『人を動かす』の呪い

有名な自己啓発本にデール・カーネギーの『人を動かす』という本がある。その本の最も重要な主張の一つが「相手が悪いと思っても指摘しないこと」である。どんな人間であれ自分が悪いなんて思わないから指摘したところで無駄である、というのが根拠だ。

最初に『人を動かす』を読んだときから指摘しないという方針には納得したし、納得し続けているからこそ読んでから5年以上経っている今まで指摘しないという方針は守り続けている。

最近久しぶりにチームを率いるポジションにつくことになった。性格が真っ直ぐで人の悪口も言わずおまけに頭の回転も早くて主体性もある、みたいな神みたいな子もいれば当然不満多くて性格悪い奴もいて。性格悪い奴には小言のひとことふたこと言ってやりたくなる。
「性格悪いぞ」
「そんな態度してたら空気悪くなるでしょ?いい歳なんだからわかってくれよそんなことくらい。」
言いたい。けど言えない。なぜなら『人を動かす』を読んじゃってるから。言ったところで意味ないことを知っちゃっているから。

人を動かすには、チームを円滑に運営するには、伝えるべきことの裏に膨大な量の言うべきでないことがあるのかもしれない。世のリーダーは歯を軋ませながらも、喉元まで来ている言うべきでない小言を飲み込んでいるのかもしれない。
きっとこれからも小言は言わないれど、飲み込んだ小言たちで消化不良が起きそうな不健康の吉兆を感じる。

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