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経営組織論と『経営の技法』#227

CHAPTER 9.4:偶然を生かすキャリア ③人事異動
 企業組織においても、良き上司に出会ったり、面白い仕事に出合ったりすることでキャリアにおける良き偶然を得ることがあります。これらの偶然の多くは、異動によってもたらされます。最初の配属やこれまでと異なる部署への異動、あるいは異なる地域への異動など、企業組織においては予期せぬ異動があります。このような異動は新しい上司や同僚、職場、あるいは仕事といった偶然をもたらします。
 組織で働く多くの人のキャリアを決定づけているのは、人事異動ではないでしょうか。組織のどのポジションに誰を就けるのか、ということは、組織の力を有効に使うために菫要な意思決定ですが、そのことが新たな偶然を呼ぶことを考える必要があります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』215頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 人事異動により新たな出会いがある、というのはかなり大きな会社です。様々な機会を自社内で作り出せることは、大きなリスクコントロールになります。というのも、従業員にとってみれば、新たな機会を求めて転職する必要はなく、また、新たな機会を生かせなくても、同じ会社のどこか違う場所で再チャレンジできる可能性が高くなります。しかし、小さな会社の場合、新たな機会を生かせず、新たな場所に馴染めない場合で、我慢して自分を殺すことになるならば、転職するしか方法はありません。
 人事異動には、会社が従業員の意向に関わらず新たな仕事を命ずる場合もあり、従業員にとって不満や不安を伴うものですが、他面で、このようなメリットもあるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 経営者によっては、自分自身の手の届く範囲の小さな組織を1つにまとめ上げ、突破力を高める方法が向いている場合があります。その場合には、自分に合わない従業員がどのような立場になるのか、ということを理解して対応する必要があります。合わない従業員が辛い思いをして苦しんでいる場合があること、それは、誰が悪いという場合に限らないこと、を理解しておくことが、経営者としても従業員を必要以上に苦しめず、それによるトラブルを回避するうえで必要です。さらに、仮に会社に合わなくて去る人が出ても、会社や経営者を恨むのではなく、むしろ会社のOBとして宣伝してくれるようになるかもしれません。
 このような配慮は、翻って会社をまとめるうえでも、必ず役に立つはずです。

3.おわりに
 さらに、人事異動は、様々な従業員の特性を組み合わせて、目的に応じたチームを作り替えることを可能にします。このことが、会社組織の能力を高めるツールとなるのです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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