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福澤諭吉×TK工房 仮想対談⑬国防について

TK「先生、過去12回、一カ月以上続いた対談でしたが、今回が最後になります。」

先生「なんやかんやあっという間やったな」

TK「最後にふさわしいかどうかわかりませんが、シリアスな話題をとりあげましょう」

残念ながら、この国の国民は主人と客の二種類に分かれてんねん。千人の智者は主人になって好きなようにこの国を支配してるし、その他のやつらは全員何も知らんお客さんやねん。お客さんはお客さんやから、もちろん特に何も心配なんかせんと主人に頼り切って、自分は責任とらんねん。国を憂うことも主人のようには、いかへんのは必然で、実によそよそしい状態になる。
 国内の事だけならまだええけど、一旦外国と戦争になった時のことを考えてみたらええ。知恵も力もない国民が自国を裏切る事は無いにしても、「わしら、お客さんやからな。命まで捨てるのは、さすがにやり過ぎやんな」とか言うて逃げてまうやつも多く出るやろ。そうなったら、この国の人口は名目上、百万人ていうても、国を守らなあかんて言う段階ではその人数はめっちゃ少なくて、とても一国の独立など保たれへん。
イギリス人はイギリスを自分の国や思て、日本人は日本を自分の国やと思う。自分の国の土地は他国のもんじゃなくて、自分の国の人間のもんなんやから、自分の国は自分の家やと思うようにして、国のためには財産だけじゃなくて、命を投げ出しても惜しむに足らん。これがつまり「報国の大義」やねん。
 もちろん、国家の政治を運営するのは政府で、その支配を受けるのは国民やねんけど、これはただ便宜的にそれぞれの持ち場を分けてるだけの話。一国全体の名目に関わることになったら、国民が国を政府だけに任せて、これを側で見物してるだけ、て言うんやったら道理が通らへん。

TK「この問題も、まさに今、日本が揺れてるんです。」

先生「おいおい、君の時代でもまだ揺れてんのかいな。」

TK「いや、実は先生の時代と僕の時代の間に、2回も世界大戦があったんです。そして、日本は二回目にコテンパンにやられました。何百万人と死者を出した。もちろん、日本が攻めたことで、同数かそれ以上の死者も出してしまってます。そんなことがあってから、日本は占領国の指示のもと、永久に戦争および武力行使を放棄する憲法を作り、正式な軍隊を持っていないんですよ。」

先生「え、それでどうやって国防できるんや?」

TK「コテンパンにやられた後、アメリカに占領されて、アメリカの属国的な扱いになったんです。つまり、国はアメリカが守ってやるから、日本人は国の復興に専念しなさいと」

先生「植民地になってしもたんか・・・」

TK「植民地・・・でも、ないんですけど、まぁ、そういった理由で国防は今までずっとアメリカ任せなんです」

先生「それで独立した国って言えるんか?」

TK「まぁ、見た目は立派に独立してるし、世界でも今影響力のある国であることは間違いないですよ」

先生「なんか想像つかんなぁ」

TK「で、ここで大事なポイントがあるんです。日本は『戦争と武力行使を永久に放棄する』と明示した憲法を作ったと言いましたが、この憲法のおかげで国防が出来ていると考えている人がいるんです」

先生「え?どういうこと?」

TK「要は、武力も持たずに戦争も放棄している、こんな平和な国を一方的に攻めるような国があるはずない、という性善説に立った考えかと」

先生「それは非常に立派な考えやけど、甘くないか?」

TK「そして『戦争はあかん、戦争ができる体制を整えることすらあかん!例えそれが、日本を守るためであっても!』という人たちと、『いやいや自分たちで日本を守らな誰が守るねん!それでなくても今、世界大戦でも起きそうな空気になってきてるのに!』ていう人たちが言い争ってるんです」

先生「まぁ、そやろな。ほんで、君はどう思うんや。」

TK「これは僕自身どうしたら良いかという明確な答えは出てないんです。戦争って、本当に二度と起こしてはならないと思っているので、前者の気持ちは非常にわかるんです。でも、その思いと、その取ってる平和憲法という手段に本当に整合性があるのかは甚だ疑問に感じてます。だからといって、戦争仕掛けられた時にいつでも迎撃できる体制にしておくって、それはそれで非常に危険な状態だとも思ってるんです。」

先生「何で?」

TK「今までの戦争って、どれも何かの勘違いとかアクシデントが引き金になって起こってて、まさか誰も起きるとは思ってなかったところに起きてるんですよね。現場の暴走で。戦争になるなるって言うてるけど、普通に考えて戦争やるメリットないやろって、知識階層なんかが思っている時が一番やばい」

先生「その言い方聞いてると、具体的にそういう例があったんやな?」

TK「今の日本が置かれてる状況と似てるかなって言うのは、湾岸戦争時のイラクですかね。先生の時代からはずいぶん後の話ですけど、イラクのフセイン政権はアメリカと蜜月だったんですよ。非常に仲が良かった。でも、ある時、アメリカにとって価値がなくなったんです。で、アメリカはイラクの隣国のクウェートをそそのかして、イラクを挑発させた。クウェートはアメリカがバックについたもんだから、調子に乗って、イラク国境にある油田の盗掘を始めたんです。イラクは当然怒って、国境に軍隊を派遣し、臨戦態勢で盗掘をやめるように再三警告してたんですが、正直、当時のイラクは国がガタガタだったので戦争したくなかった。紛争解決のパフォーマンスのつもりだったんです。でも、現場のイラク軍が我慢しきれずにクウェートに侵攻しちゃったんです。これが湾岸戦争の引き金になった。これに大喜びして、一儲けしたのはアメリカです。」

先生「日本の状況が似てるっていうのは?今そんなことになってんのか?」

TK「中国や韓国による、度重なる領海侵犯や、北朝鮮の暴走を前に、日本がイラクのように、武装して臨戦態勢で警告すべきかどうかという点です。

もし現場が暴走して、アジアで戦争になれば、喜んで金もうけするのはまたしてもアメリカです。

かといって、じゃあ武装しないで、平和主義を貫いて、話し合いだけで本当に戦争を避けれるのか、近隣諸国は領海侵犯を辞めるのかと言われると、それも無理だろうなと思ってます。そうこうしてる間にも、日本の海洋資源はどんどん盗まれてますし。」

先生「まぁ、君らの時代やねんから、君らが必死に考えたらええと思うけど、考えてるフリして、体のいい先送りはしたらあかんで。だからと言って、なんとなくで決めへんようにも気をつけや。ちゃんと議論して決めたらええ。」

TK「はい」

先生「私は自分の時代に、できることを徹底してやった。何度も議論もした。後世に少しでも役立てばと本も記した。今まさに君らの番や。君らがやらんかったら、誰もやらんぞ」


TK「先生、それでは名残惜しいですが、対談は以上となります。ありがとうございました」


最後までご覧いただいた皆様、ありがとうございました。

今回取り上げた内容以外にも、まだまだいろんなことが書いてありますので

是非、「学問しぃや」をお読みください!


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