経営の技法 #32
4-5 PDCAおじさん
PDCAおじさんは、PDCAの精神を論じ、あるべき組織を論じるものの、その実現のために何も行動せず、実際に問題が発生しても組織論や他人の行動の批判だけで、何も対応できない人、あるいは、現場感覚からかけ離れた頭でっかちなプロセスを構築し、それを現場に押し付けようとする人をいう。
<解説>
1.概要
ここでは、以下のような解説がされています。
第1に、PDCAの意味を、PDSCと対比させて説明しています。
第2に、PDCAの実践例として、平昌オリンピックでの羽生結弦選手の対応を分析しています。
第3に、「PDCAおじさん」が、経営学的に見て有害であることを説明しています。
第4に、「PDCAおじさん」が、内部統制(下の正三角形)の観点から見て有害であることを説明しています。
第5に、「PDCAおじさん」が、過剰コンプライアンス状態を作り出しかねないことを分析し、逆に内部統制(下の正三角形)にとってあるべき状態を検討しています。
2.「PDCAおじさん」の着想
これは、野村修也先生にいただいた着想です。
すなわち、本書の企画段階から何度か打ち合わせをする中で、「会社あるある」の1つとしてPDCAおじさんがいる、という話をいただきました。さらに、PDCAがうまく機能している具体例として、羽生結弦選手のオリンピックでの演技がある、という話で盛り上がりました。
そこで、内部統制(下の正三角形)と経営学の勉強をしている私の立場から、これを分析してみることになったのです。
3.おわりに
本来、PDCAには、トップダウンが中心である欧米の企業で、現場の状況を確認するツールとしての役割がありました。ボトムアップ型の内部統制モデルが多い日本の企業では、生来的にそのような機能が内在しているので、PDCAは、これを補完し、強化するものと位置付けられるはずです。
ところが、PDCAおじさんは、泥臭いことに手を突っ込まず、綺麗事だけで自分の存在価値を高めるツールとしてPDCAを利用します。ボトムアップ型の内部統制モデルの強みを、わざわざ殺すためにPDCAを使っているのです。
自分の会社で、PDCAおじさんが幅を利かせていないか、確認しましょう。
※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月
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