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労働判例を読む#573

https://youtu.be/kysffkDSceU

今日の労働判例
【向島運送ほか事件】(横浜地判R5.3.3労判1304.5)

 この事案は、運転手Xが、配車係Y1により配車上の不利益を受けた(出張手当や早朝手当がつく配車がなくなった)として、Y1と会社Y2に対して損害賠償を請求した事案です。
 裁判所は、Xの主張を概ね認めました。

1.「合理的な裁量の範囲を逸脱した違法」
 ここで裁判所は、一方でY1の裁量を広く認めつつ、他方で、その範囲を逸脱したと認定しています。
 裁量の範囲が広い分、逸脱というためのハードルは当然高くなっているのですが、それでも逸脱と認定されたのは、①配車上の不利益がXの指示違反などを理由にするところ、②指示命令違反(あるいは要請違反)とされるXの行動は、1年弱の間に3回だけあり、しかも明確にそれが問題であると指摘・指導されておらず、③他方、Xの不利益は、平均50万円弱の給与のうち、平均13万円程度/月(両手当の合計額)であり、収入の約4分の1に該当した、という点がそのポイントです。
 会社側の事情(①②)と従業員側の事情(③)の両方から総合的に判断する判断方法は、労働法に関する裁判例で一般的にみられるものであり、本判決は、これらがどのように評価されるのか、参考になります。

2.実務上のポイント
 Y1からみると、Xは扱いにくい運転手だったのかもしれません。
 しかし、収入を大きく左右する裁量権の行使は、懲戒処分と同様の機能を果たします。
 このように、影響の大きい裁量権の行使は、合理性がより強く求められますので、合理性の検証が必要でしょう。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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