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福澤諭吉×TK工房 仮想対談⑥政治に文句言うてる場合ちゃう

TK「学問せんくても生きていけるんですよね」

先生「そら生きるだけなら生きていけるわな」

TK「じゃあ、学問せんと生きるとどういうことが起こるんでしょうか?」


世の中で学問をやってへん国民ほど哀れで憎むべきものはないねんで。知恵がないのが行き過ぎると恥を知らんようになる。自分の無知ゆえに貧乏になって、経済的に追い込まれてんのに、自分の身を反省もせんと、金持ちを恨んだり、ひどくなると、集団で乱暴するていうこともあるんや。これは恥知らずやし、法を恐れへん行為や。世の中の法律のおかげで、身の安全を保ってもらって社会生活をしてるにも関わらず、依存するところは依存しときながら、都合が悪くなったら自分の私利私欲のために法律を破ってまうやつがおる。矛盾してんちゃうか?
西洋のことわざにある「愚かな民の上には厳しい政府がある」ていうのは、このことや。これは政府が厳しいというより、国民がアホやから、自分で招いた結果やねん。アホな国民の上に厳しい政府があるんやったら、良い国民の上には良い政府があるていう理屈になる。今この日本においてもこのレベルの国民やから、このレベルの政府なんや。
 今の世の中に生まれて、国をよくしようと思うやつは何もそれほど考え込む必要はない。大事なことは、人として当然の感情に基づいて自分の行動を正しくして、熱心に勉強して、広く知識を得て、それぞれの社会的役割にふさわしい知識や人間性を備えることや。そうすれば、政府も政治をしやすくなって、国民は苦しむことがなくなって、お互いに責任を果たすことができる。そうやって国の平和と安定を守ることが大切やねん。私が学門すすめてる理由も、単純にこれやねん。

TK「先生、大変です」

先生「何や?」

TK「これ、そのまんま今の日本で起こってます」

先生「ほんまに大変やんけ(笑)」

TK「先生の時代より、圧倒的に学問をする環境は日本全国隅々まで行き渡ってるんですけど、おそらく当初は有難がられた学問も、それが当たり前の権利になってきて、世の中も発展し、治安が良くなり、インフラも整備されて、便利になってくると、学問が苦になってくるんですよ。なんで学問なんてせなかんねん?て。」

先生「一つ訂正するとすると、当初も学問は有難がられたわけちゃうぞ。だから私がこの本を書いたくらいや。」

TK「そうでしたね。失礼しました。」

先生「私の時代ですら、国の恩恵っていうのは大変なものやったけど、君の時代ならもっと凄いことになってるんやろな」

TK「めちゃくちゃ便利ですよ。例を挙げればキリがないですけど。例えば水なんかは、全国どこでも水道が通っていて、蛇口をひねれば、飲める水が出ます」

先生「それ凄いな。ほんなら井戸なんてもんはなくなってんねやろなぁ」

TK「水でいうと、アフリカなんかの発展途上国では、めちゃくちゃ重要なポイントになってくるんですよ。生活水なんかは数重キロも離れた川に毎日取りにいかないとダメなんです。しかも、それを取りに行くのはだいたい女性の仕事。そうすると毎日朝から晩まで水を運ぶだけで終わってしまう彼女達にとって、学問に時間割くなんてことは、どれだけ望んでも無理なんです。学問が、その状況を解決する方法だとわかっていても」

先生「やっぱりアフリカなんかは、まだそういう状況なんやな」

TK「我が国からも、こういう状況を解決したいと、国際協力に従事する人達がいることは誇らしいことです。『アフリカに綺麗な水を』みたいなことはよく言われてるんで、だいたいの日本人も知っているんですけど、そのプロジェクトがこういう問題解決をして、その国に学問を振興し、自立を促すプロジェクトだとまで知ってる日本人は少ないです。」

先生「そうやって自分たちの生活を一変させるような力が学問にあることを体現した発展途上国の人間は、より一層励むやろな。」

TK「やはり、今の恵まれた日本にいるとなかなかこういうのってわからない。だから僕は、もっと海外に触れることを勧めたいんですよね。もちろんバカンスとして、海外旅行を楽しんでほしい。でも、その中で1分でも良いので、こういう側面にも注目してほしいなと。」

次回に続く
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