松下幸之助と『経営の技法』#11

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.2/26の金言
自分の力の認識・認定を誤ると、大きな失敗につながってしまう。

2.2/26の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 すなわち、自己認識があれば、多少の失敗はあっても、大きな失敗は絶対ない。しかし、自己認識は相当難しい。
 これよりもさらに難しいのが、自分の会社の総合した力を認識すること。私の会社でも、過去に幾多の失敗を重ねた。その失敗の原因は、会社の力の認定の誤りだ。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 松下幸之助氏は、経営者自身の自己認識と、会社の自己認識を論じていますが、ここでは、会社の自己認識について、検討しましょう。経営者自身が己を知ることは、リーダーシップにとって説明するまでもなく重要なことだからです。
 この自己認識は、経営とリスク管理、両方に係る問題です。すなわち、競合他社と競争する体力(≒経営)と、リスクに気づく免疫力(≒リスク管理)について、自分の会社自身を知ることが大事、ということですから、いざというときにどれだけの競争力があるのか、という体力、冬などに風邪をひかないためにどうすれば良いのか、という免疫力を知ることを意味します。
 そうすると、特にリスクセンサー機能に関して重要な、「全従業員がリスクセンサー機能を担う」ことが、ここでも重要になってきます。従業員全員が、会社の「体力」「免疫力」に相当する能力の一部を担っていますので、その総和である会社自身の力について知るには、全従業員の担う機能を把握しなければならないからです。
 さらに重要なのは、これらの潜在的な能力を引き出すマネジメントです。
 これは、一定規模の会社になると、チームごとのマネージャーの力量になります。この点は、例えば労働訴訟でも、管理職のマネジメントが悪くてトラブルになる事例が多いこと、他方、古来より管理職のリーダーシップいかんによって組織全体の力が変わってくること、が指摘されてきたところです。
 つまり、経営者自身の力量もさることながら、会社の潜在的な能力をどこまで引き出せるのか、というチームリーダーたちのマネジメント能力についても、経営者自身が客観的に正しく把握することが要求されるのです。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 さらに、ガバナンス上のコントロールとして、株主による「適切な」コントロールも期待されるべきです。
 そこでは、上記のポイントを、株主もチェックする、ということになります。
 すなわち、①己自身のことを客観的に把握できるだけでなく、②会社組織内にも、重要なポストにはそのようなチームマネージャーを配置し、会社全体の状況を客観的に把握できるような組織作りができ、実際にそのように機能していることを、確認すべきなのです。

5.おわりに
 松下幸之助氏は、会社と自分自身の一体化が重要、と話しており(2/25)、逆に言うと、氏が経営者個人の問題として話している事柄の中にも、組織としての在り方が含まれるはずです。
 そのような観点から、特に会社の組織論として、氏の金言を分析してみました。
 どう思いますか?


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?