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経営組織論と『経営の技法』#234

CHAPTER 9.4 Column:プロティアン・キャリア ③自分のキャリア
 バウンダリレス・キャリアやプロティアン・キャリアは伝統的なキャリアの考え方に対して生まれたものですが、必ずしも組織内キャリアを歩むことと相反するものではありません。1つの組織でキャリアを歩むにしてもプロティアン・キャリア志向でキャリアを歩むこともありますし、専門という境界にこだわらないというようにバウンダリレス・キャリア志向を持つこともできます。
 改めてこれら新しいキャリアの見方の特徴は、自分で自分のキャリアを舵取りするという意識が明確な点です。別の言い方をすれば、自分で自分のキャリアの責任をとるという意識が明確であるともいえます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』219頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 バウンダリレス・キャリアとプロティアン・キャリアは、いずれも自分のキャリアについて自分の責任で積み上げていく点で共通しています。
 両者の違いは、プロティアン・キャリアの方が、より内的で主観的な成功を重視する、という違いが指摘されていますが、この点は、プロティアン・キャリアが2つの能力(アイデンティティとアダプタビリティ)を重視していて、自己アピールばかりでなく、特にアダプタビリティによって他社との協調が重視されているところからもうかがえるところです。
 他方、バウンダリレス・キャリアは、3つの能力(Knowing-Why、Knowing-How、Knowing-Whom)を重視していて(#229)、この能力に基づく積極的な行動の方に重点が置かれていることがわかります。
 ただ、いずれの能力も、細かく素因分解していけば様々な要素によって成り立っていますから、両者の違いは相対的です。
 内部統制の観点から、従業員の、これらのキャリア傾向を見るために、どこまで自分の責任でキャリアをとらえているのかを測定するためのテストは、様々な方法から開発されていて、バウンダリレス・キャリアやプロティアン・キャリアの理論を基に開発したとするものも見受けられます。従業員の独立心がどこまで旺盛なのかを把握しておくことも、内部統制の1つの方法です。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 これで、9章も終わりになります。従業員がキャリアを考えることは当然で、従業員の能力を引き出すのが経営者の仕事ですから、経営者は従業員のキャリアについて理解することが必要です。

3.おわりに
 鈴木教授のテキストは、主に、従業員側からキャリアを検討していますが、ここでの検討は、できるだけ組織の側から行っています。
 いかがでしたか?

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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