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経営の技法 #28

4-1 不祥事予防のプリンシパル
 日本取引所グループ(東証、大証など)では、不祥事対応のプリンシパルに続き、不祥事予防のプリンシパルが準備されているが、後者は、その重点をガバナンス(上の逆三角形)から内部統制(下の正三角形)に移しており、証券市場でも、内部統制が重視され始めている。

2つの会社組織論の図

<解説>
1.概要
 ここでは、以下のような解説がされています。
 第1に、日本証券取引所自主規制法人が出した「不祥事予防のプリンシパル」は、その前の「不祥事対応のプリンシパル」よりも、内部統制(下の正三角形)に相当踏み込んでいること、等を説明しています。
 第2に、「不祥事予防のプリンシパル」の概要を説明しています。
 第3に、「不祥事予防のプリンシパル」の中で指摘されている具体的な内容を、内部統制(下の正三角形)の観点から分析検討し、リスク管理は内部統制の問題であることを説明しています。
 第4に、「不祥事予防のプリンシパル」の実際の使い方を検討し、事例に応じて重点が異なること、すなわちチェックリストのように使うべきでないこと、を説明しています。
 第5に、「不祥事予防のプリンシパル」は、コンプライアンス部門やリスク管理部門の設置を求めていないことを指摘し、リスク管理は特定の部門に押しつける業務ではなく、全ての部門の業務の中に含まれるべき業務である、と説明しています。

2.不祥事予防のプリンシパルから学ぶべきこと
 本書の企画は、久保利先生の大宮ロースクールや桐蔭ロースクールでの講義に、ゲストスピーカーとして呼ばれていた中で出来上がりました。
 私は、いつも社内弁護士の実務に関する話をしていました。ノウハウ的な話ばかりでは、久保利先生は許してくれませんので、もっと社内弁護士業務の本質的な部分の話もしなければなりません。その中で、2017年秋の私の出番のときのことです。
 いつもどおり、生徒とゲストスピーカーと久保利先生の食事会が、講義の後にロースクールそばの飲み屋で開催されました。
 私はその時すでに、内部統制(下の正三角形)の重要性を体系的にまとめた書籍の執筆を考えている、そのためには経営学がポイントで、経営学の勉強もしている、と話をしました。
 久保利先生は、弁護士が会社の内部の意思決定にもっと関わらなければならないと思う、しかし、その関わり方を議論して整理できる弁護士は、今のところ他にいないから、ぜひその本を形にするように、と励ましてくれました。
 褒めてもらうと、つい調子に乗ってしまう性格が原因ですが、ふと思いつきました。
 「久保利先生、ガバナンス部分を久保利先生にお願いして、共著しませんか?」
 「面白いね、いいよ、内部統制(下の正三角形)の重要性をちゃんと説明する機会はとても重要だから。」
 ここに、別の機会に野村修也先生にも賛同してもらい、本書の企画がまとまっていったのです。

3.おわりに
 このトピックは、本書全体の企画の中で、まさに久保利先生に共著をお願いして良かった、と思われる最大のトピックとなりました。
 すなわち、証券取引所の業務に深くかかわっている久保利先生こそ、証券取引所がガバナンス(上の逆三角形)だけでなく、内部統制(下の正三角形)も重要であることを明らかにしたからです。この「不祥事予防のプリンシパル」こそ、私と久保利先生が、内部統制(下の正三角形)の重要性を説明しなければならない、と話していたことを実践しているのです。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



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