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松下幸之助と『経営の技法』#43

3/29の金言
 職場を明るくするのは人間関係であり、それはものの言い方ひとつで変わってしまう。

3/29の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 ものの言い方一つによって、受ける方に非常に変化がある。刺激があったり、そうでない場合があったりする。
 したがって、人を使う人や指導者は、職場の雰囲気を明るくするために、施設を充実させるだけでなく、人間関係をよくするための言葉の持っていき方が、大切。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 松下幸之助氏の話には、いくつかのポイントが含まれます。①職場の雰囲気は明るい方が良い。②そのためには、施設を充実させると良い。③さらに、人間関係が良い方が良い。④そのためには、言葉を上手に使う必要がある。
 ここでは、このうち、①③について検討しましょう。
 すなわち、明るい職場は社員同士のコミュニケーションがうまくいっている職場であり、そのことが、経営の観点から見て有益であるだけでなく、リスク管理上も有益なのです。
 このうち経営の観点について見ると、氏が繰り返し、新人こそ思い切った意見を言うように促していることなどから明らかなとおり、ビジネスのチャンスは、新人も含めた社員全員で探すべきなのです。このことは、例えば『ゼミナール 経営学入門』(加護野・伊丹)の中で、会社経営において「場」が重要である、としてかなりのページを割いて研究していることからも明らかなように、従業員の力を引き出すために、職場でのコミュニケーションをよくすることが、経営上重要なのです。
 さらに、リスク管理の面でも、特にリスクセンサー機能について顕著ですが、会社を人体に例えた場合、体全体に張り巡らされた神経のように、全従業員がリスクに気づくべきです。しかも、リスクに気づいてもそれが伝わらなければ意味がありませんから、細かな情報でも現場から上がってくる状況が必要です。そのためにも、何でも言える職場環境が、リスク管理上も必要です。
 このように、ブラック企業などと称されるような、暗くて厳しい職場は、松下幸之助氏の求める企業ではないのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 株主と経営者の関係で見た場合、株主は、経営者として職場の雰囲気作りの上手な人を選び、さらに現在の経営者に対しては、職場の雰囲気をよくするように、株主総会や(株主の代理人であるはずの)社外取締役などを通して働きかけ、チェックすることが重要となります。
 さらに、株主自身の問題もあります。
 それは、短期的な実績を求めて経営者に過度なプレッシャーをかけ、会社がブラック企業化しないようにすることです。この意味で、前日(3/28)の金言(中庸が大事)に通じるところがあります。

3.おわりに
 言葉にも気を遣うのは、業務上の指示が適切に誤解されずに行われれば十分、という、組織体系や指揮命令系統を重視するアメリカ的な経営学ではなく、「場」や従業員の「意欲」を重視する日本的な経営学の発想に近い考え方が背景にあります。無機質で、言われたことさえやれば、約束した給料がもらえる、という職場ではなく、皆で盛り上げて、同じ仲間として活動し、お金だけではない充実感を得る、という職場のイメージです。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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