と相談だと思います。

②セミナーで得られることを明確にする
セミナーのベネフィット、便益の定義ですね。ここも非常に重要だと思います。このセミナーを受けることで、何を得ることが出来るのか。何を持ち帰ってほしいのか。ポイントはたくさんあると思うのですが、箇条書きにしてたくさん洗い出し、本当に持って帰って欲しいことを1行に濃縮する作業をするといいと思います。例えば私の場合だと以下になります。
・顧客の事例を知ることが出来る
・AIプロジェクトを実施するうえで、抑えておくべきポイントを理解することが出来る
・失敗しやすいポイントを事前に知ることが出来る

正しく1行に濃縮できていれば、顧客にとって最高に刺さるメッセージになっているはずです。その一言を告知文に盛り込みましょう。

③1~2を具体化する
①・②を文章化すると「xxな貴方に、xxxxを提供するセミナーです」という文章ができます。告知文を魅力的にするために、それぞれを具体化しましょう。
1)ターゲットの具体化:誰を対象にしているのかはもちろんのこと、具体的にどんなことに悩んでいるかを明確化しましょう。彼らはどんなことに悩んでいるのか。どんな課題を解決したいと思っているのか。本当に自社顧客が悩んでいた悩みを当てはめるのが生々しくてベストだと思います。
私はセミナー設計として

「xxxxxだけど、xxxxしたいと思っている…」
…こんなお悩みはありませんか?

というような形で、共感できそうな悩みを冒頭に持ってくることで、ターゲット層を明確にするようにしています。割と定番な設計で、考えやすいんじゃないかなーと。

2)得られることの具体化
ここでは実際にセミナーでお伝えできることを出来る限り具体的にお伝えしましょう。
・お客様の事例を伝えることが出来ます
 >具体的にどんな事例?どんな顧客?結果まで数値で教えてくれる?プロセスを事細かに説明してくれる?などなど
・弊社の知見をお伝えします
>どんな知見?失敗しやすいポイント?ベンダー側の視点?などなど。このあたりの棚卸は、実際に顧客と向き合う機会の多い営業や、顧客の成功にコミットしているカスタマーサクセス・プロジェクトマネジメントのチームに「普段どんなこと聞かれる?」というのをヒアリングしてください。
基本的にセミナーの価値とは、1to1の営業活動を、1toNで効率化することだと思っていて、営業が初回訪問で提供している価値をコンテンツ化するのだと思えばそんなにズレはないはず。

3) シズル感のある文章にする
1) 2)が出来れば、セミナー告知文の大枠ができるはず。あとはこの文章を如何に肉付けをして、魅力的な文章に見せるかが重要です。
対象の業界においてシズル感の出るワーディングって一定の法則があるので、たとえば弊社でいうと「xxxの必勝法」「xxx、実践編」「最前線」「次世代のxxx」などのワードがシズル感あるなーと思っています。いまどんなワードが流行っているのか、メディアや他社のセミナー告知文を見て、自分がぐっときたシズル感のあるワード収集を余裕があるときは行います。個人的にはNewspicksのワーディングが好み。
ネタ帳なんかも作っておくと便利。私は個人的にぐっときたセミナーワード一覧表を作ってまして、これを見ながらセミナー告知文を構築することもしばしば。これがあると、セミナー告知文を作るときの時間短縮になります。「このセミナー行きたいな!」と思ったセミナーの応募ページを保存しておくと、セミナー文章設計の作業が楽です。

4. 集客をする

上記でセミナー告知文が出来たら、いよいよ集客です。集客開始は35日前が一番有効だそう。このタイミングで告知開始が出来るように動きましょう。
普段行なっている集客方法をまとめます。

1) 自社サイト
まずは基本的にここから。資料ダウンロードや問い合わせといったコンバージョンポイントは一般的に置いていると思うのですが、それに加えて「資料ダウンロードよりは詳しい情報が欲しいが、1対1の商談やるほどではない…」という層が結構いらっしゃいます。こうした方々にセミナーは刺さります。1対1ではなく、1対Nという気軽感。売り込みをされすぎない形式(まあ最終的にしてるんですが…)。自社に小さな興味を持ってくださったお客様にとって、自社主催のセミナーは気軽に来やすい存在だと思います。
また一回目で思ったような顧客が来なくとも、定期的な接点を持てる場として定例セミナーがあることは有効です。同じ告知文・内容で構わないので、数カ月は月1回~2回程度のセミナー開催をすると良いです。
このセミナーが常にある状態が保たれると、「あのセミナーに参加すれば、とりあえず相談することができる」「自分は担当ではないけれど、該当チームに気軽に紹介できる」となるためです。
同業や協業先など、顧客がいないセミナー開催ばかりになってもめげる必要はありません。粛々と開催しましょう。

2) インサイドセールスから・営業から
もしインサイドセールス機能を立ち上げているのであれば、
一度接点を持ったものの「商談するほど温度感が高まってるわけではないけれど、今後接点を持ちたい…」という顧客層にセミナーへのご参加を促すのが得策です。
また商談に入った営業でも、「サービス導入を検討するうえで他部門にもサービスを理解してほしい」「今すぐは導入しないけど今後検討していきたい」といった場合、セミナーが大いに役立つケースもあります。場合によってはセミナーのコンテンツを持って、客先で個社別セミナーを開催することも。
いずれにせよ「うちはこんなコンテンツを持っています!」ということをアピールすることは有効だと思っています。副次的な効果ですが「セミナーの内容を自社勉強会でもやって欲しい」なんてご依頼をいただくこともチラホラ。

3) 顧客リストへの配信
資料ダウンロードなど、メール配信許可をいただいているリストがあれば、初回のセミナー開催のご案内をお送りすると良いと思います。
ある程度サービス導入を検討されているようであれば、たとえ今すぐの発注でなくても、どんなサービスか一通り把握しておきたい…というケースはよくあります。
そして「まさに今探していた!」というお客様もいらっしゃいます。自社へ問い合わせが来る前に60%弱の購買意思決定がなされている…というリサーチがあるとおり、能動的なネタだしが重要です。
まずはこんなセミナーがありますよ、という点を訴求しましょう。

5.終わりに

ここまで来れば、ある程度の参加者が集まったセミナー開催が出来るのではないでしょうか。もし集客がし切れていなくても、営業セミナーは常に門戸が開かれていることに意味があると思っています。5回目くらいまでは成果が得られなくても、黙って淡々と開催することをお勧めします。
またセミナーに参加される方は、認知以上・商談未満な方が多いです。完全に温まり切ってる方は、問い合わせにダイレクトに連絡が来るので。
今回は勉強としてのセミナー参加であっても、早ければ半年後、遅ければ数年後に案件化するなんてザラです。特に自社リソースだけで開催する営業セミナーは、コストもそんなに掛からないわけですし、まずやってみれば良いと思います!

ちなみに登壇者について、営業に依頼したくなると思うのですが、おススメとしてはマーケ担当者が自ら登壇するのがおススメです。
登壇内容を自分で調整・ブラッシュアップできるという点。そして顧客に向けて自分で作ったプレゼンを話していると、どんなコンテンツが刺さるのか・刺さらないのかが明確に分かります。一般的な概論を話していると寝ている人もちらほら見えたりするが、事例の話になると食い入るように見ている…なんてことも。特にマーケティングは顧客と触れ合う機会を能動的に作る必要があるので、セミナーは絶好の機会です。
自分が作ったマーケティングストーリーに対しての顧客反応を、ぜひ直接見てみてください!

本丸であるセミナーコンテンツの作り方、セミナー当日のオペレーション、フォローアップについてはまた別途Noteを作ろうと思います!

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