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松下幸之助と『経営の技法』#362

2/11 勝負の結果

~今日の勝負の結果を今日知るためにも、自分の力が今日、どれだけ伸びたか反省する。~

 実力に相当した仕事を、我々は社会に対して約束しているんだ。皆さんは会社に約束しているんだ。それを考えると、自分の実力というものがこれだけ伸びたということを、皆さんが言えるかどうか。この際ひとつ皆さんにお聞きしてみたい。
 考えてみますと、実は会社自身にも土俵があって、相撲を取っているんです。けれども、行事がいないために勝負はすぐにはわからない。しかし大きな意味での行司はやはりいるんです。それはどういうことかというと、会社は業界において、日々相撲を取っていて、2年、3年の間には、自然と業界の人が、あるいは一般の需要者が、さらには広く社会の人たちが、軍配をどっちかに上げて判定してくれる。そういうようにして勝負は決まるんです。けれどもこれは瞬間に勝負が決まる相撲のようには簡単にいかない。非常に長い時間がかかる。しかし2年なり3年たってからこっちが負けた、こっちが勝ったということがわかったのではもう遅い。ですから今日の勝負の結果は今日知りたいと私は思うのです。そのためには、皆さんが毎日、自分の力がどれだけ伸びたかということを反省してみる。皆さんの力が伸びずに会社の力が伸びるということは、あるはずがないと私は思います。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

2つの会社組織論の図

1.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 まず、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 ここでは、冒頭で、上の図の2つの三角形の概要に相当する話がされています。
 すなわち、会社経営者が(株主に対して)仕事の約束をしていること、従業員が(経営者に対して)仕事の約束をしていること、の2つが対比されてます。しかも、ここではこの2つの違いを浮き彫りにしていくのではなく、むしろ逆に、この2つの共通点がテーマになっています。
 つまり、第2段落前半部分で、経営者について当てはまる事柄、つまり経営者は市場で戦っている(競争を行っている)こと、それは非常に息が長いが、結果が出てからでは遅いこと、そのためにその結果を早く見極める必要があること、が示され、次に第2段落の最後の2文で、これがそのまま従業員にもあてはまる、という説明の方法が取られているのです。
 ここでは、第2段落前半部分の内容を理解しておきましょう。
 つまり、市場での競争の特徴です。ここで松下幸之助氏は、結果が出てからでは遅い、と言っています。商品やサービスに賭けた投資が無駄になってしまいますので、負けそうであれば傷が大きくなる前に上手に撤退する必要があります。
 けれども、息の長い商品やサービスばかりではなく、最近はサイクルがどんどん短くなり、競合する商品やサービスとの勝負の結果が2~3年待たずに出てしまうことも多くなりました。見方によっては、結果がすぐ出るのは厳しいことですが、他方で、直ぐに結果がわかれば傷も大きくならなくて済む、と言えるかもしれません。
 しかしいずれにしろ、早目に状況を見極め、的確に戦略を構築・修正していくことが経営者の役割りであることが、市場や競争に取り組むために必要なのです。

2.内部統制(下の正三角形)の問題
 次に、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでは、従業員の成長がテーマです。
 従業員自身が、自分の成長を客観的に把握し、検証しながら成長すべきことは、会社のためにも、従業員自身のためにも重要である、ということは、言うまでもなく理解できることです。
 ここでは、経営者の立場と共通する点が重要です。
 すなわち、いずれも結果が出る(例えば、こいつは使えないという評価が定まる)までに時間がかかる、という点です。しかも、最近はサイクルが短くなっている点でも同様です。さらに言えば、最近の人事考課とそのフィードバックは、処遇の決定に対する根拠としての有効性を高めるために、客観性が増し、情報としての価値も上がっています。
 このように、結果が出てしまう前に、早め早めに手を打っていく必要がある、という点で、従業員にも共通する面があるのです。

3.おわりに
 2/5の#356で検討したように、特に長期間企業に勤める形態の場合に、自分自身の能力の客観化や成長が重要になることを指摘しました。自分自身のバランスシートを意識する、という発想を紹介しましたが、今日の話は、早目に自分自身の置かれた状況や能力を認識することの重要性です。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

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